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ずっと恋い焦がれていた。やさしい鬼に会えた2018年

鬼は怖い。

誰でも知ってることだ。鬼嫁とは怖い嫁を意味する。ゆえに「鬼は怖い」という言葉は「頭痛が痛い」と同じような構造を持っている言葉かもしれない。

鬼は怖いものなのだ。

ちょっと待ってほしい。

怖くない鬼はいないのか?

そんな鬼、いるはずがない。

鬼は怖いから存在意義がある。怖くない鬼は存在意義がない。怖いのは鬼のアイデンティティでもある。

そう思っていた2015年以前。そうは思わなくなった2015年以後。

2015年、僕は怖くない鬼がいることを知った。

その名は、やさしい鬼。

やさしい鬼を初めて知ったのは2015年、『マツコ&有吉の怒り新党』での特集だった。

やさしい鬼を知ってからというのもの、時折やさしい鬼について検索し、やさしい鬼の写真を眺めた。

何度もやさしい鬼に恋い焦がれた。

「あのやさしい鬼に一目会いたい」

「あのやさしい鬼の写真を撮りたい」

鬼について、こんなに真剣に考えたのはいつ以来だろう。絵本で初めて桃太郎を知った時、以来かもしれない。

2015年から3年後の2018年。愛知県の中心部、名鉄名古屋駅から電車で約30分。犬山市の犬山遊園駅に僕はいた。

やさしい鬼に会いに来た。

会いたかった鬼は桃太郎神社にいる。

桃太郎神社・・・桃太郎伝説で有名なのは岡山県だが、愛知県犬山市にも桃太郎伝説がある。桃太郎神社は犬山における桃太郎伝説を伝承する神社。

犬山遊園駅から桃太郎神社からは遠い。歩いて30分以上かかる。

桃太郎神社までのバスはない。なぜなら、乗る人がいないからだ。

ちなみに桃太郎神社はじゃらんや、るるぶのような観光ガイドに掲載していない。なぜなら、人気がないからだ。

僕は犬山遊園駅でタクシー会社に電話をする。なぜなら、駅にはタクシーが一台も止まっていないからだ。

電話して10分。予約したタクシーが到着。

タクシー運転手に桃太郎神社に行きたいことを告げる。

「桃太郎神社に行くんですか? おもしろくないですよ」

もうタクシーは走り出している。3年間、恋い焦がれた存在に対して、開口一番、おもしろくないですよ、と言われる。僕は地元のタクシー運転手が太鼓判を押すおもしろくない場所に向かっているのか? それとも、そんな鬼はもう存在しないのか?

タクシーで15分。桃太郎神社に着く。

桃太郎神社に観光客はいない。かわりに烏骨鶏が10羽いる。

桃太郎神社の鳥居をくぐり、階段を登る。そこに僕が恋がれた鬼はいた。

鬼の表情をじっと見てほしい。

村から財宝を盗んだが、桃太郎に退治され、改心。今ではやさしい鬼になっている。やさしい…やさしい顔をしている。なんとも言えぬこの顔。

芸能人でいうと、蛭子能収さんだろうか。エロい、にやけ顔にも見える。いや、でも鬼なりのやさしい顔がこれだ。

人はこんなにも変われるものだろうか。いや、鬼はこんなに変われるものだろうか。元の顔はわからないが、随分と人相が変わったように思う。いや、鬼相は変わった。

恋い焦がれた鬼に会えた。鬼の写真を撮れた。

この写真が僕の2018年ベストショット。

桃太郎神社ではコンクリート造形師、浅野祥雲によって桃太郎のさまざまな名場面がコンクリート像で再現されている。この写真で興味を持った方はぜひ浅野祥雲についても調べてほしい。


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