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花ことばの発表日【短編小説#7】

 その日は、朝から騒がしかった。と言うのも、花言葉が今朝初めて発表されたからである。自分だけの花言葉が記載された手紙が、蜜蜂によって、直接花たちに届けられていた。誰がどんな花言葉なのか、みんな興味深々だった。

 太陽の光が当たる席にキンモクセイが腰掛けていると、アマリリスが声をかけてきた。アマリリスは花言葉について話したくて仕方ないような雰囲気だったので、隣の席を差し出した。アマリリスは席に着くが早いか勢いよく話し始めた。

「どうだった?花言葉?私のも、こっそり伝えるから教えてほしいー!他の人には内緒にするから!」

特段黙っているつもりはなかったので、キンモクセイは答えた。

「私の花言葉は”謙虚”だったよ。」

「謙虚!めちゃくちゃ良い花言葉じゃない?どうして謙虚なんだろう、、?分かった。キンちゃんは凄く甘い芳醇な香りを出すのに、意外と小さい花をつけるからその姿から謙虚が連想されたんじゃない?」

「いやいや、そんな恥ずかしいよ。でも、お母さんとも話をしていて、理由はそんな感じかな〜と思っていたんだよね。これって褒められているのか、いないのかわからないねって。」と、キンモクセイは笑った。

そんな会話をしていると、アザリアが向こうから歩いてくるので、キンモクセイはおはようと声をかけた。すると、なんだかむすっとした表情で、冷たくおはようと返事を返し、そのまま通り過ぎていった。「どうしたんだろう。」とキンモクセイが気にしていると、アマリリスが小声で教えてくれた。

「ここだけの話、アザリアの花言葉、"禁酒"だったらしいよ。お酒飲むと性格が豹変しちゃうからさ、それに対する戒めも込めてなんだろうね。」

 自分の花言葉が一生”禁酒”なのを考えると、ぞっとしたが、確かにアザリアはそれを付けられてもいいくらい酒を飲んでは他人に迷惑をかけていた。これでお酒を飲むのが少しは収まると良いなと思ったが、残念ながらあまり期待できそうにはなかった。

 そうこうすると、今度は誰かのすすり泣きが聞こえてきた。振り向くと、今度はすすり泣きをしているとクレオメと、それを励ますマダガスカルジャスミンが歩いている。二人は互いに寄り添ったまま、太陽が登っている東の方へ歩いて行った。

 それを眺めていると、またアマリリスが教えてくれた。

「ここだけの話だけど、泣いていたクレちゃんの花言葉が”想像したほど悪くない”だったらしいよ。大きなクモのような花が咲くという噂があったじゃない。それで外国でもSpider Flowerと呼ばれているらしいけど、咲いたら全然そんなに悪い感じじゃないから、そこから花言葉がつけられたんでしょうね。それにしても、流石の私でも同情しちゃうわ。。。。。”想像したほど悪くない”はあんまりよね〜〜〜。ちなみに、励ましていたマダガスカルジャスミン氏の花言葉は”二人で東へ旅に”だそうよ。だから東の方へ行ったのね。。。」

 意外と言い得て妙な花言葉をつけているような気がしてきた。また、自分の”謙虚”という花言葉が想像以上に良いと感じたので、心の中で感謝をした。

「ちなみに、人気者のゲウム君の花言葉聞いた?花言葉まで流石よ、流石。」

キンモクセイはなんでもできるゲウム君に憧れと、少しの恋心をいだいていたので、なんだったの?とついつい自分から聞いてしまった。

「知りたい?知りたい?ここだけね。彼の花言葉は”将来有望”と”前途洋々”よ!流石よね〜〜。」

 彼のカッコ良い花言葉を聞いて、キンモクセイは益々憧れを持った。

「ちなみにさ、アマリリスちゃんの花言葉はなんだったの?」とキンモクセイが聞いた。

「えーーーほんとここだけにしてよ。なんかちょっと恥ずかしいんだけどさ〜〜私の花言葉、”おしゃべり”だった。」

キンモクセイは思わず吹き出してしまった。改めて自分の花言葉に感謝をした。

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