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没頭するサービスデザインを考える

「気づいたら開く」「開いてから何時間もたった」

Twitterやinstagram、そういった中毒性をついたサービスにはユーザーが「没頭する」ための工夫がなされています。

Facebookの「あの子と友達になった日」を見て情緒的な気持ちになります。自分には5年も使っていた感覚はなくネット上の友人同士のつながりでしかなかった場所が、コミュニケーションがアーカイブされ数年の時間を経て、そこに人生年表を残す体験価値が生まれた。

その間、一度利用をやめサービスを全く開かない時期もあります。あの時は理由があって離れたはずが「没頭」の記憶が「もう一度始める」の精神的なハードルを乗り越えさせることがある。

順応すると没頭する

スキルに対してタスクが難しすぎると、不安の原因になる。簡単すぎると、退屈を感じる。スキルと難易度が高いレベルで一致した時に、フローと呼ばれる状態になる。こうしてユーザーとシステムはお互いに反応し、返答し合う。

時間を忘れて没頭するゲーミフィケーション的な喜びや体験を「フロー体験」と呼び、体系的な研究をはじめたのは、ミハイ・チクセントミハイです。

(ミラノ大学のFausto Massiminiの研究、半身不随や悲劇に襲われた多くの人々にインタビューにて)彼らの中には、自分の身に起こった惨事を驚くほど受け入れ、障害のおかげでむしろ人生がよりよいものになったと言う人がいるのである。こうした人々の特徴は、心理的エネルギーをかつてないような形で訓練することで、自身の限界を超えることを決意していたという点である。彼らは、服を着る、自宅の周りを散歩する、車の運転をするといった最も単純なスキルからフローを引き出せるようになった。…そのような環境で生き残る人々は、外的環境を選択的に無視し、彼らだけの現実である内的世界に自身の注意を向け直すことができる。
ー フロー体験入門―楽しみと創造の心理学 / チクセントミハイ

能動的にアクションして、それが反応して、快感を覚えて、フロー状態に陥っていく。フロー体験は、受身的な体験ではなく能動的な活動によってお起きやすい。

没頭するデザインの仕組み

順応性のあるサービスは、デザイナーの予想を超えて変化し、成長します。なぜなら順応性のあるサービスはデザイナーではなくユーザーに順応するので、ユーザーが製品を共創するからです。(完成ということがない)

この仕組みをサービスに取り入れようとするとどんな設計が必要? 
ポイントをまとめました。

1. ユーザー自身で行う

「自分でつくる」という能動性をもたせます。ユーザーが行った行動を記録としてアーカイブされる仕組みが、達成感をつくり、思い出を振り返るといった感情に対して働きかけます。またカスタイズ機能。Sketchにショートカットキーやツールバーを変更したり、拡張機能を入れて効率的な作業環境をつくりあげています。他のサービスに切り替えにくい状況をつくるだけでなく、サービスに感情的に愛着を持つようになります。

2. ユーザーに勝たせる

何かを達成したことがわかる設計をします。例えば、Twitterでは、“Twitterに登録した日を覚えていますか?”といったメッセージと共に何周年かお知らせしてくれます。そして # MyTwitterAnniversary タグでシェアできる仕組みもありますね。継続利用することが賞賛されるようです。noteでは「あなたのノートが通算○○回スキされました!」スキされるだけ投稿したこと・価値のある投稿をしたことが評価されます。ちなみにNike Runではトロフィータブが設置され、いつでもこれまでの実績を観にいくことができ、シェアできる画面まで用意されていました。サービスの中でユーザーにどんな行動を期待しているかがわかりますね。

3. 奨励する

ユーザーが持つ能力を明らかにし実行させること。次のステップがわかりやすく、ユーザーは楽しみながらタスクを達成する一歩になります。Progateであればレベルと共に全体の中で足りてないスキルは何か明確です。数字で示されると戦闘能力を示されているようで、競争心を煽られてやる気を起こすわけですね。

4. 感知と反応

その製品が生きているかのように感じさせよう。システムの振る舞いが透明なものであるように。ユーザーが行なっているアクティビティに対してアプリや機器の反応の変化によって、ユーザーのためにデザインされたものだと感じられるようにします。iPhoneを触った人なら体感しているはず。スマートフォンデバイスだからその状況に合わせた透明性をつくる。

iPhoneは「自己帰属感の高いインターフェイス」である。(中略)iPhoneは身体に近い。情報に直接触れているかのような感覚を与えているのである。ー融けるデザイン

5. 一体感を提供する

サービスとの一体感は機能的な透明性だけでなく、そこにいる別の他人とのつながりも一つである。反応を送り合う、コメントを送る、メッセージできる、一人より誰かと一緒の方が続けられる。また戻りたくなる。instagramのライブ配信は、配信時の視聴者とのコミュニケーションを楽しむ。ここにきて一緒に話そう!といったコミュニケーションでユーザー間の一体感をもたらす。

おわりに

できる限り長く使ってほしい。そんな思いで、飽きずに使う、滞在時間が長い、もう一度使ってみようとする。そんな没頭するデザインをつくれるかどうか考えてみた。

(インタラクションデザイナーは)問題を解決するだけでなく、人間同士のインタラクションをもっと豊かに、もっと深く、もっと優れたものにしていくことでもある。つまり人間同士をつなげるためによい方法をみつけ、世界を住みやすくするのである。
ーインタラクションデザインの教科書

「世界を住みやすくする」はいい言葉だ。

ただ、不思議なもので共創の世界では人と人がぶつかりやすい。ユーザーのことを考えれば考えるほど「世界は住みやすいのか?」となんだか深いところまでに辿り着いてしまう。facebookから離れてしまったのは人々は住みにくい世界が嫌になってしまった。また住み心地のいい場所を探して転々としているのだと思うと、安心して暮らせる世界(サービス)をつくる努力を私たちデザイナーがするのは間違っていない。そしてそのために、「いい空気をつくる」のではなく、「いい空気が生成される仕組み」をつくらねばならないと今日も考えています。


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yoshikawa akane

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CS出身のUI/UXデザイナー。トーマツ子会社や株式会社LIGのCSを経て、2017年一念発起でデザイナーへ転身。業務委託先や個人でwebやアプリデザインをひたすら作り続け、2018年9月よりNewsPicks。Portfolio: https://akanyoshi.com