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ウミガメを甘やかしすぎ? 西表島で聞いたお話

沖縄の西表島で、初めてカヤックに乗った。

こぎはじめてしばらくすると、ツアーガイドさんが教えてくれた。「あっ、いま顔を出したのはウミガメですよ」

海面からひょこっと顔を出して、息を吸っているのだという。

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「あっ、きたきたウミガメだ!」

別のカヤックのすぐそばを、ウミガメが悠々と泳いでいく姿が見えた。

けっこうしょっちゅう見ることができるんだなあ。県外出身のかたではあるが、西表島で働くガイドさんも興奮するほど、ウミガメは、なにか特別なものなのだろう。なんといってもかわいいし。

途中でカヤックを離れ、透き通った海の中をシュノーケルのマスク越しにながめた。さんごの青にも、群青色から水色まで、さまざまなグラデーションがあるんだ。なんて美しいブルーだろう。

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すっかり日に焼け、宿に戻って、鰹のおさしみや、地場のイノシシのタタキなど、おいしい晩ご飯をいただいた。

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もずくを食べていると、民宿のおばさんが「ウミガメが増えて困っている」という話をしてくれた。

えっ、そうなの?!

ウミガメが涙を流しながら産卵する様子は、テレビなどで見たことがあるし、保護活動なども見聞きしたことがあったから、是も非もなく保護しなければいけない動物、なのだと思っていた。

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ウミガメが食べてしまうので、このあたりでは特産のもずくがとれなくなっているという。「ウミガメを甘やかしすぎだね」とおばさんは言った。

ウミガメをとるか、もずくをとるか……。

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ことはもずくに限らない。複雑な事情を紹介するこんな記事が沖縄タイムスに載っていた(下のリンク)。草食のウミガメが増えたために、とてもめずらしいウミショウブという海草が絶滅の危機にひんしている、という内容だ。

9月9日に朝日新聞に転載されたバージョンの記事では、「10年ぐらい前から、ウミショウブを餌(えさ)にする魚やイカが全く取れなくなった」となげく漁師の男性のコメントが載っている。

ちなみに、ウミショウブってなんだろうと調べてみたら、「海面を走る花」と呼ばれるこの海草のとーってもユニークな受粉のようすが下のサイトに紹介されていた。

ウミガメもこのウミショウブも、ともに絶滅が危惧されているから、頭が痛い問題なのだ。昔から海に暮らしていたはずだから、どこかでバランスが崩れてしまったのだろうか。

「わあ、いた!」と観光客に感動を運ぶ存在でもあり、漁業面では「嫌われ者」にもなるウミガメ……。

琉球新報では、7月に久米島で、30~50匹のアオウミガメの死骸などが見つかったという、ちょっとショッキングなニュースも報じられていた。

8月末から八重山諸島は大変な台風の影響を受けているが、私が訪ねた時期はとてもよく晴れていた。

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石垣島ではサバニと呼ばれる丸木舟にのせてもらい、透き通った海にこぎだした。しばらくすると海底に、黄色や青、白のタイルのようなものがみえてきた。ペンキみたいにいろとりどりだ。

ガイドさんに聞くと珊瑚だという。「パステルカラーのものは傷んでいる珊瑚なんです」

美しい珊瑚礁があちこちに見られる一方で、西表島や石垣島では、珊瑚の白化現象も問題になっている。

水産庁によると、白化はサンゴに共生する褐虫藻がいなくなるために起きる現象で、サンゴ礁の衰退を招く大きな原因の一つ。温暖化等による海水温の上昇が要因ともいわれている。

海の水がよけいにぬるく感じられた。

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かわいい!きれい!感動!

いっとき訪れるだけなら、得がたい経験と、思い出だけを持ってすっと帰れる。でも地元の人の目には、それぞれの立場で、まったく違うものが見えているのだろう。

「私はシマンチュ(島の人間)だからね、なんでも聞いてくださいよ」と、民宿のおばさんが気さくに、地元の人の気持ちの一端を話してくれたことは、とてもありがたいことだった。

おばさんありがとうございました。

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