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サプリメントが害になる場合について

はじめに

気軽に栄養素を摂取できるサプリメントを利用している方も多いはずです。実際私もその一人で、もはや食事の一部として考えています。

鉄分を補給するのは、健康のためと考えている人が多いと思います。また、多くのマルチビタミンに鉄分が含まれているため、鉄分を補給していることに気づかない人もいるかもしれません。私は健康と栄養に関する研究をたくさん読んできましたが、鉄分は多くの慢性疾患の根本的な問題であるため、注意が必要であることを理解しました。この記事では、鉄分を補給している、あるいは補給しようと考えている方に、科学的根拠に基づく研究結果をご紹介したいと思います。
しかし、その前に、私から1点注意事項があります。

私はあなたの医者ではありません。病気や状態の予防、診断、治療、治癒、管理を専門的に医師としておこなっていません。あなたの健康は、あなたとあなたの医師との間のものですので、全てのお話を鵜呑みにせずに主治医の先生などにご確認ください。

鉄分に関して、以下の4点にご注意ください。

1. 吸収された鉄分の排出経路は分かっていない(執筆時)

余分な鉄分を自然に排出する方法がないため、体内の鉄分は時間とともに蓄積されていきます。食事やサプリメントで鉄分を摂取すると、体内の鉄分貯蔵量が増え、酸化ストレスが増加し、老化を促進する可能性があります。体は鉄をリサイクルする能力に長けているため、1日に約1~2mgの鉄しか失われません。女性の場合は月経や、腸や皮膚の細胞が剥がれ落ちることで失われます。しかし、失われた鉄分を補うためには、それほど多くの鉄分を必要としません。


しかし、多くのサプリメントには65mgの鉄分が含まれています。これに鉄分強化食品や赤身肉の多い食事からの摂取分を加えると、かなりの量の鉄分が必要になります。

では、その余分な鉄分はどこへ行くのでしょうか?

一部の鉄分は吸収され、酸素を運ぶ赤血球を作るのに使われます。しかし、その多くは過剰な鉄分である可能性があります。つまり、すでに鉄分を蓄えている体内の場所に鉄分が追加される可能性があります。吸収されなかった鉄分は、微生物が生息する消化管を通っていきます。これでは、病気の原因となる微生物の繁殖力を高めてしまうことになりかねません。

2. 鉄分の蓄積は、多くの慢性疾患で見られる。

多くの慢性疾患は、感染症、酸化ストレス、DNA損傷などを扱っています。鉄分が寄与していることが多いのです。下記は鉄分の関与が疑われる病気の一部です。全て下線で根拠のあるページURLと繋げているのでしっかりとご覧ください。

・鉄分の過剰摂取は、糖尿病の危険因子です。研究者たちは、治療の可能性として鉄分を減らす療法に注目しています。

・過剰な鉄分がアルツハイマー病の原因になっているのではないかと考えており、そのための鉄分還元療法にも注目している研究者もいます。

脳の病気であるパーキンソン病やハンチントン病の患者さんの脳には、過剰な鉄分が見られ、鉄分の摂取は、心臓病のリスクを高める可能性。

・鉄分の蓄積は、腫瘍の成長やがんに関与している可能性。

アルコール性肝硬変では、肝臓の鉄分が死亡の予測因子となる可能性。

関節リウマチの関節の鉄分が存在。

鉄分を減らすことで、インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームの病気に効果がある可能性。


3. 血中」の鉄分が低いからといって、「体中」の鉄分が低いと決めつけられない→急性相反応かもしれない

多くのビタミンやミネラルは、ある刺激に反応して体内を移動し、それによって血液中の濃度が変化します。先ほどお話したように、細菌やウイルスが増殖するためには、鉄分が必要です。体はこのことを知っていて、悪い微生物から鉄を遠ざけるために、生化学的、生理学的な変化を繰り返します。これは「急性相反応」の一部であり、鉄、亜鉛、銅、ビタミンAなどの血中濃度を変化させます。

一般的に、感染症や外傷、手術などのストレスを受けた後、12〜24時間以内に、鉄の一部が血流から移動し、「隔離」されます。このプロセスには、白血球の一種であるマクロファージが重要な役割を果たします。

鉄を貯蔵する場所としては、肝臓、脾臓、脂肪組織(お腹の脂肪)、フェリチンなどがあります。急性相反応では、血液中の亜鉛濃度も低下します。これは、亜鉛が肝臓などの組織に移動するためです。これは、亜鉛が抗酸化物質であり、蓄積された鉄が引き起こす酸化ストレスから臓器や組織を守る働きをしているためと考えられます。一方、鉄は酸化を促進する物質です

急性相反応の一環として、肝臓ではセルロプラスミンという銅を含むタンパク質が作られます。セルロプラスミンは、鉄を輸送し、鉄が還元状態にある間、血液中の鉄を維持するのに役立ちます。
また、銅には感染症に対抗するための抗菌作用があるので、感染症の時に血中のセルロプラスミンが多くなるのは理にかなっています。

残念ながら、血中銅濃度が高いと銅中毒だと思う人が多いのですが、血中銅濃度の上昇も急性相反応の一部であることを知りません

ロイヤルインファーマリー大学(Royal Infirmary University)のGalloway氏とMcMillan氏、そしてSattar氏の論文の一部を掲載します。

全文をご確認されたい方はこちらから。

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このように、血中鉄分の低下は、必ずしも食事による鉄分の低下が原因とは限りません。ピロリ菌に感染している患者さんを対象にした研究では、ピロリ菌を除菌したところ、92%の患者さんが低血糖(貧血)から回復したという結果が出ています。

4. 世界人口の2%〜5%が、ある遺伝子を持たない人に比べて、鉄の吸収率が2〜3倍高くなる遺伝子を持っている

ヘモクロマトーシス遺伝子は、主に白人集団に見られ、ケルト人やバイキングを祖先に持つ人に多く見られます。歴史上の古い時代には非常に便利な遺伝子だったのでしょうが、鉄分が強化された現代社会では問題があります。

肝生検の研究では、遺伝性ヘモクロマトーシスの人は、鉄分の貯蔵量が多いだけでなく、鉄分過多でない人に比べて、肝臓に亜鉛が5倍近くあることがわかりました(おそらく鉄分を処理するため)。これは大変な量です。遺伝性ヘモクロマトーシスの鉄過剰症に対する標準的な治療法は、瀉血です。

おわりに

サプリは必ずしも健康を害しない訳ではありません。害する目的で作られてこそいませんが、最新の研究などでは、過去の研究をまるでパンケーキを焼くようにひっくり返してしまうことは多々あります。上記のように鉄分を補給する場合には、注意すべき点があります。

鉄分を減らしたい方は、鉄分をキレートするためにフィチン酸を含む食品の摂取量を増やしたり、血中の鉄分濃度を正常化するためにココアなどのを含む食品の摂取量を増やしたりするなど、食生活の工夫をするとよいでしょう。

また、食事の際の食材の組み合わせ方にも工夫が必要です。例えば、カルシウムやポリフェノールを含む食品は鉄分の吸収を抑え、ビタミンCを含む食品は鉄分の吸収を高めることができます。

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