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ママのための化学教室-2 遺伝子をめぐる世界


今回は、前回に引き続き遺伝子についての話題ですが、話は少し広い視点で。

遺伝子組み換え、遺伝子(ゲノム)編集、クローン技術の違い

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遺伝子組み換え植物がなぜ困るのか?(1)

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ゲノム編集とは? (1)

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最近話題に上がるようになってきたゲノム編集。簡単に図を示します(4)。まだまだ研究室の中での開発が主なようですが、一部商品化もされています。そのメリットは、従来法に対し、開発期間が格段に短くなること。原理的にも今まで自然の中で起こってきたことを人工的に行っただけなので、人や環境への影響が少ないだろうと言われていますが、「人間の役に立つかどうか」という視点でのみ変更が行なわれているため、自然の中で淘汰されてきた不適当な改変はどうなるのかなど、従来法による改良作物との違いについては、まだ何も語られていません。

遺伝子組み換え作物とゲノム編集作物の問題点

遺伝子組み換え作物やゲノム編集作物は見た目で区別がつかないので、アレルギーのある方にとっては、大問題ですし、家畜の飼料に与えた場合の影響など、さらに深く研究することも大切です。

お子さんたちの方が授業などを通して情報を知っていることも多いので、時々情報交換してみてはいかがでしょうか。パパやママに自分が何かを教えられるというのは、お子さんにとっても貴重な体験になることでしょう。

遺伝子組み換え食品の表示義務については、欧米では法制化されていますが、日本ではなぜか緩和されつつあます。種子法の廃止や種苗法が変わったことで、日本国内での遺伝子組み換え作物の栽培も増加する可能性が高くなってきています。

健康への影響、欧米との規制の違いから商品が輸出ができなくなる可能性等も考慮に入れて、今後議論していく必要があると考えます。

また、世界の種を財力に任せて、少数の多国籍企業が握ってしまうことにも危機感を持ってほしいと思います。

世界における遺伝子組み換え生物に関係するする条約(2)

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世界では、上記の生物多様性に関する条約が、遺伝子組み換え生物に関わっており、今のところ「カルタヘナ法」が遺伝子組み換え生物関して、国境を越えた場合、損害に対する責任と救済を規定しています。

生物多様性に関するもう一つの条約である「名古屋議定書」は、その国の遺伝資源(生物や植物、民間療法の情報)を物出す場合、対価に関する契約を交わすことを前提とした条約ですが、最近、遺伝子配列にまで範囲を広げる動きが活発になり、論文撤回が発生するなど、自由な研究が阻害される事態が起こってきています。途上国と先進国間の搾取の歴史が根底にあるとはいえ、途上国の技術的進歩も著しい昨今、今回のように世界的な病気の流行や災害の解決のための国際協力や、途上国も研究のために対価を支払う立場になる可能性も理解した対話が望まれています。

最後に 農林水産技術会議のゲノム編集技術 に対する解説で、「あなたの疑問に答えます」シリーズ全8回のインタビューを行った、科学ジャーナリストの松永和紀(まつながわき)さん言葉を紹介します。

「現代社会は、科学技術の発展に支えられています。ゲノム編集は、品種改良に要する時間やコストを劇的に削減できるツールの一つで、食料生産向上や気候変動対策などに有効な技術です。科学は難しいけれど、関心を持ち続けないといけない。バラ色の未来だけを描くわけではありません。もし、思いがけない悪影響が起き始めた時に、なるべくそれを素早くキャッチし適切に対処するためにも、理解と関心の持続が必要なんです。同時に、人は生来の感情によってどうしても、物事の見方にバイアスがかかってしまい、不合理な思考に陥りがちであることを踏まえ、人類の未来を損なう判断をしないように努力しなければならない。」(松永和紀、科学ジャーナリスト)(3)

遺伝子改変技術は、「できるかどうか」ではなく「やっていいいのか」という倫理的なところに来ているのが現状です。そしてまだまだ発展途上です。未来を考えるには、まず関心を持つことが第一歩です。

絵本の紹介

今回は、頭の中がグルグルしていても大丈夫、謎の生物の絵本です。

なぜか小さいお子さんにウケが良くて。著者ご本人による読み聞かせの動画がありましたので、紹介しておきます。絵本は、自由に読んでいいんだよ、という作者からのメッセージですね。

あなたなら、どう読みますか?

「もこ もこもこ」(著)谷川俊太郎 、(絵)元永定正、文研出版 (1977/4/25)
谷川さんご本人による読み聞かせ画像:

参考文献 


1.  資料2:「ゲノム編集技術を利用して得られた生物に係る取扱い方針(環境省公表)を受けた農林水産省の対応について」 [PDF形式:1MB]; https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/risk_commu_2019_001/pdf/risk_commu_2019_001_190726_0002.pdf

2. カルタヘナ法説明会、経済産業省使用資料(2021.1.29開催) https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/cartagena/new_info/210129_presentation-meti.pdf

3. 農林水産技術会議> ゲノム編集技術 > 2.「あなたの疑問に答えます」シリーズ第8回のインタビューを終えた松永和紀(まつながわき)さん(科学ジャーナリスト)が最後に言われていた言葉。(https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting/interview_8.htm)

<以下はもう少し詳しく知りたい方向け。7, 8は問題提起です。>

4. 消費者庁; ゲノム編集技術応用食品の表示について、 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genome/pdf/genome_190919_0001.pdf

5. 農林水産技術会議 > ゲノム編集等の新たな育種技術(NPBT) ゲノム編集技術、https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting.htm

6. ゲノム編集マサバ編(取材先:九州大学農学研究院附属アクアバイオリソース創出センター唐津サテライト)(令和2年12月22日掲載)

7. 遺伝子を改変してより優れた作物を! ゲノム編集は農業界の革命児となるか、2020.12.1、https://agrijournal.jp/renewableenergy/53938/

8. ゲノム編集食品は本当に安全?、政策委員(中央区東支部) 高 岡 和 夫、札医通信、2020.8.20、No.636、 https://www.spmed.jp/14_kankei/opinion_pdf/02_op/opi_R0208.pdf



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