バチェラー3

バチェラー3にみる興行論 -Amazonのキャスティングと編集力には脱帽だ-

ツイッターを賑わせた「バチェラー3騒動」からはや2週間。皆さんはもうバチェラー3を観て、楽しんで、怒り、呆れ、楽しかった想い出へと昇華させれただろうか。

今回のかきあつめのテーマは「恋愛」。あいのりを始め、昔から「恋愛」をテーマにしたTV番組は数多くあり、支持層の厚いジャンルとして確立されてきた。その中でも、今日は問題作と言われる『バチェラー3』について、僕なりの考察を語っていきたいと思う。

※ここから先はネタバレ全開なので、ネタバレ厳禁って人はブラウザの「戻る」を押してもらいたいー。

バチェラー3は胸クソだが、個人的には面白かった

いまさらだが、バチェラー3を知らない読者もいると思うので、簡単に説明しよう。

『バチェラー・ジャパン』(ざっくり解説。)
もともとはアメリカ発祥の人気恋愛リアリティ番組「The Bachelor」の日本版であり、1人のハイスペック男子(バチェラー)が渡す『真実のローズ』を巡って20名の女性が奮闘する番組である。本作は日本版ではシリーズ3作目であり、ここではバチェラー3で統一する。
バチェラー3では、バチェラー(友永真也)が最終ステージで真実のローズを渡した女性(水田あゆみ)と一ヶ月足らずで別れ、最後まで残っていたもう一方の女性(岩間恵)と付き合った事実に対して、「胸くそ悪い」とツイッター上で騒ぎになった。

世界各国で放送されているバチェラーを人はなぜ観たくなるのか。それはおそらく「男女のかけひき」という、本来は密室で行われることを覗き見できることにあるだろう。人類の発生から存在し、未だに解明しきれない男女の行動を、バチェラーは「恋愛リアリティ番組」として見事にバラエティへと昇華させた。

特に今回のバチェラー3シリーズは、終盤の主要人物による「三角関係」と、その「インモラルな関係性」を見事に描写しきった名作といえる。

本作を作り出したAmazonの広告戦術も流石なもので、山手線の動画広告でも積極的に番組内容を煽り、ツイッターをバズらせた。友永氏への批判から平均星1.9と低い評価がついているが、AmazonPrimeの公式では2,000を超えるレビューがつき、「バチェラー」という単語は世に知り渡ることとなった。これだけ爆発的に認知度が上がったのだから、Amazonは引き続きバチェラーをメイン商材にするだろう。

ではなぜ今回のバチェラーがヒットしたのか。それはひとえに「友永真也をバチェラーとして選んだAmazonのキャスティングと編集力」によるものだと推測する。

ただバチェラーがポンコツだった。騒動はそれに集約される

AmazonPrimeの公式で低い評価をしている視聴者は、ほとんどが「胸くそ悪い」「友永氏に引いた」など、作品そのものというより友永氏に対する感情を理由にするものであった。

今回の騒動の原因は、簡単にいえば「ハンサムで社会的地位を確立している才色兼備のバチェラーが、日本社会ではインモラルとされる行動をおこすポンコツ野郎だった」に尽きる。

Amazonで低い評価をした人は、おそらくバチェラーが「本物の愛」を見つけて、最後の1人と結婚をするストーリーを望んでいたのだろう。友永氏が歴代のバチェラー以上に結婚への本気度を感じさせていた点も、視聴者が「騙された」と気分を害した理由だろうし、著者もその気持はよく理解できる。

シリーズ最終話で衝撃の結末が告白された後からツイッターは荒れ、Amazonの評価もボロボロに批判された。著者も視聴後数日は感傷的な気分を浸っていたのだが、時間が過ぎツイッターの炎上が大きくなるにつれ、嫌な予感を覚えた。

-Amazonはキャスティングのときからこのオチをある程度予感していたのではないだろうか-

キャスティングと編集担当者に拍手を贈りたい

ただ、著者を含め視聴者が胸くそ悪い気持ちになった本作だが、Amazonの視点からいうと「アリ」である。何度もいうが、荒れに荒れたバチェラー3は、興行的に大成功である。

そのためにはまずキャスティングである。大成功か否かを左右するバチェラーを、Amazonはどうやって決めたのか。番組を作るにあたって、外見も内面もテレビに耐えれる人でなくてはならない。ある程度マトモに見えて、それでいて個性が必要である。だが、そんじょそこらのハンサムや金持ちでもダメだし、すぐ馬脚を出すような人間もダメ。そんな針の糸を通すような人選を、Amazonはやってのけたのだ。

そして次に編集力である。バチェラー3は「恋愛リアリティ番組」といいながら、もしかしたら全てはAmazonの脚本の中だったのではというぐらい、シリーズ冒頭から終盤への見せ方が上手い。

この考察については、分かりやすいサイトがあったので紹介したい。この記事では「友永氏の子供っぽさを、序盤では意図的にカットしていたのではないか」と考察しており、またもう1人のキーパーソンである岩間恵については「(終盤のどんでん返しに向けて)女性陣に比べて一人だけ、エピソード序盤から悪い部分が妙に目立っていたように感じる」としている。

この記事を読んで「なるほど」と思うと同時に、もしかしたら何らか荒れることを望んだAmazonは、キャスティング時から「イケメン」「金持ち」「ポンコツ」の3ポイントで探していた可能性もありうる。

実はバチェラーは業界では有名なポンコツで、序盤はそれを上手く編集でカットしていただけだった。そして終盤でいい感じにポンコツを発揮してくれたら、そのポンコツぶりが最高に表現されるよう演出をする。

もしそんなことが実際に行われていたとしたら、Amazonのキャスティングと編集力には脱帽である。

今後バチェラーの味付けは濃くなる

さて今回は大成功を収めたバチェラーだが、この大成功はAmazonを苦しませるだろう。バチェラー3は、全てがうまく行き過ぎたのだ。シリーズ物の宿命だが、期待値が高まった作品の次回作は味付けが濃くなるのが必須である。

といっても作品を観た人なら分かるが、今回だって十分味付けは濃い。バチェラーを狙う女性陣には不思議系からダンプ乗りまで幅広く、「バツイチ子持ち」まで現れた。一方のバチェラーはというと、御存知の通り「歴代で1番のポンコツ」だ。

コレ以上の味付けとなると不安な気分になってくるが、どうだろうか。バツイチや妊娠中なんかはあたり前で、フタナリや、むしろアセクシャル(他者に性的欲求も恋愛感情も抱かない人)が出て社会的な問題提議をしだすかもしれない。(それはそれで観てみたいが。)

そしてバチェラーの方も大変だ。友永氏を超えるポンコツを探してこなくてはならないし、確実にヤラカシてもらうために根回しも必須だ。次回は何をしてくれるだろうか。これまで以上のインモラルとなると、相当ヤバイやつが選ばれるだろう。

バチェラーシリーズがイロモノタレント生産機になってしまう懸念もあるが、大丈夫だ。ここはもうAmazonの優秀なキャスティングと編集力を信用しようではないか。

あぁ、バチェラー3は面白かった。次回も楽しみだなぁ~~。

記事:アカ ヨシロウ
編集:香山由奈

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