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『クリスとみちる』 7話:静寂

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 お母さんが

「みちる、クリスのところに行ける?」

 と言うので

 

 僕は「うん」とだけ答えて、


 目の前の向こうにいるクリスの方に、

 座布団をひきずりながら歩いていった。


 クリスは僕をじっと見つめていた。面白そうに。


 隣に手をポンポン、としたのでそこに座布団を置いて、僕は座った。


 僕は目を合わせられなかったけど、

 じっと見られているのがわかった。

 クリスはちえこさんと何か話している。


「クリスが、ここでみんなを一緒に見ていましょうかっていっているけど、大丈夫ですか?」

とちえこさんが言い、僕はうなずいた。


 クリスが僕をみてにこっとした。


 ぼくたちは並んで、他の人たちが向かい合って話しているのを見た。


 みんな二人ずつ向かい合って話したり、

 笑ったり、静かにしていたりしていた。


 お母さんも女の人とそうしていた。


 クリスは時々、あと五分です、とか交代ですとか言ってたけどそれ以外はじっとみんなを見ていた。


 ぼくもじっとみんなを見ていた。


 ただそれだけだった。


 周りは人の声で騒がしい。でもここは静かだった。



 僕たちはとても静かにそこにいた。

 みんなみたいに何か話すこともなく。


 まるで違う世界にいるみたいだった。


 退屈するかと思っていたのに。


 全然違う。全然退屈じゃない。



 ペアが終わり、みんながノロノロと自分の席に戻っていくのを見ていたら、クリスが僕の顔をじっと見て、またにこっとした。


 ちえこさんが「お母さんのところに戻りますか?」と言ったので僕はうなずいた。


 でも少しだけ、もうちょっとここにいてもいいのになって思った。


〜続く

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