白いお鍋

白いお鍋

今日のごはんはお鍋だ。
お豆腐と、豚肉と、あと白菜。
白菜はさっき一緒にスーパーに買いに行った大きなもの。
重くてどうやって持って帰ろうか?とレジで考えていたら、
隣にいた彼が黙ってひょい。って持ってくれて、
あぁ、優しいな。って単純に思った。

「俺、缶ビール飲みたいんだけど。まだ冷蔵庫にあったかな?」
わたしはビールは苦手だ。
「うん、まだあるよ。あと2本くらいは残ってたと思うな。」
ぼんやりと街路樹の葉っぱがくるくる道路を舞い散るのを、
遠目で眺めながら、答えた。

私は料理をしたりしなかったり。
仕事から帰って疲れていたら、普通にコンビニ弁当にするし、
もう今日は食べたくないな。ってときは、
簡単にチョコレートとかそういったもので済ませちゃうこともある。

「きちんと、食え。」
そうぶっきらぼうにいうのが彼で、
大きな体をしているからか、ご飯はちゃんと食べているみたい。
もちろん彼も、仕事が忙しかったら、
インスタントラーメンとかになっているんだろうけど。

前に卵焼きを作って。って彼から言われたことがある。
卵焼きとタコさんウィンナーが食べたい。って。
リクエスト通りに作ってあげたら、
めちゃくちゃクシャクシャの笑顔になってた。
ついでにチキンライスも作ってあげて、
手作りの旗まで立てたら、
「お子様ランチを食ってるみたいでうれしい。」
って私をとても強い力で抱きしめてくれた。
そのうちレゴブロックで遊びたい。とか言い出すんじゃないか?って
ちょっと笑っちゃった。

「こたつ、そろそろだすか?」
「うん、そうだね。」

右手には重いスーパーの袋を持ちながら、
左手は私の右手とつないでくれる。

お鍋は土鍋だ。
これも戸棚の上にあるから彼が出してくれる。

それだけのことが、
ただただ、いとおしい。

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