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創造的開発とKJ法

このnoteは、サービスやコトをデザインするデザイナーを中心としたコミュニティInHouseDesignersのアドベントカレンダー15日目の記事です!

突然ですが、チームでpodcastやってます

毎回気になったテーマについて雑談形式で深堀りしています。デザイナーのよもやま話として気軽に聞いてみて頂けると嬉しいです。
今回KJ法について話をしたので、まとめてみます。

デザインプロジェクトでもっとKJ法を活用したい

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上の写真はとある行政プロジェクトでのワークボードです。ユーザーリサーチの後の課題形成でKJ法を活用しました。

なんとなくKJ法ってMBA的なイメージ(雑)があったのですが、使えば使うほど、デザインプロジェクトでの活用の幅が広いというか、もはやデザイン思考そのものではないかと思う部分がたくさんありました。

KJ法は1960年代後半に提唱された、先駆的な国産の思考法です。

デザイン思考が生まれるずっと前に、日本で生まれた思考法を、日本のデザイナーとして本質的に使いこなしたいと思っています。

改めて深ぼりしながら、サービスデザインのプロジェクトでの実践的な活用を目指します。

KJ法とは

最近サービスデザインプロジェクトでKJ法を活用する場面があり、改めて書籍を読み込んでいました。

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KJ方についてご存知無い方のために、ざっくりとアウトラインをお伝えします

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1. 日本の文化人類学者、川喜田 二郎発案のデータ処理法
2. 質的なデータを構造化・抽象化して、一般化するためのメソッド
3. カード化した情報をグループ化し、意味や関係性を見出す

企業研修やビジネスワークショップ等で、かなり有名なものなので、「いらすとや」にも、イラストがあったりします。

というか、いらすとやがスゴイ!

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いらすとや:KJ法のイラスト(私服)

ブレインストーミングを行った内容をカード化して、内容を整理する付箋のワークショップというのがポピュラーな印象だと思います。

狭義にはデータ処理 広義には発想法。

まず、KJ法には狭義と広義があるというところから話を始めます。

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狭義のKJ法は前の項で説明した通り、カード化した情報のグルーピングと抽象化を基本とするものですが、広義のKJ法はまた見方が変わります。

広義のKJ方とは、一言で言えば「創造的プロセス」です。

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川喜田二郎は発想法の第一章で上の図を元に、普遍的な科学的アプローチのプロセスを提示しています。

問題の提起から仮説創造を行う一連の流れを「野外科学」と呼び、問題の発見と仮説の発想を目指すフェーズを発想法と位置付けています。

野外科学的アプローチと、仮説検証を繰り返す実験科学が組み合わされる事ではじめて、「野外的現場的問題」に対してアプローチできると提唱されています。

安易な比較はできませんが、デザイン思考プロセスとの類似を考えざるを得ません。

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また、川喜田先生は発想法=アブダクションとも言っています。

一群の関連ありげなデータから、なんらかの組み立てのアイデアを発想せしめる方法であります。

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サービスデザインの共創プロジェクトにおける、仮説立案やアイディエーションの難しさをいつも感じています。

もしかしたら、そのアプローチの糸口がKJ法の背景に潜んでいるのではと期待しています。

創造的プロジェクトは創造的なチームづくりから

「発想法」が書かれる前に「パーティー学」という本があります。

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この本の一編に「発想法」という章があり、体系として発想法がまとめられる前の、まだ荒削りで熱量の高い、川喜田先生の哲学が読めるのがこの本の醍醐味です。

KJ法のメソッドについて書く前にかなりのページ数を使って書かれているのは、川喜田二郎が野外研究のフィールドワークの中で直面した、チームビルディングについての問題や葛藤についてです。

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面白いのは、日本人が異国の人と極限状態でチームを組んだ時のエピソードを元に書かれているところです、欧米を出自とするデザインメソッドとまた違う、独特の土っぽさがあり、他者理解をベースとするチームのマインドセットについて書かれています。

異民族の人々とチームを作るとき、私たちは特に次のことに気を付けるべきです

1. 相手の行動の仕方が、日本人と同じようでないからといって、それを欠陥のように価値判断をするのは、最も愚かです。

2.相手がいかなる衝動とか欲求を持っているかを、善悪の価値判断できめつけないで、冷静に見るべきです。

また以下の文章は、ある調査の中で、現地の協力者にプロジェクトを通して創造的に課題に取り組むように川喜田氏が行ったマネジメントについての一節です。

調査を分担してもらうに当たって、最初は単純で優しい仕事から始め、それをやり遂げるにつれて、次第にむずかしい課題をあてがいました。
「モデルのないこと」および「お遊びでないこと」という二条件が、かようなやり方の中に含まれていると言えましょう。
今までよく経験してきた「言われた通りにやる」という姿勢にくらべて、はるかに自由さを味わったようです。自由というものの尊さを感じたと言っても過言ではなかったでしょう。
しかし同時に、両君は生まれて初めてくらいに、自分の方にズッシリと、何かの重荷を感じたのです。
すなわち両君は、自分の把握力、判断力、独創力、実践力、そういったものを、フルに行使せざるをえなくなったのです。

創造性を発揮するチームづくりのために、メンバーが学び発達する過程についても、自身の経験で語られています。

そこで大切にされるのは、創造性的な仕事のプレッシャーと開放感が人の仕事の喜びとひいては人生の意味に繋がるという考え方です。

個の発達とクリエイティビティ

パーティー学の冒頭で川喜田先生が立てている問いです。

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人間の生きがいとクリエイティビティの関係は、サービスデザインでも特に大切な前提です。

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テニー・ピニェイロの「サービススタートアップ」は2015年の本ですが、サービスデザインの真髄がギュッと詰まっていて、今だに読み返します。

創造したいという人間の本能は、成長と貢献の感覚と深く結びついている。これら2つの人間の基本的欲求は、ミハイ・チクセントミハイが提唱する、集中や完全な没頭の境地であるフロー状態に入るのに不可欠である。
課題が今の自分を超える何か大きなものー世界や自分自身を発見するプロセスにおける学習や成長ーの一部であると信じられなければ、創造性を誘発するための欲望も、その余地すらも生じなくなる。

創造性と人の生きがいの関係について意識的になることが、これからの共創のデザインではとても重要な観点になると思います。

川喜田二郎の偉大さは、個人の実践知を世界で普及する形式知にした事にあると思っています。

しかし、形式化されたものを利用するだけでなく、その背後にある思想も読み解く事で、今の時代に活かせることが多くあると思っています。

podcastでは三回に分けて、川喜田二郎の思想とデザインプロジェクトでの応用について話しながら探っていきたいと思っています。

また次回、noteでは、私の実践経験を合わせて個人としての考えや、現場での活用のポイントを考えてまとめてみたいと思います。

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