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#7 ティク・ナット・ハン師の「十四条戒」

ベトナムの禅僧によるものです。

第一戒 どのような教理、理論、イデオロギーであっても、たとえそれが仏教のものであっても、それを盲目的に崇拝し、あるいはそれに縛られてはいけない。すべての思想体系は人を導くための手段であって、絶対的真理ではない。

第二戒 あなたが現在持っている知識が不変で、絶対的真理だと考えてはならない。狭い心で現在のものの見方にとらわれることを避けなさい。ほかの人たちの見解を受け入れる度量を持つために自らの見解にとらわれない実践することを学びなさい。真理は観念的知識ではなく、人生において見いだされる。一生にわたって学び、つねに自らと世界のうちの現実を観察する心構えを持ちなさい。

第三戒 子供たちを含めて誰に対してでも権威、脅かし、金銭、宣伝、によって、さらには教育によってあなたの見解を無理に受け入れさせようとしてはならない。それとは反対に慈愛に満ちた対話によって、ほかの人たちが狂信と狭い見解を捨てるために役に立ちなさい。

第四戒 苦しみとつながりを持つことを避けてはならない。あるいは苦しみの前で目をつぶってはならない。世界において生命あるものが負っている苦しみの存在をはっきり知ることを逸してはならない。直接のふれあい、訪問、映像、音などを通して、苦しんでいる人たちとともにいる方法を見出すために最善を尽くしなさい。こうした方法によって世界の苦しみの現実について自らとほかの人たちを目覚めさせなさい。

第五戒 数百万の人たちが飢えている状況において富を蓄えてはならない。名声、利益、富、官能の楽しみを人生の目的としてはならない。簡素に生きて、時間、エネルギー、物的資源を困っている人たちに分かち合いなさい。

第六戒 怒りと憎しみを持ち続けてはならない。怒りと憎しみが起こったら、相手を深く理解するために慈愛についての瞑想をすぐに実践しなさい。生きとし生けるものを慈愛の目で見ることを学びなさい。

第七戒 戸惑いの内、環境の中に自己を失ってはならない。体と心の落ち着きを取り戻し、心の集中を実践し、心の統一を発達させ、理解発達させることを学びなさい。

第八戒 不和をもたらし、共同体にひびを入れるような言葉を発してはならない。どのような些細なことであっても、紛争はすべて和解によって解決するようあらゆる努力をしなさい。

第九戒 個人的利益のためや、人を感心させるために真実でないことを言ってはならない。分裂と憎しみをもたらすことを言ってはならない。確かでない噂を広めてはならない。はっきり知らずに批評したり、非難したりしてはならない。常に真実に従って、建設的に話しなさい。たとえ自らの安全が脅かされる恐れがあっても不正義のありようについて、声を大にして述べる勇気を持ちなさい。

第十戒 仏教の共同体を、個人の利益のために用いたり、自分たちの共同体を政治的党派に変えたりしてはならない。とはいえ宗教団体は、抑圧と不正義に反対するはっきりとした立場をとるべきである。抵抗運動に加担することなく、状況を変えることに邁進すべきである。

第十一戒 人間と自然に害を与える職業についてはならない。ほかの者たちの生きる機会を奪っている企業に投資してはならない。慈愛についてのあなたの理想を実現するに役立つ職業を選びなさい。

第十二戒 殺してはならない。ほかの人たちに殺させてはならない。生命を保護し、戦争を防ぐためにあらゆる可能な方法を探しなさい。

第十三戒 ほかの人たちに所属するものを所有してはならない。人々の財産を尊重しなさい。しかし人々が人間の苦しみ、あるいはほかの生き物の苦しみをもとにして、富を蓄えるのをとどめなさい。

第十四戒 自らの体を誤って扱ってはならない。敬意を持って体を用いることを学びなさい。体をただの道具とみなしてはならない。道の達成のために活力(性的活力、呼吸、精神)を蓄えなさい。性的表現は愛と約束無しにしてはならない。関係を持つなら将来に起こるかもしれない苦しみについてはっきりと知りなさい。ほかの人々の幸せを守るために、人々の権利と約束を重んじなさい。世界に新しい生命をもたらす責任を十分にはっきりと知りなさい。あなたが新しい生命を送ろうとしている世界について、瞑想しなさい。


『仏の教え~ビーング・ピース~ほほえみが人を生かす』

東京・春秋社 1999


まさに現代社会に必要な考え方ではないでしょうか。あらゆる対立、政治的対立、医療への心無い批判、イデオロギーの助長、小さな集団から大きな団体までがこの考え方を一度でも触れてみれば変わっていくのではないでしょうか。

2020.06.03

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