雪が降る夜

雪が降る夜

本来ならばこんな町はとっくに出ているはずだった。
冬になると寒いし、雪が恐ろしく降る。
雪かき、すっごくたくさんしなくちゃなんなくて、
お米はおいしいし、水はきれいなこの街を、
私は心底呪っていた。それもおそろしいくらいの執着で。

その故郷を私は出ていかない。
高校を卒業しても、文句を言いながらこの街で暮らしている。
出ていけないのだ。
ひとりになるのが怖くて。
友達もバイト仲間も、みんながいる。

わたしはこの街を愛している。

今日も雪が降り積もる。
しかもひとつひとつのかたまりが大きい。
ぼたぼた言ってて、おもちでくるんだアイスクリームが食べたくなる。
おもちでくるんであるアイスクリームをよく食べさせてくれたのは、
高校生の時に部活でお世話になった先輩だったな。
先輩、今どこにいるんだろう。

「寒い、寒い。」
そういいながら食べるアイスが好き。
お家の中はあたたかい。
自室のコタツはいつも電気をオンをしているから、よくここで寝てしまう。
先輩、大好きだったの。

私はこの街から出ていかない。
コタツは今日もふかふかのこたつ布団に寝てしまいそうになる。
真っ暗闇にぼたぼた落ちる雪を窓辺に見ながら、
わたしは来週のバイトのシフトを確認した。

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