トランプ氏の主張について考える(絶望的なアメリカの分断、民主主義と国際平和の危機)

アメリカ合衆国、共和党大会において、ドナルド・トランプ氏が正式に大統領候補として指名された。J.D.バンス氏が副大統領候補に指名された。

トランプ氏は、海外に展開する米軍部隊の一部を国内に戻し、国境警備にあて、乱用が深刻化する医療用麻薬フェンタニルの密輸阻止にも海軍を派遣すると主張している(出所:産経新聞など)。確かに、フェンタニルは多くの人が中毒になり、社会問題になっている。だが、日本や韓国などに展開している米軍を国境警備にあてるというのはナンセンスだ。国境警備隊や警察官、州兵などを動員できるはずだ。なぜ、わざわざ「海外から戻す」というのか?これは、「日本や韓国はフリーランチで防衛してもらっている」というメッセージを発し、外国に責任転嫁しているように思える。日本は、いわゆる「思いやり予算」など、アメリカには資金を納入している。

そして、トランプ氏は、こんな主張もしている。
「台湾のTSMCは、アメリカ政府からの補助金(つまり国民の血税)でアメリカ国内に工場を建設している。それならば、中国の脅威から守るための防衛費をよこせ」このような旨を発言した。さらに、ウクライナについても、「ロシアに奪われた地域は諦めて、戦争を早期に終わらせるべきだ」と主張している。国際平和よりも、とにかく「1ドルでも外国に使いたくない」というしみったれたケチな姿勢がみてとれる。だが、それもアメリカの貧困層からすれば当然かもしれない。日本だって、政府は海外に何兆円もの支援をしているが、国内に貧困に苦しむ人は多くいる。

もはや、「アメリカは世界の警察」として秩序を維持するのは、内政が理由で無理なのかもしれない。トランプ氏を擁護するわけではないが、これはもう30年以上も前から、アメリカの格差や貧困というのは社会問題になっていた。それが解決されていないのだ。もちろん、だからといって国際平和を犠牲にしてよいことにはならないが。

さらに、トランプ氏は、環境保護のための石油採掘制限を中止し、「石油をドリルで掘りまくってやるぜ、ベイベー!」(英語では"drill, baby, drill,")と発言している。これは、激戦州の石油事業者の票を狙ったものだ。私は、地球環境の保護政策に賛成だ。しかし、石油事業者の中には実は中小企業も多い。そうした人が、危険な採掘事業をしているのに、バイデン大統領の政策のせいで「悪者扱い」され、報われないという気持ちになってしまうのも、わからなくもない。バイデン氏は、環境保護政策を推進するとともに、失業リスクのある石油事業者に代替となる雇用を与える政策をするべきだった。

トランプ陣営も、反トランプ陣営も、対立は非常に過激化・先鋭化している。テレビ番組ではお互いを口汚くののしる場面も放送されている。トランプ氏が銃撃されたのは、「バイデンのせいだ」と主張するカルトもいる。

もう、アメリカの民主主義は死に向かっており、分断はどうしようもないほどに深まってしまっているのかもしれない。

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