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おすそわけ日記 62 「ケーキ一つ、真剣に選べなかったら」

ケーキを買う時は、いつも真剣勝負だ。

今日も、ケーキ屋のショーケースの前で座り込む。「私が今、食べたいケーキはどれ?」この問いかけを、何度も心と身体に投げかける。

店に来る前は、サバランにしようと思っていた。でも、本当に?私は今、サバランを食べたいの?

身体の中にサバランの味を広げて、反応を見る。たっぷりの生クリームと、じゅわじゅわと滲み出るブランデーの香り。これで充分な気もするけれど。

横にある、和風パフェに目を惹かれる。これはまだ食べたことがない。生クリームに白玉、ほうじ茶のジュレにパンナコッタ、きなこと黒蜜。大体、味の検討がつくので、その想像を広げて行く。

人目を気にせずに延々と悩み続け、ある瞬間に「パフェが食べたい!」と身体の中で火花が散る。

家に帰って食べた和風パフェは、想像していた以上に美味しかった。隠される様に入っていたチョコレートの甘さがアクセントになって、バランスの良さにのめり込む。

「ほらね、ちゃんと私の言うこと、聞いてよかったでしょ。」私の中の私が得意そうに笑って見せる。

自分が食べたいものがわからなかったら、きっとやりたいことだってわからない。

ケーキ一つ、真剣に選べなかったら、人生の分かれ道で、私は迷ってどこにも行けない。


【今日の一枚】折角美味しいのに、ウツクシク撮れなかったので、お店の名前は伏せておくのでした。

今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。

毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。