『クリスとみちる』 6話:涙
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ものすごく小さな声でなにか言っていたんだけど
急に黙り込んで、しんとなった瞬間があった。
僕はなぜかものすごく緊張した。
じっとみると、その人は何も言わずに泣いていた。
僕はちょっと怖くなった。
大人が泣くのを生でみたのは初めてだったから。
するとクリスは立ち上がり、泣いている女の人の正面に座った。
相撲でもとるのかなというくらい近く。
そうしてじっとその人の目を見て、うなずいた。
僕には聞こえなかったけど、その人は話し続けていたんだ。
見ていてそれだけがわかった。
クリスはその人の背中に手をあてて、
ゆっくりと話したり、聞いたりしていた。
うまく言えないけど、僕はずっとそこから目が離せなかった。
横を見上げると、お母さんも少し泣いてるようだった。
理由はわからない。
ただ、とても静かで、大人がたくさん座っていて、
泣いてる人がいて、
クリスが聞いていて、
お母さんは泣いていて。
気がつくと、いつの間にかさっきまでの怖さはどこかに消えてしまっていた。
「ペアになりましょう」
ちえこさんがこう言った時、僕は少しビクッとなった。
きた・・・
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