スーパーの電灯と鯖

 片目が潰れた野良猫が喉を鳴らす。相変わらずの佇まいで、軽薄さとは何かを私に教えてくれる。
 「ハロー」
 ピクリとヒゲを動かす。退屈そうに煙草の煙をたった一つの目で追いかけた。薄桃色の皮膚が露わになった腹。禿げていて寄生虫が食った跡が見える。本当にどうしょうもない奴だ。
 残った惣菜をあげたあの日から、奴は此処を寝床にしている。どってりと重い油とヤニ臭いスーパーの裏側で、寛げる場所を見つけたみたいだ。
 「仕方ないな」
 また餌をやる。残った惣菜、今日は揚げた鯖だ。仕方ない、そう仕方ないのだ。こいつも、俺も。何もかも。
 猫は首を傾けて食らいついた。地面へ鯖を執拗に押し付け、噛み切る。

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