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麒麟がくるレビュー・2軍       その09「信長の失敗」は成功の元?

私の単なる思いつきで、今年82歳になるじーちゃん(日本人。日本在住)と12歳になる息子・エル(日本人とスペイン人のハーフ。スペイン在住)にNHK大河ドラマ『麒麟がくる』のレビューをお願いしている。じーちゃんとの会話の中で「使える」感想を拾い上げることは、広大な砂漠の中で1粒の金粉を探す作業に非常に似ていて。

2重構造のレビュー

ふと、思ったんですがね。この記事はそもそも、じーちゃんとエルにNHK大河ドラマ『麒麟がくる』のレビューをしてもらうためのものだった。
しかし、よく考えたら、
「レビューをしそうでしない老人」と「努力はするがすぐ横道にそれる少年」の2人を私がレビューしているみたいな、妙な二重構造になっている。
元々私は「いい加減そう」な2人を捕まえ、彼らが大河ファンになっていくところを記録したいと思ったのである。
が、期待通りだったのは、「いい加減そう」な部分だけ。
未だレビューとしてちゃんと成り立ってはいない。
もう第9話も終了したというのに、これからどうすればよいのだ。
だけど、考えた結果「やっぱ続ける」ことにする。

理由は2つ。

・エルやじーちゃんがドラマの最終話で感動するかどうか確認したい
・原稿を書くのが遅いライターの私が自分に課している週1回のnote用原稿として、続けてみたい

そういうことです。

「新しい信長像もいいよね」「え。新しいの?」

第9話では、帰蝶の夫となる織田信長の姿がさらに具体的にわかってきた。信長は、結構カジュアルで、子供みたいなところがあって、帰蝶との祝言をすっぽかしたことを素直に謝る可愛げがある青年。
しかし、裕福な家に生まれながら両親からの愛情に飢えており、心に危うさが見られるところもある。
いずれこの青年がどんな「魔王」に化けるのか、注目したい。
そして、こういう新しい信長像もアリだと思った。

「ねえ、そう思わへん?」
するとじーちゃんは答えた。
「え。新しい? うーん。わしが読んだことのある本の信長のイメージ通りじゃ。わしはいかにも信長らしいと思った」
まじか。

同じ質問をエルにすると、
「え、そうなの? とっても信長らしいよ
と、つい最近までロクに信長のことを知らなかったくせに「らしい」発言。

どうやら、新しい信長像だと思ったのは私1人のようである。
残りの2軍メンバーの2人は新しさよりもイメージ通りだと主張する点で意見が食い違うが、総じて我々2軍はドラマの織田信長を温かく迎えたのであった。

信長を取り巻く人々のインプレッション

さて、信長は我々に歓迎されたわけだが、その周囲の人々についてじーちゃんとエルはどう思ったか。

【信長の父・織田信秀】
じーちゃん「なんで信秀の喉元を強調するようなカメラアングルなのか。気になって仕方ない」(翻訳:超些細なことに目が行っていて、何も考えてませんでした
エル「信長にはね、faith(フェイス/親子としての信頼)はあるけど、まだunsure(アンシュア/確信していない)んだよねぇ」
【信長の母・土田御前】
じーちゃん「わしは信秀の喉を強調するようなカメラアングルが気になってのう」(翻訳:やっぱ何も考えてませんでした
エル「好き嫌いがある人だねぇ。竹千代も可哀想だね」
【信長の弟・織田信勝】
じーちゃん「ああ、将棋をやっていたな」(翻訳:それしか覚えてません
エル「竹千代を笑ったりして、よくないね。あの人はトップになるような人じゃないよ」
【信長の妻・帰蝶】
じーちゃん「スムーズに話しておったな。帰蝶はおもしろがっていた
エル「合ってるよ、信長と。2人ともアドベンチャーが好きそうだし」

そんなところが2人の感想だ。
はっきり言って、じーちゃんのコメントの大半は使用不可。
エルはドラマ制作者の意図通りの方向性を掴んでいるようだ。
育てよ、エル。あんたが頼みの綱よ。

菊丸問題

今回、いよいよ菊丸がただの農民ではないことが判明した。
私個人としては、菊丸こそ松平清康(竹千代こと徳川家康の祖父)に仕えたという、初代服部半蔵ではないかと思っているけどね。
つまり隠密/忍者。
いわゆる家康に仕えた有名な服部半蔵はその息子で、2代目である。

じーちゃんもエルも「やっぱりね。菊丸はなんか普通じゃないと思ってた」という点では意見が一致。
エルなど
「これから重要な人になって、光秀の敵になるかも・・・」
といって心配している。
さらにエルは、
「菊丸はあんな服で忍者なの?」(黒装束ではない、ということか)
忍者にしては太い
と、いろいろ気になる様子。

はっきり言って、2軍はドラマの主人公・明智光秀の今後よりも菊丸の今後のほうによっぽど興味がある

光秀の将来の嫁・煕子だが。

駒ちゃんとも帰蝶とも違うキャラクター・煕子が登場した。
将来光秀の正室となる女性だ。
この女性のおかげで、駒や帰蝶の光秀がらみの恋愛云々に付き合わなくても済むようになるかと思うと期待が増す。
しかし、我ら2軍の反応はおもいのほか薄かったのだ。

じーちゃんは、こう主張する。
「あのおなごは、子供の頃から光秀の嫁になりたいと言っておったんじゃ。わりとあつかましい」。
それでは、ドラマと全く逆である。
ドラマでは、幼い光秀が煕子に「自分の嫁におなり」と言うシーンならあったが、煕子が嫁になりたいと自ら主張したシーンはない
じーちゃんの脳はブラックボックス状態なので、何かをインプットすると、不思議な作用によって全く違う記憶になり、このようなアウトプットに周囲は戸惑う。最近は私も驚かなくなってきた。

エルは煕子のことをなんと「興味なし」と断言。
「いい人なんじゃない。でもそれだけ」。
毎回思うけど、割とエルは女性にクールである。
あんた、一生そのスタンスで生きて行くつもりなんじゃ・・・。
かーちゃんとしてはちょいと気になる。

尾張に、もとい「おわり」に。

今回も妙なレビューになってしまったが、これが2軍というもの。
しかし、これからの我々のドラマへの期待は、ある一点において共有され、フォーカスされた。つまりこれだ。

「主人公の光秀はいいから、今は菊丸の正体を知るほうが大事」。

だって我々、2軍ですから。