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おすそわけ日記 194「我が家のミステリーゾーン」

いつもの公園で道に迷う。

あるはずの出口がない。


もしかして、緊急事態で出口の門を塞いでいるとか!?

と思ったが、塞ぐ前に、そもそも門も出口も見当たらない。


これは、出口が取り壊されたか、狐狸妖怪の類に化かされたかの二択。

考えながら、暑い中、ぐるぐる歩き、元の広場に戻ってしまった。


その時点で「道に迷った」と云う三つ目の選択肢が頭に浮かぶ。

まさかとは思うが、可能性的には濃厚。


今度は、広場から出口への近道を通ったら、

すぐ目の前に出口が!

人もちゃんと通っている!

これ、化かされてるんじゃない!


いやー、三十年以上住んでいる所でも、まだ道に迷うんだね。

ミステリーゾーンって、結構、身近にあるんだなぁ。

その夜、茶道の研修から帰ってきた母が、もじもじしている。

「あのね、怒られちゃうと思うんだけど、お話しすることがあります」


あー、この流れは、すごい報告が来ちゃうやつだ。

私が居ない間に、家の窓ガラスをぶち破って「ワケは聞かないでください」ってメモ残ってたのとか。

あれ系かな。半ば、達観しつつ、覚悟を決める。


「実は、今日、六本木で道に迷って…タクシーを拾ってしまいました!」

え、それだけ?

思わず、拍子抜けする。


母曰く。

前の晩に、六本木のバス乗り場を丁寧に教えて貰ったにも関わらず。

駅の出口を出たら、ぼーっとしてわからなくなり、その間にバスが行ってしまった。

駅の地下で水飲んだり、ゆっくりしてたのが悪かったの。

だから、タクシーで青山学院前まで行きました。


そこまで言って、母はものすごく小さくなっていたけれど。

いやー、全然、想定内でしょ。

だって、お母さん、暑い日に着物で出かけたんだから。

困ったら、タクシー使うよね。


何よりも、公園で道に迷った私が、どの顔で母を責められよう。


たとえ、駅の出口を出てすぐ左にバス停があったとしても。

その地図をスマホにもメモにも母が控えていたとしても。

これこそ、母にとってのミステリーゾーン。


この世界には、ミステリーゾーンが多いなぁとぼんやり思いながら。

一番のミステリーゾーンは、私と母の頭の中にあるのかもしれない。


【今日の一枚】私が見失った、公園の出口です。人が普通に通っていて、驚きました。なんだ、あるじゃん!みたいな。いや、そこにずっとあったわけですが。

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