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三日月ロックな夜

地図を見るのが苦手だ
Googleさんが指し示してくれても
やっぱり迷う
だから久しぶりに下北に降り立ったときも
ううう
京王と小田急と
迷路みたいな路地のクロスした街だからなあ
絶対迷う自信があった

もう一度地図を見てから
十数年ぶりに改札を降りて
最早見知らぬ景色と人混に軽く絶望して
Googleを捨てて
記憶と地図を重ね合わせて
イキナリこっちだと歩き出す

どうぜスマホ見てもわかんないし苦笑

見慣れぬ景色の中にも
chicagoを見つけて
まだご健在でしたか
その節は大変お世話になりましてと軽く会釈して遠ざかる

髪を赤く染めた青年が
タバコを吹かしていて
絶対パンクやろ、な、な
と思い切って話しかける
この辺にライブハウス知りませんか?
ライブハウスですか?ちょっとわかんないですスイマセン
丁寧に断られて
ナンパじゃねえし
ガッカリすんなと自分に言い聞かせて
あとで見ればその真向かいのビルの地下が会場で
ああどう見てもパンクな兄ちゃんが知らないんじゃあれはパンクじゃなくて
パンクファッションなんだなあ
下北のライブハウス事情の季節は氷河期なのかなと思った

下北の奢れる平家ぶりというか
隆盛ぶりは目を見張るものがあり
若者でごった返しており
平均年齢の圧倒的な低さに
街によって人が変わることを実感して
平均年齢暴上げ中と呟いて苦笑いするけど

愛する高円寺が
二十年前も今もやっぱり
薄汚れてうらびれて
夢を食って生きているか
夢破れて生きている人達の集まる場所だなあとおもうのに対して

下北の夢は
もっと成功に近いのか
若さという期間限定の輝きを謳歌するエメラルド・シティなのか
光ばかり強くて影がないなあと思ってしまうのは

私は高円寺派だからなのかな
もしくはババアだからなのかな

ライブを終わって街に繰り出す
元彼みたい引き合いに出すのは
インドと高円寺ばっかりだな
あと元夫もよく擦ってるしな

高円寺も下北も沖縄料理屋と古着屋が多い
チェーン店がこっそり息を潜めていて
ウナギの寝床みたいな小さな個人の経営するお店が圧倒的にひしめき合っていて
唯一無二の街の色を複雑に作っている

こういうの多様性っていうんじゃないかな
つぶやきながら

ライブの興奮を冷ましてしまわないような店を探して
火照った体を夜風に当てて少し冷ましてぶらぶらそぞろ歩く

あ、あそこにしようか
三日月ロック
ライブが跳ねたあとに相応しい名前だ!

三日月ロックって多分スピッツだよ
席を立つタイミングで
ヨーダ師匠が教えてくれる
おおおスピッツか!
さっき行ったおトイレにタワレコのスピッツの記事が額装されて飾ってあったと
大発見とばかりに興奮するけど

なんで入店時に教えてくれなかったやろ
でもまあそうと知らないで選ぶのも面白いからいいかとアルコールでふやけた脳ミソで思いながら

店員さんに三日月ロックの由来を聞くと
オーナーがスピッツの大ファンで
勝手に名乗っていて
スピッツとは縁もゆかりもないそうだけど
勝手にというところがいいなあと

ちょっと飲みすぎたロックな夜でした。

もちろん曲は三日月ロック
てゆうか
この曲貼りたくて書いたんだけどね笑


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