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やっても、やらなくてもいい『ムダな仕事』

13年前の今頃、筆者は大学の研究室にいた。

微生物に興味があり、理系の大学に進学した。大学ではそれなりな学部だったが、国立を落ちた身にとっては物足りない気がしていた。ただ、友人と恩師に恵まれ、興味がある研究室に入れた筆者は、3年生のころから大学院を目指していた。

筆者は大学院を目指して遅くまで研究をしたり論文を頑張って読んでみたりと、それなりに忙しくやっていた。ただ、その大学において、同様のスタンスの人間は多くなかった。

今回のかきあつめのテーマは『#昼休みの過ごしかた』だ。ふと当時の同級生であるN君を思い出した。

研究をしていると言い張るN君

当時、研究室には10時〜17時というコアタイムがあり、時間にシビアでない研究の学生はだいたいこの時間で研究をしていた。一方の筆者は朝に仕込んで夜に検証するような研究でもあったので、コアタイムに関係なく研究室に入り浸る学生の一人であった。

N君とその仲のいい数人は前者のタイプで10時頃に研究を始めるのだが、10時30分くらいから他の学生に「飯何食べたい?」と聞きまわるのである。そして、レシピを決めると、全員から小銭を徴収しスーパーへ買い出しに行き、帰ってきては研究室の端のコンロで料理を始めていた。

12時を過ぎる頃に、研究室にはいい匂いがたちこめ、学生たちは中央のテーブルに集まる。N君は全員分の料理を皿にとりわけ、学生たちはそれを食べる。筆者もその一人として、美味しく頂いた。利益はでておらず、彼は趣味で昼食担当を買ってでていたのだ。

皆が食べ終わると、N君は満足そうに皿を洗い、食器棚に戻す。少しの休憩を終えて、N君はまた研究にもどる。その時刻が15時だ。N君はその後ものんびりと研究をやり、いいわけ程度に残業をして、17時30分ぐらいに研究室を去る。

教授はそんなN君たちに「研究をしろ」と言っていた。「お前らは昼飯を作りに来ているのか?」と。それに対し、N君は「研究はしている」と答えていた。

あのときから違和感を覚えていたが、今なら言語化ができる。彼は「研究をしている」というには、量も質も全てが足りていない。教授が「お前の本分は研究だ」と伝えたかったことが、理解できなかったのである。まぁ飯を喰っておきながら申し訳ないのだが。

彼は毎日研究室にきて、やってもやんなくてもいいような研究をノンストレスでやり、みんなが美味しいと言うから飯を作る。本分を見誤り「研究をしている」と言い張るとは。どうせだったら「飯を作りに来ている」くらい言ってほしかったと、哀れみに近い感覚を持っていたのを思い出した。

あの程度の研究で卒業できたのだから、教授も端から相手にしていないし、そもそも来なくても良かったのである。研究室が楽しかったといえばそれまでなのだが、バイトでも遊びでも、もっと別のことをやったほうがよっぽど時間が有効であった。思い返せば就活もやっていたかどうか微妙な人間であった。


久々に大学時代の友人を思い出したが、あなたの周りにも同じような人間はいないだろうか。

やってもやんなくてもいいような仕事を「仕事をしている」と思い込んでやる姿は哀れである。そんな無駄時間を過ごすくらいなら堂々とサボって自身の趣味をやっている人間のほうが無駄がなくてマシだ。

N君、仕事できてんのかな。まぁ筆者も言えるようなもんではないがね。

記事:アカ ヨシロウ
編集:真央
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