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歩荷大会でも出ようかな

今回のかきあつめのテーマは「近況報告」だ。このコロナの世の中、リモートで仕事をしていると運動不足が問題になる。普段からそんなに運動をしない筆者だが、日々自粛で家にこもっていると、流石に体調を崩しかねない。

人の少ない夜中に散歩するくらいなら問題なかろうと、夜間に少し外出しているのだが、その際に30キロのザックを背負って『歩荷さん(ぼっかさん)トレーニング』をしている。

こんな行為をするに至った話をするために、15年ほど前の私の中高生時代だったときの話からさせてもらう。どうかこのままお付き合い頂きたい。

【歩荷(ぼっか)さん】
食料や燃料など山小屋で必要となる物資を、麓にある問屋さんなどから山小屋まで背負って運ぶ人。今でも尾瀬とかに行くと大きな荷物を持って歩いているのを見ることがある。下記の「丹沢ボッカ大会」のように山を走ることはないが、その代わり重い時は100キロを超える荷物を背負って歩く、まさに『山の鉄人』である。

君は20キロの砂利袋を担いで山を走り回る『丹沢ボッカ大会』を知っているか?

世に珍妙な大会は数多くあるが、神奈川県の丹沢山で行われている『丹沢ボッカ大会』もその一つであろう。20キロ(部門によっては40キロ)の砂利袋を背負って丹沢山をリレー形式で競争する大会であり、今年はコロナにより中止になったが34年続く立派な大会である。

そもそもは、丹沢山の登山道舗装のために砂利袋を山頂まで持っていく「労働」を、競技化して町おこしの「レジャー」にしようという魂胆から発生した大会(完全な邪推)なのだが、不思議な魅力がそこにはある。私は「参加費を払って慈善活動をするなんて、バカっぽいなぁ」なんて思いながらも、15年ほど前の中高時代は楽しく参加していた。

大会をバカにしていながら、期日が近づくにつれマンマと練習に励むのだから私もバカである。登山部員はこの時期になると20キロのポリタンクを背負って学校の周りを走り出し、校内の階段を何周もするのだ。太ももプルプルになりながらも階段に這いつくばる我々を、野球部やサッカー部は奇異な目で見ていた。

こんなトレーニングをしていた我々だったが、成績は下位であった。というのも、この奇祭に全国から集まるような山男は速い速い。参加者は社会人が多いのだが、ヘトヘトの我々を「頑張れ!」なんてニコニコしながら追い抜いていく彼らをみて、なんともまぁ山の鉄人は変態だなぁと感心したのを覚えている。

社会人になってもトレーニングを続けている友人に少し憧れていた

それから10年が経ち、社会人となった我々は久しぶりに同窓会をした。ある程度飲んでいると、1人が「俺、会社のロッカーに30キロのザックを閉まってて、たまにトレーニングをしているんだよね」と言いだした。

話を聞くと、彼は当直がある仕事に就いていて、夜間暇になるとザックを背負い1人モクモクとビルの階段を往復しているのだという。「高校の頃は20キロが重かったけど、今は30キロぐらいイケるよ。当時と変わらず太ももを追いこんでるんだ。」という彼は、高校の頃にボッカ大会で出会った鉄人の笑顔そのものだった。

そのとき私は、「おいおい、マジかよアホだな~~」なんてその時は受け流したが、ちょっと羨ましかった。おそらく彼以外の全員が同じ感覚になったと思う。高校生の当時は「鉄人キモチワルイー」なんて話し合っていたが、畏怖に近い感覚を持っていたのだろう。私はもう彼に憧れていた。

だが、その同窓会が終わったあとも、私はトレーニングを開始することはなかった。

コロナが与えた機会。久々の20キロは重たいが気持ちよかった。

そして2020年4月、コロナが爆発的に広がり東京都で緊急事態宣言が発令された。仕事柄リモートワークは直ぐに導入されたのだが、それまで出社していたのと違い、歩く機会が全くなくなる。このままでは体調を崩しかねない。

そこでコロナを期に、スポーツ庁の「新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点」に従って、15年ぶりに20キロ(2Lペットボトル×10本)のザックを背負った「歩荷さんトレーニング」を再開したのである。

(夜間にマスクをしてトレーニングに励む)

久々に背負う20キロ。「あれ?思ったより軽いぞ。」

そう。運動不足の社会人とはいえ、身体ができあがっていない高校生のころより、20キロが軽く感じたのだ。

しかし余裕こいて早速トレーニングに出かけると、やはり運動不足である。汗は止まらず、高校の頃のように階段を駆け上ることはできない。危険を感じたので直ぐに帰宅したが、久々に背負う20キロはなんとも気持ちのいいものであった。

(30キロのザック 2L×10本、500ml×4本 8キロダンベル×1個)

最近はだいぶ慣れてきたので30キロ(水22L+ダンベル8キロ)を背負ってトレーニングしているのだが、この10キロの差がキツい。だいぶ体力がついてきて、20キロでは高校の頃のように走れるようになったが、30キロは体がもたない。鉄人である友人のようになるには、まだまだトレーニングが必要なようだ。

ボッカ大会には社会人40キロの部門がある。今年は無理だが、トレーニングの目標として15年ぶりにボッカ大会に出るのもいいかもしれない。よーし、次のZOOM同窓会で話題にしてみよう。

夜中に新宿駅付近の階段を上り下りしているのは、おそらく私です。
あんまり不審な目で見ないでね。

記事:アカ ヨシロウ
編集:彩音

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