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つれづれ雑記 *ナポリタンとステーキ皿の話

 スパゲティ・ナポリタンは家人の好物である。

 ナポリタンはナポリタンと銘打ってはいるが、ナポリの名物というわけではない。れっきとした日本発祥のスパゲティメニューである。
 戦後、横浜のホテルのレストランで考案されたメニューだということだ。

 その後、茹でた麺と具材をケチャップで炒め合わせるという、焼うどんのような作り方が日本人に受けたのか、喫茶店や洋食屋などであっという間に人気メニューになった。

 私は田舎者で喫茶店とかにはあまり行かなかったから(と言うか喫茶店が近くになかったから)、ナポリタンを外で食べたことはなかった。母親が作ってくれた、なんちゃってナポリタンしか食べたことがない。

 家人は街育ちで、友達とよく喫茶店でナポリタンを食べた、と自慢する。

 現在、我が家でも休日の昼食にナポリタンを作ることがある。
 具材はピーマン、にんじん、玉ねぎ、ウインナーもしくはベーコンをそれぞれ細切りにする。あと、マッシュルームは高いので、シメジかエリンギ。
 粉チーズはたっぷり用意すること。
 そして実は家人にはナポリタンの食べ方に、あるこだわりがある。

 ステーキハウスなどで木の受け皿がついた鉄板のステーキ皿をよく見かけるが、家人はあの鉄板に妙な憧れを抱いていて、ずっと以前、ホームセンターで安く売っているのを見つけて買ってきた。
 我が家でステーキなんてそうそう焼くはずも無く、ほとんどしまい込んだままなのだが、なぜか家人は、ナポリタンをこの皿で食べたがる。

 コンロで熱くした鉄板に溶いた卵を流し、軽くひと混ぜして半熟になったところへ別に作ってあったナポリタンをのせる。
 半熟の卵とナポリタンを絡めながら食べるのだ。

 どうやら、昔よく友達と行った喫茶店のナポリタンがそうやって供されていたらしい。
 家人のいわゆる、青春の味、なのだろうか。私はあまり聞いたことがない。

 普段(というか、全然)使わないステーキ皿をわざわざ出してくるのはとても面倒なのだが、これをしないと言うと、家人はひどく残念そうな顔をする。
 仕方ないのでナポリタンを作るたびに、卵を焼いてナポリタンを乗せるために1人分だけステーキ皿を棚の奥から出してくる。

 娘たちからは、少し甘やかし過ぎだと言われているが。

 家人はご満悦で食べながら、私たちにもこの食べ方を薦めてくる。

 いやいやいや。
 
 そのステーキ皿は、いったい誰が出して誰が片付けるのかな。
 

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