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きょうだい

  妹が飼ってる犬を三日ほど預かる事になった。犬好きな自分としてはこのお願いは嬉しい。そして何より妹の頼みは更に嬉しい。
 兄の私は楽しみにしていた。のだが……。
「ごめーん、お兄ちゃん。三日ほどよろしくね」
「え、ちょっとまって」
「ちゃんと躾けてるから大丈夫だから。あと、ご飯は生肉をあげてね。サーロインかシャトーブリアンだとめっちゃ懐くから」
「お、俺の知ってる犬とちが……」
「ふふ、お兄ちゃんも初めて見るでしょ。この子きっと頭二つあるからケロベロスよ! うふふ。まさか現代に伝説の生き物がいるなんてね。あたしは嬉しいわ」
「いや、頭二つはオルトロスで……いやそれよりめっちゃデカイんですけど」
 うちに入るのか?
「それじゃ、ぺぺ、ププ。行って来るわね。いい子にしてるのよ?」
 オルトロスのぺぺとププは、寂しそうな目で去っていく妹を見つめていた。く〜んとか言ってる。ちょっとかわいいかも。
「……たしかにちゃんと躾けられているな。妹ちゃんすげ〜」
 家にはなんとか入ってしばらくすると、こっちにすり寄ってきて、頭をカイカイしてあげたらお腹を上にしてきて、それはまさしく犬であった。
「伝説の生き物も、犬には変わりないってことか」
 俺のスマフォが鳴った。弟からだ。
「あ、兄ちゃん? 今大丈夫?」
「ああ、今妹ちゃんのワンちゃんをお世話をしてるところ。三日ほど預かってんだ」
「え、マジ! めっちゃグッドじゃん。ちょうど俺もワンちゃんを預かってほしかったんだよ!」
「え、いや。まって妹ちゃんのワンちゃんはお利口さんなんだけど、ちょっと普通の犬と違うっていうか……」
「大丈夫! うちのワンちゃんもお利口さんで普通の犬と違うから! 驚け、兄ちゃん。なんとうちのワンちゃん。頭三つのオルトロスちゃんなんだよ!」
「いや、頭三つはケロベロスだから!」
 我が家でまさか兄妹の再会であった。
 そしてしばらく我が家が、地獄の入り口だという噂が広がるのだった。 

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