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顕微鏡を覗くとそこにはお嬢ちゃん物語

『お嬢ちゃん』

顕微鏡を覗くと、そこにはお嬢ちゃんがいた。
私は目を疑った。
顕微鏡を覗くと、前髪ぱっつんのお嬢ちゃんがいるのだ。
目の前にいるわけではない。…いや、目の前にいるのだが。
顕微鏡で見ないと見えないのだ。
そのお嬢ちゃんが微生物に襲われそうになっている。
私は焦った。
これはどんな状況なんだ?

私は、最近、川の水を調べてくれと依頼を受けた。
その川の近くの住人達は、何やら原因不明の病気にかかっているらしい。
水が原因かもしれないということで、私にその川の水が送られてきたのだ。

私はスポイトでその水を取って、数滴プレパラートに垂らして、顕微鏡で見た。
確かに見たことない微生物がいる。
そしてもう一回調べて見た時だった。
お嬢ちゃんがいたのだ。

見間違いではない。
私にも5歳の娘がいる。
いわゆるお嬢ちゃんというものを知っている。
まさにそれなのだ。
こんなこと言うのもアレだが、一応言っておこう。
私は県から依頼を受けるくらいの人物だ。
長年微生物を研究をしている。そして顕微鏡を覗かない日はない。
そんな私が言う。
あれはお嬢ちゃんだ。
0.2ミクロンの前髪ぱっつんお嬢ちゃんだ。

そう驚く前に、そのお嬢ちゃんが微生物に襲われそうになっているのだ。

何とかしたい。
しかし、どうすれば。
もうあまり時間がなさそうだ。

細胞分裂。
私の頭に浮かんだのはこれしかなかった。
お嬢ちゃんを細胞分裂させて、微生物を倒す。
私は増殖因子をお嬢ちゃんに添加した。
賭けだった。

お嬢ちゃんは二人になった。
私はガッツポーズした。先月の学会で発表した発見より嬉しかった。

お嬢ちゃんは微生物を倒した。

私は思った。
まだお嬢ちゃんがいるかも知れない。
送られてきた川の水を全て調べた。

いた。
しかし、そこには微生物もいる。
だから私は増殖因子をお嬢ちゃんに添加した。
増えるお嬢ちゃん。
微生物をやっつけるお嬢ちゃん。

しかし、私は知らなかった。

住人達の病気の原因は、お嬢ちゃんということを。

むしろ微生物は、人間の味方だった。

そんなことと知らずに私は増殖因子をお嬢ちゃんに添加する。
増えるお嬢ちゃん。
微生物をやっつけるお嬢ちゃん。

町の壊滅に私は手を貸してしまった。

そして現在、お嬢ちゃんはOZYOUCYANと呼ばれ、世界中に前髪をぱっつんしている。


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