いつもすぐそばに

2020が終わる。
救いのような、絶望のような、そんな響きだ。

もしコロナウイルスが流行しなかったら。
もしいつも通りの1年だったら。
何回も想像して、何回も絶望した。

ただ、ただ、生きた。
生きることがこんなに大変だとは思わなかった。
目の前の線路を見ながら何度も飛び込もうと思ったし、
自分の心臓を包丁で突き刺す光景を何度も思い浮かべた。
死は、決して遠いところにはない。
死はいつも、私の、私たちの、
すぐそばにあった。

そんな中で皆は口を揃えて
「大切なものが分かった」
と言った。
私は、誰のそれにも入っていないということを、何度も突きつけられた。
大切なものなんていつでも分かってるのに
それを慰めにしようとするなんて、と
心の中でバカにしたものだ。

誰かが言った。
「世界は平等じゃない」
分かっていたことだ。でもそれが実害を伴うことになるなんて思わなかった。
誰もが過ごせたはずの1年を、失ってしまった。
どうすることもできない。
為すべきことも、為せることも、ない。
無力さに震える掌を無理やりポケットに突っ込んで、すれ違う人を睨みながら、歩いた。

周りはエンタメを見て言った。
「おかげで元気になった」と。
これからエンタメに携わるものとしてどうかとは思うけれど、
私は本当の意味で元気になることはなかった。
強力であれば強力であるほど、
ストレスをぶつけて批判したし、
そんな自分を振り返って自己嫌悪と無力感に苛まれた。
支えられたことはあったけれど、いつも一時的だから、
エンタメの無力さを感じた。

ずっと、ずっと、ずっと、この1年のことを忘れないと思う。

迫った死のことも
繋がりの儚さも
自分の無力さも
これから自分が携わる仕事の無力さも
全部背負った。
もう二度と下ろすことは出来ない。

だから私はここから何かを生み出そう
ただ、ただ、生きたから。

いつでもそばにいる死には、いつでも飛び込めるから
今は生きてやろう。


2020と同じことがひとつだけある。

1年のはじめに、
不安よりも大きな期待と
それを実現する自信をもっていることだ。


そして、2020の私に言える


「生きていてくれて、ありがとう」と。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?