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おすそわけ日記 127 「ナソナとイソ二劇場〜母の日だった〜」

ナソナこと、母、七十七歳。生粋のおとぼけ。
イソニこと、私、五十二歳。ボケとツッコミの二刀流。
そんな二人が繰り広げる、愛と笑いとちょっぴり心配も詰まった日常。

二日連続で早起きした奇跡。

昨朝は、ZOOMのミーティングを抜け出してケーキを買いに行く。

ここしばらく、近所の美味しいケーキ屋さんに出かけようと思う度に休みの日や営業時間外で叶わず。調べたら、次の月曜日から月末まで休業とのこと。これはもう、開店と同時に行くしかない。

店の前に着いたら、既に並んでいるお客さんが一人。流石だね、ファンが多いねと思いながら、初めてのソーシャルディスタンス並びをしてみる。

話は変わるが、ソーシャルディスタンスとか、ステイホームとか、国は何故、国民への通達に日本語を使わないのだろう。言葉をぼかして重要度を薄めて、わかりにくくしている。ウィーアー日本人。

閑話休題。店の中に入ってショーケースを眺めたら、写真を見て食べてみたいと思ったケーキがなく、母のお気に入りのサバランもなく、耳からはイヤホンでZOOMの様子が流れ込んで来て、店内の様子も様変わりしていて、あぁ、急がなきゃな焦りを感じる。

結果、思わず、一番目の付く所にあった、ホールのショートケーキを頼んでしまう。

自分の大胆さに驚きつつも、しばらく、ここのケーキを食べられなくなるし、何より、母の財布を持って来てるしと、自分を納得させる。が、ケーキの上に飾るプレートに書く言葉を聞かれて再び動揺、「ラブでお願いします!」と口走る。

「ラブは、全部大文字でよろしいでしょうか?」と確認され、「あ、はい。」と答えながら、いや、本当に?名前とか入れるべき?でもなんで!?誰の名を!?と、無駄な問いかけが頭の中を駆け巡る。混乱して「ラブの後ろにハートを描いてください!」と言って、お店の人にニッコリされる。


店の外でケーキの出来上がりを待ち、興奮した面持ちで帰宅。満面の笑みで、母に「ケーキ、ホールで買って来ちゃった!」と報告したら、母が応えて「明日、母の日だから?」

…母の日?…え?

「綺麗さっぱり忘れてたー!!」

そういや、ケーキ屋さんのレジ周りに母の日のポップが立ってたよね。ホール買いに興奮してたから、ろくすっぽ見もしなかったよね。さっきのプレートの言葉には、ちゃんと正解があったんだ。「お母さん、ありがとう」って。せめて、LOVEの後に母の名前を入れるとかしておけばよかった。まぁ、母の財布からケーキを買った時点でアウトなんだが。

結局、「お母さん、いつもありがとう。愛してるよ、LOVE♡」みたいな所に落ち着いて、母と二人で美味しいねとケーキを食べる。母がホールの六分の一を。私が六分の五を、ご飯代わりに。


母の日当日である今日、一人、散歩に出た母が、自分のために花を買って帰って来る。黒みががかった赤の薔薇に白いカーネーション。何故、白なんだ、母さん!と云う私のツッコミを無視して、母は「自分にご褒美上げるんだぁ。」と幸せそうに自分の世界に浸っている。

せめて私が夕飯でも作ればと思うものの、今夜はつくりおきの餃子。じゃあ、せめてせめて「お母さん、餃子にポン酢、たっぷり使ってください。」母、寂しそうに笑って、このことは日記に書いておきますねと遠い目をする。

「お母さんは、私が何をしたら嬉しい?」そう聞いたら、母がしみじみと「元気で居てくれれば、いいよ。」と言う。「元気で居てくれれば。本当に、ただ、元気で。」噛んで含めるように繰り返す母を見て、色々なことがあったなぁ、辛い時も一人でがんばってくれたんだなぁと辿ってきた道を心でなぞる。

最終的に、母が好きな嵐のアルバム『untitled』と大野君のソロ曲をiTunesで購入して共有と云う名の贈呈。楽しんでくれるといいな。

【母の日に寄せて】以前にもこちらで紹介させて頂いた、母へのインタビュー記事と動画です。

昨年、母がダイアログ・ウィズ・タイムのアテンドを勤めた際、Buzz Feed Japan様に取材して頂きました。動画の収録時、母はすごく緊張していて、早く終えたくて、スラスラと台詞を言うように話していました。でも、ダイアログ・ウィズ・タイムの場で生まれて初めて自分の人生を語った時は、たどたどしく拙いけれど、魂からの真実の想いを押し出すように言葉にしていました。いつも我慢をして、きっと誰もわかってくれないだろうと自分の気持ちに蓋をして来た母にとって、どんなに勇気が要ったことでしょう。あの時の感動を、私は一生忘れないと思います。

早くこの災禍が収まって、今年もダイアログシリーズが開催されますように。

【今日の一枚】15号サイズのケーキをぺろり美味しく平らげました。

【#つづく日々に】のタグをつけて、日常で心ときめいたことを投稿する企画をはじめました。日常のよろこびをみんなでシェアしあって、笑顔が増えたら嬉しいです。

今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。

毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。