馬の合わない店長との折り合いについて4

私がいつものように「おはようございます!」と裏口を開けたら、大きな体の男の人が立っていました。
「あ、おはようございます。」
新人の食材の業者さんか、酒屋さんだと思ったので、そのまま通りすぎようとしました。

「あ、寺田さん。彼ね、山川君。ちょっとだけ、お試しで働いてもらうことになったんだわ。よろしくね。」

店長の説明を聞いて、慌てて挨拶しなおしました。

上田店長によると、10年以上前、上田店長が某有名イタリアンチェーン店でエリアマネージャーとして働いていたとき、管轄内の店舗の社員として入社してきたのが山川さんだったそうです。
それから、山川さんは何年かして退職し、いくつかの飲食店や有名フランス料理店の厨房で働き、そこを退職してから、今は規模の大きい八百屋さんで働いているとのことでした。
八百屋さんの仕事を辞めない限り、お店では働けないので、今回三日間だけ『サーラ』で働いてもらい、今後どうするか決めてもらおうと思ってる。
そういった感じで、仕事終わりに上田店長は説明してくれたように記憶してます。「山川くんが、『もう歳も歳だし、自立したい』って言ってたから、おぉ、ちょうどいいじゃんて思ったんだよねー」とも言っていました。

山川さんの顔をちゃんと見て挨拶をしたとき、私は違和感を覚えました。
今日が初日だからかな、とも思いましたが、山川さんには同じ四十代の上田さんが発しているような「自信」みたいなものが全く感じられませんでした。明らかに、上田さんとは人種が違う。上田さんは、山川さんと仲がよかったのかな?山川さんが仕事の相談をするほどの仲だったの?え、ほんとに?
上田さんが「陽」なら、山川さんは「陰」、「都会」と「田舎」、「パリピ」と「オタク」、「イタリアの太陽」と「北海道の吹雪」、「ジローラモ」と「ドカベン太郎」

まだ一日しか一緒に働いていないけど、私の頭にはそんな対極な関係ばかり思い浮かんで、一日モヤモヤしていました。

そして、もう一つ、モヤモヤに拍車をかける要素がありました。山川さんの挨拶には「笑顔」がありませんでした。いや、ひょっとしてあれは笑顔だったのかな。だとしたら、山川さんの口角は、分度器で測ってやっとわかるくらいしか上がってなかったと思います。

いやいや、まさか。ここ飲食店だし、接客業だし、これから社員になるかもしれない人が、そんなまさかね。でも、どう考えても・・・

この人、めちゃめちゃ人見知りじゃない?



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