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論文の要約

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アート系の論文の要約、学術的意義を自分でまとめています。
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#絵画

【要約】天野知香「「装飾」の潜在力」(2019)美術フォーラム21 第40号

【要約】

本稿は、美術フォーラムの特集「「装飾」の潜在力」にあわせて執筆された論考である。本稿では、ルネサンス以降から近代、現代までの装飾や文様の捉え方や解説したうえで、1970年代という時代は美術(特に絵画)や装飾について大きく価値を変えようとした転換期にあたると考察している。その中で1970年代に活躍したがアメリカの美術評論家エミリー・ゴールディンを紹介している。
エミリー・ゴールディンは同

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中林和雄「マティス試論(Ⅱ)—絵画と装飾性」を要約する

中林和雄「マティス試論(Ⅱ)—絵画と装飾性」を要約する

【要約】

著者は、アンリマティスの装飾性について考察するものである。この考察では、マティス絵画における装飾性を分析し、その特徴を時代における芸術の議論等と検討しながら、マティスにおける装飾性とはどんなものなのかを明らかにする。

これまでのマティス論では、マティスにおける装飾性は絵画に装飾文様を導入するもので合った。しかし、筆者はこのような装飾文様を導入するにも関わらず、絵画において暴力的に構図

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【要約と学術意義】谷川渥「ジャンルの解体」『表象の迷宮 : マニエリスムからモダニズムへ』

(1)要約
谷川は本稿において、絵画や彫刻の境界が流動化し、名称と実態がますます乖離してきているように見える事態を「ジャンルの解体」と定義し、彫刻と呼ばれるジャンルが、絵画は純粋化や自律性を目指していった動向に比べ、逆にジャンルとして拡張され、曖昧になったと主張している。それは、グリーンバーグやフリードの指摘するフォーマリズムを擁護したモダニズムの思想を逆説として現れた現象として捉えることできると

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【要約と学術的意義】中島彩乃「クレメント・グリーンバーグの工芸観ー装飾との関わりを中心に」

(1)要約

本論は、アメリカのモダニズム絵画を唱えたとして有名なC.グリーンバーグの工芸に対する批判的な態度を、特に<絵画における装飾性>の観点から明らかにしている。
まず本論では、グーリーンバーグのミニマリズム彫刻に対する批評的な態度を例にだす。彼は、ミリマリズム彫刻をグッドデザインと揶揄し、徹底した職人技に見られるような表面仕上げ(=オブジェクト)を非芸術であるという主張に着目している。また

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