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プリンに虜


子どもの頃からよく食べたプリンは
プラスチックカップに入っていて
カラメルは甘いものだった。

それがプリンだと思っていた。


大人になって、一人で京都を散策した際、
レトロ喫茶でプリンを食した。

子どもの食べ物だと思っていたプリンが
なんだかすごく高価なものかのように
高級感のある皿に載せられて出てきた。

一口食べた瞬間、衝撃だった。

カラメルが苦い。

白くて甘い部分と
こげ茶色で苦い部分が口の中でとろけ合い
なんとも幸せな味わい...

人生なのか?
プリンは人生なのか?


この美味さは、様々な経験を経た大人にしか
分からない美味さなのか。



当時20代だった私には
ちょっと敷居の高い
重厚感のある家具で揃えられた純喫茶。

そこでお会いしたプリン様は、
私には大人の食べ物にしか見えなかった。

口の中で深く広がるプリンの過去を感じた。



プリンとは、
甘いルックスに人生経験が滲み出た渋い王様である。

それ以降、喫茶店でプリンを食べる時は
一口一口味わって大切に食べるのである。

プラスチックカップのプリンの時のように
数口で飲み込まない。

まるでそのプリンの伝記を読むかのように
ひとすくいひとすくいじっくりと...

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