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短編小説【雨降り】

 学校が終わりタケトは屋根のある停留所でバスを待っていた。
 「雨降りそうじゃない?」と隣で見覚えのあるセーラー服を着た少女に世間話程度の気持ちで話しかけてみた。
「そうですね…」
 春の天気は変わりやすく突然大粒の雨が降り始めた。
 「降って来たか…。いつになったらバス来るんだか…」と独り言を言うと「バスが来るまで何か話でもしません?」「いいけど、どんな話を?」と言いながらタクトは何処のセーラーだったかなと真剣に悩んでいた。
「そうですね…。あっそう言えばこの辺で事故にあった少女がいるそうですよ」
「そんな事故あったっけ?」
「えぇ。こんな雨の日の夜だったそうです。少女は部活が遅く終わり、学校を出たのは七時を過ぎていたそうです…」

          *          *          *

「また怒られちゃうかな…。まっいいけど。どうせお母さんまた遅いんだし…」
 セーラー服を着た少女は屋根の付いたバス停でバスを待っていた。
 しかし到着時間になっても、十分が過ぎ二十分が過ぎてもバスは来なく仕方なく少女は傘をさし歩く事にした。
 突然ケータイが鳴りだし、鞄からケータイを取り出し表示を見ると非通知だった。
(誰だろう?)と思いながら電話に出た。
「はい…」
「アヤミ?」
「お母さん?」
「うん。今何処?」
「部活長引いちゃって、今学校出たっ…」
 突然言葉が途切れ、それから直ぐ何かが衝突するような音が聞こえ通話が途切れた。
「アヤミ! アヤミどうしたの!?」
 と切れた電話に問いかける母親。

          *          *          *

「で?」
「バスが少女を巻き込んで横転したそうです。原因はバスドライバーの居眠り運転だったそうで…」
「その少女はどうなったんですか?」
「さぁ、私には分かりません。でも風の噂では亡くなったとか、病院に入院しているとか、まぁそんな感じじゃないですか」
バスのクラクションの音が聞こえ、見るとヘッドライトの光が見えた。
「やっと来た。どこまでですか?」
「これから病院まで、戻るところです」
「病院…。何処か悪いんですか?」
「ええ、ちょっと記憶を探してまして…」
「記憶を?」
「ええ、その事故の時私のことを見てた青年がいたらしいんですよ」
「え?」

          *          *          *

「あれ? さっきまで誰かいた気がしたんだけどな…」
 とバスの運転手は停留所を横切りながら首を傾げた。

 ≪ end ≫


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