息をするように本を読む19 〜モンゴメリ「アンの青春」〜
「赤毛のアン」といえば、読んだことがある人はたくさんいらっしゃるだろうし、読んだことがなくてもタイトルは聞いたことがある人はもっとおられると思う。
実は、この「赤毛のアン」には続編がたくさんあるのをご存知だろうか。(えっ、知ってる? それは失礼しました)
アン自身が主人公ではない、いわゆるスピンオフ的な2冊を除いても、「赤毛のアン」を含めて全部で8冊ある。(と言っても最後の2冊はアンよりもアンの子どもたちが主たる登場人物になるのだが)
この8巻の間に、私たちのアンは青春を謳歌し、恋をし、生涯の伴侶を見つけて結婚し、6人の子どもたちの母となる。
どの巻もそれぞれに面白くて、どれが1番かと聞かれると困ってしまう。
でも、どうしてもと問われると、私は2巻目の「アンの青春」を推すと思う。
「赤毛のアン」で、世界で最も美しい島、プリンスエドワード島の農家の兄妹、マシューとマリラに引き取られた天涯孤独の赤毛の少女アンは、いろいろ紆余曲折はあるものの2人の愛情を受けてすくすくと成長した。
ラストで大学への進学を一時お預けとしたアンは、母校のアボンリーの学校で教鞭を取ることになるのだが、「アンの青春」はその2年の間の物語である。
アンはかつて自分を教え導いてくれた恩師たちのように、生徒たちを愛し育もうと奮闘するのだが、なかなかに一筋縄ではいかない。
でも、アンは揺るぎない理想と信念を胸に、彼女を愛する周囲の人たちに支えられながら、生徒たちの敬愛と信頼を勝ち取っていくのだ。
「赤毛のアン」を読まれた方々には周知のことだと思うが、アンの大きな魅力のひとつに、頻繁に彼女が引き起こすとんでもない失敗の数々がある。
が、物語も終盤になるとアンの成長とともに大失敗というものはかなり減った。
それはアンのためにはとても喜ばしいことなのだが、アンのファンとしては少々物足りなかったりする。
でも心配には及ばない。
「アンの青春」でも、彼女のおっちょこちょい振りは健在である。
それどころか、アンが成長して活動範囲が広がったことで失敗の規模はさらに大きくなっている。
しかし、相変わらずその立ち直りは早い。
そして忘れてはならないのは、この巻で新しくアン・ファミリーに加わるデイビーとドラの双子の兄妹だ。
マリラの遠縁で、両親を亡くしており、縁あってグリーンゲイブルズに住むことになった。
このデイビーが、とんでもない悪ガキで今までグリーンゲイブルズにはいなかったタイプなのだ。アンもマリラも彼に振り回されて大変な目に遭う。
私はこの悪魔のような天使、天真爛漫なデイビーが大好きで、この次の巻「アンの愛情」でも彼が大活躍する章を読むと、いつもにやにや笑ってしまう。
アンはグリーンゲイブルズにやってきたばかりの頃、マリラの兄のマシューから無条件の大きな愛情を注がれた。
私はマシューが好きだ。普段無口なぶん、たまに溢れるその言葉は真摯で優しく胸に沁みる。
このマシューがデイビーと出会っていたら、アンに対するのと同じような大きな愛情を注いだことだろうとしみじみ思う。
このデイビーやドラ以外にも、「アンの青春」では新しい魅力的なキャラクターがたくさん登場する。
そして、アンの持ち前の明るさ、優しさ、そして少々過多な想像力によって様々な事件が起こり、やがて全ての人に幸せな結末が訪れる。
アン自身に対しても大人の女性としてのこれからが示唆される。
ファンとしては今後の展開にわくわくしてしまうところなのだ。
(何度も読んでいるのだから、今後の展開は分かっているのでは?などと言う無粋な質問は一切受け付けません)
アン・シリーズは本当に何度も何度も読んだので、好きなシーンなどはセリフまで覚えてしまっているぐらいだ。
今でも何かの折にずらりと並んだ本棚から一冊取り出してページをめくると、どこからでも一瞬で物語の世界に入ることができる。
私のいくつかある、読書の原点、のひとつなのだ。
先日、candyさんがドラマ「アンという名の少女」の中のマシューの言葉に感動したお話を記事にしておられた。
我が家はNetflixを契約していないので、このドラマは見ていないのだけど、ここにもマシューのファン(?)の方がいる!と、とても嬉しかった。
本を読むことは私には特別のことではない。生活の一部であり、呼吸することと同じことだ。
アン・シリーズとアンをこの世界に送り出してくれたモンゴメリ女史に深く深く感謝する。