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初版本から新装版へ 〜初めての本づくり その3〜

『やまとかたり あめつちのはじめ』初版が数少なくなり、次の版が作れないだろうか、、と考え出したのが今年の3月頃。
初版は12年前に作られたもので、すっきりとした白に浅葱色のラインの入ったデザインで、当時高校生だった大小田万侑子さんのイラストがゴールドっぽい色で施された表紙でした。

『やまとかたり あめつちのはじめ』初版本 2010

この本を手に、最初にやまとかたりを奉納したのが江島神社の奥津宮でした。インディアンフルートの真砂秀朗さんと一緒に厳かにはじまったものの、朗誦の下りになってザザザーっと雨が降り(しかも、後から聞くと、雨が降ったのは奥津宮の辺りだけだったそう)、屋外だったため開いていた本は見事に濡れ、皆んなバケツの水をかぶったようにずぶ濡れになって、衝撃で泣きながらも一生懸命に朗誦したことを思い出します。奉納が終わると、さーっと雨が上がり爽やかな天気に変わったのも本当に不思議で、これはまさに龍神様が通ったということなのでは、とみんなが口々に言っていました。
今でもページが波打っているのを見ると、その時の記憶が鮮明に思い出されます。その後もたくさんの神社仏閣での奉納を共にし、稽古でもたくさん開いてきたこの本は、11年間、やまとかたりの会の歩みと共にありました。
紙の本の良いところは、紙に触ってその変化を見る度に、当時の記憶がリアルに思い出されることにもあるとおもいます。

最初の奉納で雨に降られ、よれよれになってしまったページ


そんな愛着のある初版本『やまとかたり あめつちのはじめ』ですが、
次の版は雰囲気を少し変えて、新しい感じで新装版として作れたらいいなぁと思っていました。
少し贅沢な布貼りの本にして、お家のリビングに置いても可愛いような本。表紙には箔押しでタイトルや模様が少しキラッとして、おもわず手に取りたくなるような本。と、妄想はするものの、出版という世界を全く知らずにただ思いついたこと。どうやって本は作られるのか、どこの印刷所で刷るのか、販売するのは可能なのか、知らないことだらけなので、ネットで調べたりしながら、現実的なことなのか考えました。

出版社に頼らず本を出した方のブログなどを読んでみると、たいていはかつて出版社で編集をされていたり、ライターさんであったり、本屋さんで働いていたり、本に関わるお仕事をされていた方が多く、全くの素人で本を出したという人は少ない印象。
表現者側、つまり小説やエッセイを書いている方、詩を書いている方なども、今は電子出版もあるので、必ずしも紙の本である必要はないのかもしれません。実際、出版の世界も状況がどんどん変わってきていて、紙媒体、電子でも、大手では出せない本も以前よりは作りやすくなっていて、個人で本を出版する方が増えてきているのだそうです。

今回は新装版ということで、基本は初版の原稿があり、修正や追加はあるとしても、装丁やデザイン全体をリフレッシュしたいという想いを実現するにはどうしたらいいのか。

まず、近場で自費出版などのお手伝いをしてくれる方を探してみたところ、素敵なコーディネーターの方と出会って、話を聞いてもらいました。
そうしたところ、大体内容は決まっていて形を新しくするだけだったらそんなに難しくなく、しかも、11月になる予定の春日大社でのやまとかたり奉納に間に合うように作ることができそう、ということがわかりました。

それなら思い切ってやってみよう!となったのが、4月後半のことです。

原稿がある程度あるので、編集や校正は自分たちでやり、デザイナーと印刷所を決めて、直接お願いしてみる、ということになりました。

とはいえ、本作りの中でも、内容に一番近いところを請け負ってくれるデザイナーさんを誰に頼んだらいいのか、、、素人には全くわからない。自分の持っている好きな本のデザインをした方に飛び込みでお願いするというのも、かなり勇気の要ることです。

そこでたまたま思い出したのが、著者である大小田さんのご友人の和暦研究家・高月美樹さん。毎年とても素敵な「和暦日々是好日」という手帳を作っていらして、そのデザイナーさんを紹介していただけないかとと尋ねたところ、今回のデザインをしてくださった飯野明美さんをご紹介下さいました。

和暦日々是好日手帳2022


飯野さんに初めましてでご連絡し、コトの経緯をざっくりと伝えたところ、タイミングよく引き受けてくださることになり、とんとん拍子で著者、制作者、デザイナーの3人で会って、好きな本、こんな装丁がいいな〜と思う布貼りの本などを見ながら、どんな本にしたいのかをざっくばらんに共有していきました。

今回、まずは装丁やデザインを新しくしたいという目的があったので、大事な部分が決まってほっと胸を撫で下ろしました。
デザイナーさんが早めに見つかって、本当にラッキーだったと思います。
思い返してみると、それが5月の連休明けでした。



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