見出し画像

つれづれ雑記*激甘ケーキ、の話*

 お菓子作りは、今や女性のみならず男性の方も趣味にしておられる方々は多くおられると思う。
 このnote界でも、まるでプロではないかと思われるような美味しそうな見事な手作りお菓子の写真付きの記事を、たくさんお見掛けする。

 私は決して料理上手なわけではないが、娘が2人、ということもあり、子どもらが小さい頃には家で簡単なお菓子を作ることがよくあった。
 本気半分遊び半分という感じで、皆でワーキャー言いながら、失敗してもそれもまたご愛嬌、何度かチャレンジするうち、何とか形になるようにもなった。
 何より、今は私のような素人でも、それなりに作れるような簡単レシピも数多く紹介されているし、便利な道具もある。
 いい時代になったものだ。

 手作りお菓子といえば思い出すことがある。
 私が小学生だった頃、自宅でお菓子作りといえば、なかなかにハードルが高かった。

 当時、自宅で作れるお菓子といえば、焼き菓子ならホットケーキやドーナツ、冷菓ならゼリーやプリン、といったものだろうか。
 
 話が少し逸れるが、昔、市販の冷菓の素がよく売られていた。
 某有名食品メーカーで、プリン◯ルとか、ゼリ◯ースとか、そんな名前だったように記憶しているが、今もあるのかな。
 ハガキくらいの小さな箱に、プリンやゼリーの素の粉が入っていて、それを水や牛乳で溶かして冷蔵庫で冷やして固めるものだ。
 もう一つ思い出した。シャー◯ックという自宅の冷蔵庫の製氷皿で作るシャーベットもあったっけ。
 味は、まあ、本格的なものからは程遠いといえど、それなりに美味しかったし、何より、お菓子を自分で作れるというのが楽しかった。

 そんなふうに冷菓は自宅の冷蔵庫で作ることができた。
 が、スポンジケーキやクッキーなどのケーキ屋さんで売られているような焼き菓子を作るのには、天火、オーブンが必要になる。
 当時、オーブンは日本の一般家庭にまだ普及していなかった。ガスオーブンはお金持ちのお宅にはあったかもしれないが、今のような電子レンジと一体化した、オーブンレンジはまだ発売されていなかったのだ。

 さて、私には小学生の頃からの幼馴染がいる。
 彼女は、万事ガサツな私とは違って、裁縫やお料理が好きな、いかにも女の子らしい(今はこんなこと言うとダメなのかな?)子だった。
 甘いものも大好きで、特にその頃に流行り始めていた生クリームのケーキにあくなき憧れを抱いていた。
 
 また話は逸れるが、私が幼い頃のケーキ、特にクリスマスケーキやバースデーケーキとかのデコレーションケーキは、バタークリームが当たり前で、生クリームのものはあまり見たことがなかった。
 その理由は詳しいことはわからないが、おそらくはバタークリームのほうが安価だったこと、それと保存が効いたことによるものだと思う。
 私たちが小学生の高学年になる頃にようやく生クリームのケーキが出回るようになった。
 
 そんなわけで彼女は、どうせなら生クリームのデコレーションケーキを作ってみたい、と考えたらしい。
 そして、思いついたのが、分厚くて大きいホットケーキをフライパンで焼き、生クリームやチョコレートや果物を買ってきて、自分たちでデコレーションしよう、という計画だった。
 
 私はそこまで生クリームのケーキに思い入れがあったわけではなかったが、自分たちで作るというのが面白そうだと、話に乗った。

 舞台は我が家の台所ということになり、渋る母親を説得して、春休みのある日、私たちは計画を実行した。
 さっきも書いたが、彼女は料理に手慣れていて段取りも私なんかよりずっとよかったので、フライパンで大きくて分厚いホットケーキを2枚焼く、というのは上手くいった。
 それを冷ましている間に、手分けして、生クリームを泡だて、チョコレートを刻み、缶詰の果物、黄桃とミカン、だったと思うが、それを切った。

 さて、肝心のデコレーションをどうするか。
 まず、ケーキにクリームをはさむのだが、出来るだけたくさん生クリームを入れたいという幼馴染の希望でホットケーキをそれぞれ半分にスライスして4枚にした。それを重ねれば、間のクリームは3層になる。
 まず1枚目のホットケーキに泡立てた生クリームを塗って切った果物を散らし、後は同じようにして順に重ねていく。
 間にクリームとミカンが挟まった4段ケーキはなかなかの高さになった。

 その上部と周囲に残った生クリームを塗って果物や刻みチョコを飾れば、それで完成だったのだけど、ここでまた幼馴染の提案があった。

 ……この前ね、チョコレートケーキを食べたやけど。スポンジケーキにチョコレートコーティングがしてあって、そのコーティングの下にジャムが塗ってあってん。
 それからね。その前に食べた別のケーキは、生クリームの下にチョコレートコーティングがしてあって。
 
 どっちもめっちゃ美味しかったんよねー。
 
 さて、どちらにするか。
 私としてはどっちだってよかったのだけど、彼女はしばらく真剣に悩んだ。

 うーん。
 あかん、決められへん。
 そや、両方やったらええやん。

 ということで、まず、4段ケーキの上部にジャム(我が家の冷蔵庫にあったマーマレード)を塗り、その上にチョコレートを溶かして流す。冷めるまで待って、さらにその上に生クリームを塗り、絞り袋でデコレーションして、果物を飾った。

 …満艦飾、というのは、こういうのを指すのだろうか、というような、ものすごいケーキが出来た。
 だが、そのときは出来上がったケーキに私たち2人は大満足だった。

 ケーキは半分に切って、片方は幼馴染が自宅に持って帰った。持ち上げると、めっちゃくちゃ重たかった。

 その日の夕食の後、家族で食べたのだけど。

 もうお分かりだと思うが、ケーキはものすごーく、殺人的に(?)甘かった。
 まあ、切った断面を見たときから、持ち上げたときの重さから、薄々気はついていたのだけれど。
 
 まずジャムは薄く塗ったつもりだったけど、所詮は素人、結構主張が強い。
 チョココーティングも溶かしたチョコをそのまま流しているので分厚い。コーティング、というより、薄めの板チョコが乗っているみたいだ。
 さらに、生クリームは残ったら面倒だという理由で残さず全部使った。
 そして、中身のホットケーキは冷めるとやはりパサパサするし、スポンジケーキに比べるとかなり重い。しかも、間に挟まった3層の生クリーム…。
 一切れ食べたらもうお腹いっぱいだったけど、残すわけにいかないので家族3人で頑張って(?)食べた。

 今、思い出しても胸焼けがしそうだ。

 翌日、幼馴染と会ったとき、さすがの彼女もげんなりした顔をしていた。

 今でもたまに彼女と会って昔話で盛り上がるとき、この激甘ケーキの話で2人で大笑いする。
 よくあんなの、作ったよねー。

 いやいや、4段にしてジャム塗ってチョココーティングしようと言うたんは貴女だよね。
 もったいないから生クリーム、全部使おう言うたんも。

 毎回、こっそりそう思うのは内緒。

*****
 ヘッダー写真は、ときどき行くお店の看板メニュー、生クリームたっぷりパンケーキ、です。
 最初に見たときはこのクリームの量に少々引きましたが、いざ食べてみると、ふんわり軽いクリームでとても美味しかったです。
さすがにひとりで完食は無理でしたが。


#日々のこと #エッセイ
#激甘ケーキ #手作りお菓子
#何事も過ぎたるは及ばざるが如し