【本23】企業参謀
読む前は「難しそうな本だな〜」と思いましたが、読んでみると「なるほど」と思うことがたくさんでした。
問題を解決する際の考え方、戦略を立てる時の流れなど、分かりやすく書いてある本です。
『設問の仕方を解決策志向的に行う』
というのは、とても役に立つ問題解決のためのやり方だと思います。
まとめていくと、だいぶ長くなってしまったので、前半と後半に分けたいと思います。。
☆本の内容☆
○戦略的思考入門
一見、混然一体となっていたり、常識というパッケージに包まれてしまっていたりする事象を分析し、物の本質にもとづいてバラバラにしたうえで、それぞれのもつ意味あいを自分にとってもっとも有利となるように組み立てたうえで、攻勢に転じる。
一度バラバラにすると、見えなかったものが見えてくる。
〇『設問の仕方を解決策志向的に行う』
同じ問題についても、いくつかの設問を試みる。
(例)残業が慢性化している会社で、しかも業績が思わしくないとき、
「残業を減らすにはどうしたらよいか?」という設問をすると、
・昼間一生懸命働く
・就業時間のターゲットを5時にして仕事をする
・昼休みを短縮する
・私用電話の長電話を禁止する 、など
多くの案が出てくるに違いない。
だが、こうした提案箱的やりとりには本質的な限界がある。
それは、設問そのものが解決志向的でないからだ。
設問の仕方を「当社は仕事量に対して十分な人がいるのか」と変えてみる。
こうなるとYESかNOしか答えがなくなる。
YES、すなわち十分な人がいるという答えを出すためにはかなりの分析が必要である。
同業他者との比較や、この会社の売上が半分であったころの間接人員一人当たりの仕事処理費、コンピュータ化の程度とその経済効果などについて焦点が絞れてくる。
そして売上高からみても、一人当たり利益から見ても、直・間比(直接労働者と間接人員の比)からみても、他者との比較においても、歴史的にみても、いずれも現在の人員レベルでは低すぎる、すなわちNOという答えが出てきたときには、解決策を得たに等しい。
すなわち「人員増」が答えであり、それは経営のあらゆる指標によって正当化される答えであり、所期の効果が現れる可能性も大きい。
同じ状況にあって、設問の仕方を「当社は仕事の量と質に対して人間の能力がマッチしているのか?」としても解決策志向型である。
NOと出てくれば答えは「適材がいない」。
すなわち解決策は「人材教育」又は「人買い」にまず求められるからである。
YESと出てくれば、質ではなく量に問題のあることを示しているので、その場合には「教育」ではなくて、「人数」に解決策を求めなくてはならない。
人数が不足し、かつ経営指標からも増員が十分に正当化されるのに「昼間一生懸命に働く」とか「昼休みを短縮する」などというのは効果も少ないと思われるし、本質的な問題の解決になっていない。
問題を分解する。
そうすると、設問の仕方が変わる。
設問の仕方を変えるのは難しいけど、少しずつ慣れていくことが大切。
同じ努力をするなら、もっと“うるおい”のある解法を知って、それを目指した方が精神的にも見返り的にもよいのではないか。
漫然とした改善案を拾うような設問ではなく、解決策につながるような設問の仕方をつねに発せるように訓練し、心がけておくことが大切である。
解決に向けての努力を、無駄な方向へ進ませない。
*設問を解決志向的にすることによって、物の本質に迫る解決策というものを出す場合、設問が的を射ているためには、問題点そのものがすでに正しく把握されている必要がある。「問題点のしぼり方を現象追随的に行うこと」
現象として現れている問題が何に帰属する問題であるのか、何に深くかかわりあいがあるのか、ということの理解なしには真の解決策は得がたい。
問題点を正確に把握すること。
分かっているけど難しい問題です。
そのためのツールが下に紹介されています。
すぐ忘れてしまいがちですが、問題だなと思うことがあった時、使っていきたいですね。
【本質的問題解決のプロセス】
現象 ➡︎ グルーピング ➡︎ 抽象化 ➡︎ アプローチ設定 ➡︎ 解決策と思われる仮説の設定 ➡︎ 分析により仮説の立証又は反証 ➡︎ 結論の導出 ➡︎ 具象化 ➡︎ 実行計画の立案 ➡︎ ラインマネジャーによる実行
現象 ➡︎ 実行 という短絡的なものではない。
本質的な問題を解決しようと思えば、こういった手順を踏むことが大切。
〇つねに本質に迫るための方法論
1、イッシューツリーまず大きな問題点(イッシュー)を提示し、これを相互に重複することのない2つ以上のサブ・イッシューに分割していく方法。
問題が大きくて手のつけられなかったようなものでも、もっと手のつけられるような問題に分岐していく。
2、プロフィット・ツリー
収益改善のための診断を開始する時点では下の3つの変数を同じウエイトで扱う必要がある。
○売価(P)
○コスト(C)
○販売量(V)
多くの会社では設計、製造、販売部門が縦割りで、排他的傾向を持っている。
このため、ともすると、両者の境界領域に横たわっている大きな収益性改善のポテンシャルが見逃されがちである。
縦割りの部署では、境界辺りは微妙な空気が流れています。
「こんなことまで口出していいのかな」「これはあっちの部署の問題だから」と、お互いに譲り合い(?)、見逃されているものもたくさんあると思います。
*問題解決成功の尺度
財務情報によってもたらされなくてはならない。
○管理会計(マネジメント・アカウンティング)
経営戦略用の会計では、企業という組織に固有な入力と出力の間の“増幅率“(=”利益率”)にその焦点を当てている。
経営戦略のための会計学は“組織のもつ効率“に焦点をおいている。
利益増幅率=売価 ÷ コスト
○企業における戦略的思考
*中期経営戦略計画
参謀としての頭脳グループがもっとも有効に力を発揮できる短期でも長期でもない、その中間の中期経営戦略(大体3年くらいを中心とした前後1、2年)。
この期間こそ、戦略のよしあしによって業績がもっとも大きく"左右されうる"期間なのである。
*中期戦略の立案プロセス〈8つのプロセス〉
・ステップ1 目標値の設定
空想的願望でなく、外的客観条件に照らして、「現実的」と思われる願望を設定すること。
また、のちの評価のために、この願望を「定量化」すること。
「やったけどダメでした」とならないための「定量化」が大切。
どこの、何が問題だったかを振り返れるようにしておくこと。
・ステップ2 基本ケースの確立
現在ある事業をあるがままにやった場合に業績を計る尺度でみて、どのようなことになるのか、というのが基本ケース。
基準となるもの、ということですね。
・ステップ3 原価低減改善ケースの算定
経営者の真髄は、潮の流れ、成り行き任せ、と思われていた基本ケースから、どのくらい経営努力によって変革できるか、ということによって測られる。
ステップ3ではコスト側において変革の計画を立案。
1、達成されなかったときに「残念でした」というだけでは計画の意義が出てこない。
ここはあくまでフィードバックし、目標不達成の原因分析と、早急な対策が練られる手段を内蔵していなくてはならない。
2、担当管理職の努力具合も適正に評価できなくてはならない。
基本ケースの仮定に誤りがあるのに、目標を達成しなかったという理由で問責されるのはかなわない。
・ステップ4 市場・販売改善ケースの算定
原価の下がったものを同じ個数だけ売ったのでは効果は知れている。
また、原価を下げる努力をしないで市場で悪戦苦闘して売っても、やはりその効果は薄い。
市場における努力とコスト低減の努力が重畳して、はじめて真に大きな改善が全体として達成される。
ステップ4では市場側において計画を立案。
この二つの改善ケースは難しい問題ですね。
でもケースを策定しなければ、改善することはないので、とても大事な部分でもあります。
・ステップ5 戦略的ギャップの算定
ステップ4を終えて、ステップ1での目標値との差がすべて埋め尽くされていれば、会社の経営陣は、原価低減と販売努力をしていれば安泰である。
しかし、現実はこの時点でもギャップが存在するのが普通である。
このギャップは、もはや今ある事業を、現陣営で可能な最大限の努力をしても埋まらないギャップで、運営的な努力の限界値と目標値との差である。
<戦略的ギャップの表現>
収益性に悩む会社なら、尺度に収益性を。
とくに株主の影響力が強いとか、親会社に良い業績を見せるといった場合にはROCEやEPSなどが用いられる。
また、大きいことはいいことだという考えが支配的であったりする場合には売上高そのものを用いることも。
ここで、改善ケースを超えたものを考え出さなくてはなりません。
それが次のステップの戦略的代替案。
改善ケースを超えたものは、新しい戦略となって実行されていきます。
・ステップ6 戦略的代替案の摘出
現状の延長線上に解がない、ということがステップ5の存在する所以であるから、解決策は何か新しい、従来の枠組みの外に求められる。
解は必ずしも一つではなく、複数個の代替案が考えられる。
通常このプロセスは、厳密に解析的なアプローチはなく、戦略立案に慣れているエキスパートのコンサルティングを受けるか、社内でのブレーンストーミングなどが有効。
代替案としてよく出てくるものは、
1、新規事業へ参入 ➡︎ 多角化
2、新市場への転出 ➡︎ 海外市場など
3、上方、下方又は双方へのインテグレーション(垂直統合) ➡︎ 石油精製から上方へ行けば輸送、採掘などがあり、下方へ行けば有機合成化学、ガソリンスタンド業などがある。
4、合併、吸収 ➡︎ 3の統合の目的のためだけでなく、たんに製品系列を拡充したり、マネジメント力の強化を計るために行う場合もある。
5、業務提携 ➡︎ 販売網の共有化、部品の共同購入、技術提携
6、事業分離 ➡︎ 別会社設立による専業化による効率経営など
7、撤退、縮小、売却 ➡︎ 事業の切り売りから退却まで、全体のために部分を放棄
・ステップ7 代替案の評価、選定
前段階の代替案に定量的な評価を加える。
・ステップ8 中期経営戦略実行計画
リスクが許容できる範囲で、しかも社是社風にも合い、かつ戦略的ギャップも埋まるいくつかの案がこのように定量、定性的に選択された場合、マネジメントの仕事は、これらの戦略を全社的に実行するための詳細な計画書を立案することになる。
*ここに述べた8つのステップのいずれも即効性というものには重きを置いていない。
時間軸は2年〜4年(せいぜい5年)までである。
とくに戦略的代替案が奏功するためには、このような時間軸で物を見る必要がある。
*また真の原価低減計画の完遂にも2年はかかるのが普通である。
実際に効果が出るのはこのような時間軸であっても、全員に方向性を与え、ベクトルをそろえ、やる気を起こさせる、という点では速効性がある。
効果が出るまでのこの期間を、じっと待っていられない気持ちは分かります。
でも結果は『急がば回れ』ということです。
簡単に目に見える結果を求めれば、それなりの成果しか手にすることはできません。
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