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農家の法人化のメリット

 私は起業時に農業を主目的とした法人を設立し、その後、正式に農家として登録して今に至っている。農家の中には、「法人化する事によるメリットがよくわからん」という方も多くいる。
それは本当、その通り。
メリットがあるかどうかは、置かれている環境次第である。

 とはいえ、あまりにも「メリットないよね〜」という結論に速攻で達するケースが多く、法人化している身からすると「いや、結構良いと思うんだけどなぁ」という思いもしている。
今回は、私の感じる法人化のメリット「だけ」を洗い出してみたいと思う。

①信頼性が高まる

何と言っても、対外的な信頼性の面でのメリットは大きい。

もちろん、既に個人事業主として、また家族営農として、十分な信頼性を得ている場合や、販路が十分ある場合、この信頼性を高める理由がイマイチピンとこないでしょう。

しかし、特に新規創業において、外部(特に新規取引先)からの「こいつ大丈夫?」という最初の色眼鏡をクリアできるという点は大きいのです。
※残念ながら農業関係者からのみ「こいつ大丈夫?」と怪訝な目で見られる事はあるのですが、、、汗

新規創業者、新規就農者、特に直売+卸売スタイルで事業を構築する場合は、取引先の開拓が最初のハードル、かつ、永遠の課題です。
末長く、気持ちよく、お取引ができるという点では、最初に信頼していただく、入口の所は大変重要。ここがクリアできる(しやすい)というメリットは大きいと思っています。

ところで、何で法人化していると信頼性が高まるのか?

それは、法的な手続きを踏んで法人を設立して、幾つかの取引銀行の審査を通過していて、納税等きちんと対応していて、云々。
日ごろ(面倒な)手続きが個人より多少多い分、その恩恵として信頼性を頂戴しているということになります。

おかげさまで、個人事業主ではそうそう取引始められない相手とも、徐々に取引契約ができるようになってまいりました。4年かかりましたが。汗

②継承のスタンス明確化

先日、農業委員さんとの面談で、
「法人化なんかしてあるから、将来的な事業継承とか大変でしょう。お子さん達は継いでくれますか?きちんと考えるように」
というアドバイス?をいただきました。

「何言ってんだ、こいつ?」
と言ってやりたいところでしたが、大人なので
「そーですね、よく考えます」
と曖昧に返事をしておきました。汗

さて、私の法人化の目的の一つに、この事業継承問題があります。
重要な質問とわたしの答えです。

Q1.自分の子ども達に今の仕事を継がせたいと思いますか?
「どっちでもいいよ、やりたい事やって」
Q2.今の農業の仕事を継承したいと思っていますか?
「はい!絶対誰かに引き継ぎたい」
Q3.あなたの農業のテーマは
「持続、継続、地域振興」

私自身、法人化する段階で、事業継承については折り込んでおります。
私の一つの理解として、「就農する段階でお預かりした農地は、決して雑に手放してはならない」というものがあります。

これは、農家の役割を「農産物で稼ぐ」という点で言えば、不合理な話なのですが、「地域(農村)の環境と景観を維持する」という点で言えば、必要な役割だと思っています。そして、これがあるから(簡単に農家を辞めて農地が荒れるのを防ぐ)、就農のハードルは高く、家族構成から貯蓄から、洗いざらいオープンにさせられ審査されているのだと理解してますw(やりすぎだと思ってますがw)

私の子ども達が農業をするかなんて、わかりません。自由な未来ある子ども達が、父親の背中を見て育つとはいえ、同じ道に進むなんて保証は全くありません。別人格なんですからそこをコントロールしようなんて勝手な話です。

しかし、就農した私の責任として「死んだら知りません」「離農したら農地のことは知りません」というのは許されないと思っていますし、その点で就農のハードルが多少高い事は十分理解できる点です。

で、これらを勘案して、スムーズに事業継承するには、会社として売れる状態にしておくこと。第三者がこの事業(志を含む)を継いでくれれば、私のテーマはクリアできると思っています。し、長いこと事業を続けていれば、その対象は現れると思っています。それが私の子ども達の誰かでも良いことですし。
創業期の今は、筆頭株主=代表取締役ですが、当然これがズレるタイミングは来るわけで、この辺は設計と巡り合わせ次第かなぁ〜と思っています。

結論、最初に農業委員さんからもらった指摘は、
個人事業主として就農するより、余程将来の農業と農地と地域のことを考えているつもりですよ〜というのが、私のお答えです。w

③人格・財布がはっきり変わる

法人化とは新たに「法人」という人格を生み出すことである。
例え一人会社であっても、法人と個人は別人格なので、契約も口座も法人として進めることができますし、証明される実印も作れます。
まぁ個人事業主で屋号付きの口座を作ってうまく運用できていれば、メリットはハンコくらいかなぁ?

④雇用時の安心感

安心感があるのは、経営者にではありませんw
雇用される側の安心感です。
だから経営者目線で、「安心して雇える」というメリットは少ないのではないでしょうかw
反面、雇用される側の人は、「安心して雇ってもらえる」と思うと、より雇ってもらいたくなる=経営者とすれば雇用の選択肢が増える ということになりますか。
より高度で多能な人材を求めるようになれば、経営者にもメリットが出てくるでしょうが、作業人員の確保という面では、あまりメリットとは言えないかもしれませんね。

まとめ

思いつくメリットを書き並べてみました。
個人的には①②が大きいかなと思います。(バランスが悪いので③④も入れてみましたが。)
一応デメリットとしては、経費負担が大きいのと、書類関係が煩雑、そして、就農時のハードル(チェック)は少し多くなるという点がありますが、私としてはその負担をしたところで①②の恩恵は素晴らしい。と考えています。

参考になれば。

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