私が吸血鬼になったドラキュラ展 in Madrid
プラド美術館にも歩いて行ける距離にあるCaixa Bankの展示場の「ドラキュラ展」を観に行ってきた。
フランスの La Cinémathèque française(シネマテーク・フランセーズ)の協力による展示だ。
マドリッドもコロナによる規制が徐々に緩んできていて、マスクをしてそれなりの規律を守れば出歩ける。
今はこういった展示も再開している。
https://caixaforum.es/es/madrid/p/vampiros-la-evolucion-del-mito_a9345560
ありとあらゆるヴァンパイヤやドラキュラ
ドイツ表現主義時代の「吸血鬼ノスフェラトウ」から始まって、あらゆる時代の、世界中から集めたいろんな吸血鬼やドラキュラの映画たち。
さらに芝居の資料や本・マンガなどの展示はとても興味深かった。
手塚治虫や藤子不二雄のマンガの展示、鳥山明のDr.スランプのアニメ(ごく一部のドラキュラに関連する映像)などもあって、日本人にも親しみやすい。
あらゆる時代のヴァンパイアムービーのコラージュもよい。
ヴァン・ヘルシングがドラキュラの屋敷へと足を踏み入れるシーンや、怪しげなドラキュラの振るまいなど、共通部分を色んなバージョンで繋げて見せる趣向に思わず見とれてしまった。
ヴァンパイアになれる鏡
会場には、映像や本や絵画、映画に使用されたコスチュームや特殊メイクの道具なども数多くディスプレイされていた。
その中にとても気になるものを見つけた。
実は、多くの人が気が付かずに素通りしている展示物だった。
ドールハウスの一部のような小さな作品である。
それが、以下の写真のようなもの。
ミニチュアの古いマントルピースだ。
上部の鏡が、その正面にある窓とレースのカーテンを映し出している。
いや、でもそれは何かおかしくないか?
なぜなら私はこの鏡を正面から写真撮影している。
おわかりいただけるだろうか(←なんだか心霊写真の解説ナレーションみたいだが)。
この鏡は写真の撮影者である私を映さず、その背後を映し出しているだけなのである。
しかもよく考えれば、私の背後に窓はない。
あるのは他の展示物であって、陽の光が射す窓はないし、もちろんレースのカーテンも会場内には存在しない。
こちらの作品も同様。
このクローゼットについた鏡も、私を素通りして私の背後の風景らしきものを映す。
この鏡は存在する私を映さず、会場に存在しない窓を映し出しているのだ。
この鏡は何?
その人が吸血鬼かどうかを見分けるには、鏡に映るかどうかを確認すればわかるという。
鏡にうつらなければあなたは吸血鬼。
それがこの作品の見せたいポイントか。
そうか。
こんな発想が好き
勘の良い方ならすぐにこのトリックに気づくだろう。
これらは本物の鏡ではない。
鏡に見立て、はめ込まれたガラスなのだ。
そのガラスの中には、マントルピースの上に置かれた小物や、ガラスに立て掛けられたステッキなど同じ物がもう1セット存在する。
そしてさらにその向こうに窓とカーテンが設置されているという仕掛け。
もともとミニチュアやジオラマみたいな小さなもの、小さな世界を見るのが大好きな私である。
この日の展示物の中でこの2つの作品が一番好きになった。
シンプルな仕掛けだけれど、ちょっと不思議。
私がヴァンパイアになれた日であった。