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いのちの恩人

※うつ状態が深刻な方には、影響が大きい内容かと思われますので、閲覧をお控えください。

もう何年まえになるか、忘れてしまいましたが、
私には、いのちを救ってくれた恩人がいます。
その方には、恩返しもできず、今、どこで何をしていらっしゃるのか、まったくわかりません。

当時、私は、#うつ病に苦しんでいました。
昼間は体が動かずに、横になっていることが多く、夜になると目が冴えて眠れない。
昼夜逆転していて、特に、夜中眠れないことが、いちばん恐ろしかったのです。

真夜中、家族が寝静まった時に、猛烈な希死念慮が浮かんできます。
自分がこの世界で孤立していること、
この社会で無意味な存在であること、
無意味どころか厄介者であること、
何もしなくても食べて寝ているだけで家族や社会の負担になっている、
などなど、理屈を付けて、「死んだ方がいい」という結論に至ってしまうのです。

断言しますが、上のような理屈は、すべて病気の脳がおもわせている幻覚です。

余談ですが、
うつというのは、治さずに寛解(正常に近い状態をキープできるようになる)させることが治療目的だと言われるのですが、こういう思考が、病気由来でなくて、性質として身についてしまっている場合、寛解にすることが限界だと思うのですが、実はこういう思考の癖を、治療ではなくトレーニングや学習で変えることが出来たら、うつは『治る』のではないかと、今の私は実感しています。
つまり、今の私は「うつは治った」と言えるんですね。

本題に戻します。
さて、そんな夜中の地獄を、毎日毎日、なんとか乗り切っていたのですが、ある時、本当にダメだと感じる夜がありました。

私はその時、うつ病患者が集う掲示板に出入りしていました。患者どうしで、自分の辛さを書き込み、それに共感して、一緒に乗り切ろうと励ましあう、本当にすばらしいコミュニティでした。
家族にも友人にも理解されず、この掲示板が唯一、人と交流できる場だったのです。
SNSの掲示板は、横になっていても、見ることや書き込むことができるので、うつ病患者にとっては、人と話すことのできる貴重な場です。
ここを開催した管理人さんは、ご自分もうつを患ったご経験から開かれたそうで、本当に画期的な取り組みだったと思います。
でも中には、しばらく音沙汰がないと思っている人が、実は自ら命を絶っていた、などという衝撃的な出来事があったり、かなり攻撃的な書き込みをする人もいて、反動も大きかったのです。
これについては、管理人さんは、細かいルールを作ったり、荒らし対策を講じるなど、本当にご苦労されていました。
この掲示板の管理人さんも、命の恩人のひとりなんですが……。

『本当にダメだ』と思ったその夜、私は「助けて」と掲示板に書き込みました。
夜中でも、多くの反応がある時もあるのですが、その夜は、どんなに待っても、レスが付くことがありませんでした。
私は、掲示板の『仲間』に依存し切っていたので、ここで誰も反応しなかったら、いよいよこの世から見捨てられたのだと思いました。
自分がどういう状況でPC画面に向かい合っていたのかは、ほとんど覚えていないのですが、その時の絶望と苦しさは、ありありと思い出すことが出来ます。
身体が動かないので、行動を起こすことは難しかったでしょうが、苦し紛れに窓から身を投げていたかもしれない。

しばらく経って、レスが付きました。
九州に住んでいらっしゃるという若い女の子からでした。
彼女と何をやり取りしたのかははっきりと覚えていません。
でもこの掲示板のルールとして、説得したり慰めたりはしないということになっていたので、
ただ、ただ、
苦しいんです
辛いですね
一緒に耐えましょう
というようなやり取りを続けていたんだと思います。
ある程度気持ちが治るまで、
彼女は私に付き合ってくれました。

このことが、私の命を救ってくれた。
私はずっとそう思っています。
当然ですが、命は一度なくしたら終わりです。
今私がここにいることは無かった。
あの日からの長い年月もすべて幻だったかもしれません。
掲示板では、みんなが自分の抱える荷物が大きいので、それに対してお礼とか、お返しとかを考えることはできません。
もしかしたら、別の日に私と対話した誰かが同じように救われたのかもしれないし、最悪それが逆効果になったかもしれない。
そういうことを一切考えない、その場のやり取りが、私の命を救ってくれたのです。

支配的な父親によって、精神的に追い込まれていたという彼女が、今、どうしているのか?
それはまったくわかりません。
リアルでは、家族に支配され、外に出ることもままならず、不遇の人生を送っているように見えていたのかもしれないけれど、私の命を救ってくれた優しい彼女は、天使のような魂を持っている人だと思います。
見かけは不幸に見えても。天使の心を持つ人は、この世の中にたくさんいるのではないかと思うんですよね。

直接お礼を伝えることはできないけれど、
彼女への感謝は一生忘れません。


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