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夏とビールと祖父と孫

うちの家系ってお酒は強くないけれど楽しく飲むのが好きなようです。

わたしも父も同じ酔い方をするし、昔の記憶を掘り起こせば祖父も一杯飲めば顔が真っ赤になる感じ。“い、遺伝〜”をひしひしと感じます。

そんな感じでも特に祖父は、365日年中無休、晩酌を欠かさない人でした。まあ晩酌と言っても、食前酒サイズの小さいグラスに赤ワインを一杯だけ。それを毎晩、家族の食卓よりも先に豆腐や枝豆なんかと一緒にちびちびと飲んでました。

毎晩赤ワインをちびちび飲むなんて、今思えばオシャレだな〜なんて思うんですけどこの時期、夏だけはなぜかキンキンに冷えたビールを飲んでたんですよね。

祖父一人で350mlは多すぎるから、父と半分ずつ。風呂上がりに一緒に食卓囲む前にゴクゴクと飲んでましたね。幼心にご飯前に美味しそうだな〜と思ってましたし、何よりビールの存在に興味がありました。

いつも祖父が飲んでる赤ワインと違って、“プシュ”と缶を開けて傾ければファンタみたいなシュワシュワした炭酸と泡泡がグラスに注がれるんですから。それに大人しか飲んじゃいけないときました。

飲めないなら見てるだけ。夏にしかでてこないビールが気になって、いつしか私と兄と代わりばんこで祖父と父のグラスにビールを注ぐ担当を任命されるようになってました。

何度注いでも2種類の液体がトクトク、とグラスに入ってく。気になって仕方がありません。

そして注げば注ぐほど泡泡が全然でないときと、ちゃんと2種類にわかれてでるときと変わるじゃないですか。子どもにとってはめちゃ不思議。

そんな発見をしたわたしと兄は一時期、ビールを注ぐ時に“いかに泡泡を出せずに炭酸のところだけグラスに入れるか”に注力してたときがありました。

泡よりも炭酸だけがカッコいいと思ってたんです。

今思うととんでもない畜生ですよね。
今ほどではないとはいえ朝から晩まで汗ばむ季節。ひとっ風呂浴びた喉にキンキンと冷えたビールをそのまんま飲みたいはず。泡と一緒に流し込むことこそ醍醐味なのに、そんな大人の嗜みを1ミリも知らない孫によってビールの良さを潰されたんですから。

叱られたり、ビール注ぎ禁止令出されてもおかしくないです。でも、そんな事言わずに泡のないビールを毎回飲み干して、一瞬の泡出さない注ぎブームが去るのを待ちつづけてたんですよね。

おじいちゃんもお父さんも本当に申し訳ない。お酒を、ビールを飲める年になって初めて幼い頃に犯した重大な罪に気づいてからは心のなかで謝り倒してます。

一時期とはいえ、ほんとに美味しく晩酌したかったよな…。


        🍺🍺🍺
実家に帰る度に毎晩、父に晩酌に誘われます。お酒飲むのは、わたしと父だけなので必然ですね。

いつからかアルコール入りではなく、ノンアルコールを飲むようになった父に付き合って晩御飯前に豆腐や枝豆、もずくを用意して一缶半分ずつ飲んでます。

父が風呂から上がった気配を感じてプシュと缶を開けて2人分のグラスに注ごうとしたところで母から一回り小さなグラスを差し出されました。

「ちょっとでいいから」と言われるまま差し出されたグラスにちょっとっていかほど…?と迷いながら注いだビールは白い泡が立つはずもなく。

幼い頃に嬉々としてやっていた罪悪感がぶわっと押し寄せながら、そのグラスを仏壇にそっと持っていき念入りに手を合わせました。

「グラス並々に注がせたら完璧なビール作れるから…ごめんねおじいちゃん」


そのあとに注いだわたしと父の分は明らかに半分とはいえない分量ミスを起こしたものの泡と炭酸部分の見事な黄金比は叩きだせました。

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