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書店員研修:カバーと袋の話

前回、本にカバーをかけずに電車の中や公共の場で読むことが小さい宣伝になっていたと信じていた話をしました。

今回は書店のカバーと袋の話をします。

今ほとんどの書店では、「カバーおかけしますか?」「袋はご入用ですか?」と聞かれますね。
でも、私が働き始めた約20年前は、聞かずにカバーをかけることや袋に入れることが当たり前でした。
ちょっとずつ、資源の大切さや地球環境に対しても問題意識が本格的になり、必要な方には渡そうという流れに変わっていき、
2020年現在では、レジ袋の有料化が多くなり、マイバッグを持つ方も多くなってきました。

ああ、このお店もか、次からは袋持参だな。というのが今の感覚でしょうが、まだそんな考えが一般的ではなかった頃には、
「本を買ったらカバーかけるんが普通やろ!それをわざわざ客に聞くんかい!」とか
「言わないと袋に入れてもらえないの?サービス悪くなったんやね」
というお客様もいらっしゃいました。

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さて、カバーや袋の有無を書店員が尋ねたあと、お客様はいるいらないの意思表示をしてくれるのですが、そこで新人スタッフがはたと無言になることがあります。
なんと答えていいのかわからなくなるからです。
通常であれば「かしこまりました」の一言で済むのですが、新人だと緊張してその言葉が出てこない。学生なら尚更。
なので、私は「ありがとうございます」と言うように教えていました。

身近な言葉だから出てきやすい!

カバーいると言われても、いらないと言われても、どちらも
「ありがとうございます」。
楽ちんです。

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ある時、スタッフから聞かれました。
「カバー不要と言われてお礼を言うのはわかるんですけど、つけてと言われた時もお礼を言うのっておかしくないですか?」

いい質問です。
カバー不要の場合は、もちろん環境へのご配慮ありがとうございます。
カバーがいる場合のお礼は、うちの会社の宣伝をしてくださることに対しての「ありがとうございます」なんです。

「ありがとうございます」で通すための私独自の解釈かもしれませんが。
でも、会社の名前が入った袋を街で持ち歩く。カバーをつけた本を読む。
この近くに○○書店あるんだ。
そう思ってもらえたら、それはすごい宣伝の筈。

だから、お客様にお品物の入った袋をお渡しする時は、ロゴマークが外に見えるように持ってもらえるようにお渡ししていました。

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企業がオリジナルの袋にロゴマークや店名を入れて、お金をかける理由はここにあると思います。
書店っぽい袋を見ると、ロゴマークが見えなくても、色合いでどこの書店だろう?と当ててみたくなるのは私だけでしょうか?

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書店の顔(ファサード)という言葉を、『書店員研修のざっくりとした経緯と流れ』で書店の売り場に照らして載せましたが、
それは書店の中での顔。
書店の外での書店の顔というのは、
会社のロゴやサインが入ったブックカバーや袋なのかもしれません。


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