第三十四回文学フリマ東京を終えて
暑い。31度らしい。友人と共に荷物を持ちながら駅に向かった。友人は「暑くて最高」と言っていたが、確かにこの暑さは私の晴れ舞台、及び死に際にふさわしい。
およそ2年ぶりの流通センター。当時一緒に出た人と駅前で待ち合わせしたのを思い出した。初対面だった。その人とはなんやかんやあり失踪されてしまった。また別件で他の人にも失踪された経験があるのだが、かなり失踪されがちな人間であることがわかる。
ブースの準備に意外と時間がかかった。知名度などがあるはずもなく、とにかく足を止めてもらおうと殴り書きをいっぱいした。既刊と新刊を持って行った。「元彼への私怨で出した最低本」、「500円でイカれた女の人生読めます」。
12時。人が入ってくる。誰もこちらに来ないし見向きもしない。しかし呼びかけると足を止めてくれた。この調子で続ける。友人がすごかった。めちゃくちゃ声かけてた。私と違って近寄るなオーラがないのでかなり助かった。なんか知らんが結構売れている。2年前は18部しか売れなかったので50部しか刷っていない。そのとき余った在庫の既刊も売れていく。2年前と全然違うスピードで。
あれ…なんか…
ヤバくね?????
友人と顔を見合わせる。段ボールは空になっていた。あらかじめ連絡があった知人の分は取っておいた。
完売した。
マジで?いやマジか、そんなことある?既刊新刊合わせて70部売れた。そんなことあるのか。たぶん15時前だった。早くね。
友人「次100刷ろう」
いや、これで調子乗って爆死したら笑えない。たまたまかもしれない。いやたまたまなんだよな。はあ怖い。何があるかわからない。本当に何があるかわからなかった。
「手紙を書いてきたんです」
そう言われて何が起こっているのか余計わからなくなった。noteを読んで書いてきてくれたらしい。いやどれ?どれ読んだの?マジでなんで?いやめちゃくちゃ嬉しいけどマジでなんで?
やることがなくなったので早めに撤収した。カバンの中にはブースの装飾品。もらった手紙。2年前売れ残った本をカバンに詰めたことを思い出す。今日、それはない。
でもなんとも言えなかった。なんとも言えないというか、よくわからない感情だった。電車に乗って最寄りの高田馬場の喫煙所で煙草を吸ってから家に向かった。元彼には出会さなかった。2年前とは違うのだ。
今聴くにふさわしい音楽は何か考えた。そんなものはなかった。何かに浸る必要がなかった。ようやく実感が湧いてきた。やってよかった。
全部終わりにするための出店。でも終わりにしなくてもいいのかも。そんなふうに取り決める必要はないのかも。またやりたくなったら出てもいいのかも。終わりは始まりとか、そういう言葉があんまり好きじゃないけど、そう思うのも悪くはないのかもしれない。
家に帰って手紙を読んだ。こんなことがわたしの人生で起こるなんて誰が思っただろう。誰も思わない。今日もきっとわたしは誰かにとって嫌な奴。でも手紙をくれた人もいる。自分に自信がない。でもその事実を見つめる。
ありがとう。まだ生きられるかもしれない。いや、これで生かされるのは違うしそんなつもりないし何があってもわたしは生きるけど、でもなんか泣きそうになった。知らない他人が何かを思ってくれることってあるんだな。
今後の活動は未定です。前向きに検討しております。
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