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息をするように本を読む 2


 本を読むことは私にとって特別なことではない。生活の一部であり、呼吸することと同じことだ。


 小学、中学、高校、大学と学生だったときに読んでいた本は小説や戯曲などのフィクションがほとんどだった。いわゆる、物語というか、虚構の世界が好きだったのだろう。テレビで見ていたのもニュース以外はドラマや劇場中継ばかりでドキュメンタリー物に興味が無かったのも、同じ理由だと思う。


 そんな私が、エッセイやビジネス書やルポルタージュ、その他のノンフィクションにも自分から興味を持って手を出すようになったきっかけは、矢沢永吉だった。


 社会人になった頃、身近に矢沢永吉のファンがいた。私も当時、ちょっと背伸びしてロックっぽいとんがった音楽を聞いたりしていたので、よくカセットテープ(昭和だ!)を借りて聞いていた。
 ある日、テープと一緒に2冊の本を渡された。
 1冊は、矢沢永吉激論集「成りあがり」。
 矢沢信者のバイブルだそうな。
 うーん・・・と思ったが、せっかくなので借りることにした。歌と同様になかなかなロックな人生で、興味深く読んだ。
 その「成りあがり」の中に、矢沢永吉の人生の書というのが紹介されていた。まだメジャーになる前にバイト先の社長さんにいただいたそうだ。
 それが、渡されたもう1冊で、デール・カーネギー著「人を動かす」だった。
 これが面白かった。面白い、というのはちょっと違うかな。
 心に届いた、響いた、腑に落ちた、納得した。
 いろいろ言い方はあるが、とにかく、精神論やスピリチュアルではない、論理的でわかりやすい文章や内容が私にぴたっとはまったのだろう。

 

「人を動かす」は今でも新社会人の定番のバイブルとして、4月になると本屋の店頭にずらりと並んでいる。
 初々しいフレッシャーズが買っていくのを見て、あの中に私のように矢沢永吉から入った人はいるのかな、と思ってちょっと笑ってしまう。


 あれから、私はノンフィクションもあれこれと読むようになった。
 現実の中にも、別の意味でドラマや物語があると気がついたのかもしれない。
 人から勧められて、外山滋比古や梅棹忠夫の著作も読んだ。今はジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」に挑戦中だ。
 まあ、その話はいずれまた。


 私の読書の幅を広げてくれた、矢沢永吉に深く感謝している。


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