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蚊に転生した物語

転生とは、生まれ変わることという意味で、肉体が死んだ後に別の形態や肉体を得て新しい生活を送るという哲学的、宗教的な概念でございまして。
転生は、生まれ変わることだけでなく、環境や生活を一変させることという意味でも使われることがあります。
 
信じるか信じないかはさておき、もし、この転生が本当に起こってしまったら。
人間に生まれ変われるならいいですけど、蚊に生まれ変わっちゃたら大変です。
 
 
蚊:あれ?どこだここ?なんか木でけー。えっなんで?なんで木でけーの。
先輩:おいおい、俺の縄張りに勝手に入ってくるとは、失礼な奴だな。
蚊:うわ、蚊。え?蚊。でけー。気持ち悪い。え?蚊?気持ち悪い
先輩:お前失礼なやつだな。蚊、気持ち悪い何回言うんだ。お前も蚊だからな
蚊:え?うわホントだ、蚊だ、気持ち悪い。え?なんで。蚊だ、気持ち悪い。
先輩: お前、自分にも何回言ってんだ。
蚊:え?どういうことですか?何で僕は蚊なんですか?
先輩:知らねーよ、そんなことは。でも俺はこの辺りでボスだから。先輩と呼べ。
蚊:先輩?蚊に上下関係とかあるんですか?
先輩:当たり前だろ。いいか後輩は先輩の羽をササってやるんだ。ちょっとやってみろ。そういうしきたりだ。
蚊:ササ?何ですかそれ?
先輩:羽を何かこうササってやるんだ。やってみろ。
蚊:え??ササって、こうですか?
先輩:ああいいね。お前上手いな。もしかしてササやってた?
蚊:いや、わからないです。ササ意味わかんないっす。
先輩:ああそうか。イイ感じ、ありがと。軽くなったわ。ブーン聞く?
蚊:いや、いいです。耳障りです。
 先輩:ていうかお前見ない顔だな?どっか来た?
蚊:それが、頭に片隅に残っているのが人間の記憶でして
先輩:人間?そうか、お前も人間だったのか。
蚊:「も」ってどういうことですか?
先輩:まあいい。とりあえず、俺が蚊の生き方を教えてやる。
蚊:え?教えてくれるんですか?
先輩:当然だろ。お前はササした。もう俺の弟子だ、まずは基本からだ。蚊として最も大切なことは何だと思う?
蚊:えーと…飛ぶことですか?
先輩:違う!
蚊:じゃあ…鳴くことですか?
先輩:違う!
蚊:じゃあ 毎日投稿することですか?
先輩:違う なんだそれは。
蚊:毎日投稿していた記憶が
先輩:やはりお前は人間だったようだな。まあいい。今は蚊だ。蚊を全うしろ。いいか、蚊として最も大事なことは、血を吸う事だ。血を吸うことが蚊の生き甲斐だ。血を吸わなければ、卵を産めないし、力も出ない。血を吸うことが蚊の使命なんだよ。
蚊:そうなんですか…でも、人間は危なくないですか?でかいし。
先輩:それが自然の摂理だ。リスクも蚊の人生の一部なんだ。人間は蚊に血を提供する存在であり、蚊は人間に命を捧げる存在なんだ。
蚊:命を捧げる?
先輩:そうだ。人間に血を吸われたら、大抵は叩かれて死ぬ。それが蚊の宿命なんだ。
蚊:えっ?それって悲しすぎませんか?
先輩:悲しいも何もない。それが蚊だ。俺も何度も仲間を失ってきた。でも、それでも血を吸わなければいけないんだ。
蚊:そんな…
先輩:お前が来るちょっと前、俺にはもう一人弟子がいてな。そいつも何やら人間だったやつなんだ。何でかわからないが蚊になったらしい。
人間から蚊になってショックらしくてな、蚊になりきれなかったんだろうな。俺が見ないうちに、軽い気持ち血を吸いに行っちまった。気付いた時にはもう遅かった。パチンって手を叩く音が聞こえて、もう黒い小さな点になってた。あっけないよな。パチンだぜ。もう俺はあんな音聞きたくない。だからお前は人間のことは忘れて蚊を、蚊に、蚊の人生を捧げてくれ。
 
蚊:先輩
先輩:いいか、生きて吸おう
蚊:先輩。
先輩:よし、じゃあ行くか。
蚊:はい
先輩:羽出せ
蚊:はい
先輩:ブーン、
二人:ファイ、オー、ファイ、オー…ブーーーン!!
 
さあ、やってまいりました、人間の家、そこには男がドデンと寝ています。

先輩:いいか、今寝ている。チャンスだ。でも気を抜くんじゃないぞ。
蚊:わかりました。
先輩:呼吸を合わせろ。よし、行くぞー
蚊:おー

ブーン。  

パチン。 

蚊:せんぱーーーーーーーーーーーい!
先輩:俺に構うな。吸えーお前は吸えー
蚊:でも…。
先輩:お前は俺の分まで吸うんだ。
蚊:先輩
先輩:いけ、吸えー
蚊:はい 

ブーン 

シュッ、シュッ。 人間の手を避けてます。

蚊:よし、ここだ、先輩のかたき。

ブス、ちゅーるちゅるちゅる 

蚊:よくも、よくも先輩を

ちゅるちゅるちゅる… 

蚊:もっとだ。もっとだ。

ちゅるちゅるちゅる
 
バタン。人間は倒れた。

蚊:先輩。やばい動いていない。輸血だ。

ブス、ちゅーちゅーちゅー

蚊:せんぱーい

ちゅーちゅーちゅー

先輩:ううう

蚊:あ、先輩。よかった。
先輩:お前、ありがと。でも、なぜおれなんか助けた?
蚊:どうしても無視(虫)できなかったもので。

今回はこの物語の読み聞かせ音声をやりました。
ぜひ聞いてください。


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