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フシギナパラダイス 2話 不思議な鳩 2/9【期間限定無料】

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「どうぞ粗茶ですが…」

「あ、ありがとう」

私はなぜか自分の部屋で、見知らぬ他人に入れてもらったお茶を入れてもらうという謎の現象が起きた。

まあ、茶柱たってるし…味は悪くない…っていうかちょっと高級感ある…?

少なくともうちにあるストックのお茶ではない。

どこで買ったんだろう…


………じゃなくて。

「あの…それで…君は一体…」

「あぁ、申し遅れました、僕の名前は光星と申します。
以後お見知り置きを。」

いや、名前はどうでも…いいわけではないけど、私が聞きたいことはそういうことではない。

「なんで…君は、壁をすり抜けたり浮いたりできるの?私にしか見えないのは?私の部屋にいた理由は何!?」

私は畳み掛けるかのように疑問を投げかけると、男の子はうーんと少し考えた様子を見せて、静かに口を開いた。

「…いきなりこんなことを言っても、信じてもらえないかもしれないですけど…僕………………神様なんです」

……

………は?

私は頭の中で、その一言だけが浮かんだ。

「あ、でもまだ見習いなんですけど」

いや、今そんなことはどうでもいい。

「まさか…そんなわけ…神様なんかいるわけ………」

「でも事実ですし…なんなら証拠見せましょうか?」

「証拠?」

少年は人差し指を突き立てて、天井にくるりと円を描くように動かすと、

部屋の中がキラキラとした光が現れ、部屋を照らした。

「き…綺麗…」

「他にもこんなこともできますよ」

今度は床に向かって指を振り下ろすと、その辺りが光猫が現れた

「こんなことも簡単にできてしまうわけです」

そういって指をパチンと鳴らすと、猫は消えてしまった。

確かに…マジックというわけではなさそうだ。

「納得いただけました?ルイさん。」

「な…なんで私の名前…」

「さっきお兄様がそうやって呼んでいた、ということもありますが、事前の下調べはしてありますから、ご家族の経歴くらいはわかりますよ?」

そういうと、どこからともなく紙束を取り出し男の子はそれを読み始めた。

「木下涙、年齢12才、本日から中学一年生、なるほど、金欠で困ってらっしゃるのですね…時に友人のお手伝いで小遣い稼ぎ
家族構成は父母兄ご本人の4人、引っ越してきて9年目
誕生日10月22日身長155.4cm体重は」

「ちょっと、何調べてるの!?」

「えーっと、ご家族の方は…あ、先ほどのお兄様と5歳離れ照るんですね、勉学運動共に優秀、たいそう人気があるそうですね恋文もらったり」

「…え、嘘!今時古風…じゃなくて、何その情報!」

「嘘だと思うなら引き出し見てきたらどうです?まだあると思いますよ?あとは…お父様単身赴任で欧米諸国へ単身赴任ですか…第一線でご活躍…昔事故という不利がありながら、これは素晴らしいですね、あとお母様は…」

「わ、わかった…もういい…信じる、君が神様だってことは信じるから!」

自分と家族のプロフィール改めて聞かされるの…ちょっと恥ずかしい…

「ご理解いただきまして感謝です。」

神様は満面の笑みを浮かべて微笑んでそう言った。

「で、でも…神様が私なんかに何の用なの?」

「あぁ、そうでした。本題に入りましょう。」

神様はそういうと、さっきまでのほんわかした雰囲気からキリッとした真面目な雰囲気に切り替わり、言葉を発した。

「木下涙さん。『アマテラス』の生まれ変わりであるあなたに
黄泉の国を倒して欲しいんです。」

…………………

真面目に話を聞く気はあった。何を言われても驚かないつもりではいた。

しかし、神様から発したその言葉に、驚かないわけにはいかなかった。

「あ…あま…………甘?」

「天照大神、日本神話に出てくる神様です。
ご存知ないですか?」

「いや…日本神話には疎くて…でも…ウマレカワリって?
私が?神様の?人違いなんじゃ…霊感とかはないし…」

あぁわかった。私まだ夢見てるんだ、こんなことありえないし間違いない
それにこの展開漫画とかアニメで見たことある

女の子の目の前に妖精が現れて…戦士だなんだって言われて
「悪いやつらと闘って」って言われて、可愛い姿に変身して戦うやつ

「魔法少女…憧れたなぁ…」

「なんです?それ…」

私の独り言に反応した神様を無視して、私は頭の中で考えを巡らす

そうか、それに影響されて、こんな夢見てるんだ。
なら、目を覚まして現実戻らないと。
夢から覚める方法とかわかんないけど

でもちょっと待って…もしこの先の展開が本当に魔法少女だとするなら…ここで目を覚ますのはあまりにももったいない…
…このままこの茶番に付き合えば…私も魔法少女になれるかも!?

戦闘用セーラー服に変身して、キュアキュアかぁ…。
一回くらいなら悪くないかも…。

「ねえ、そんなベタな設定がくるってことはさ、もちろん変身とかするんだよね?」

「?」

「だって、生身で戦うわけにいかないでしょ?他の人とか的にバレるのもまずいし…」

「あぁ、戦闘服のことですか…でも変身なんかしなくても戦闘中は神力で
自動的に防御力上がりますし…そもそも顔変わらないなら変身意味ないですし、万一別にバレても何も支障ないです。」

「…じゃあ…変身しないの?」

「しないですね。言われれば兜と鎧準備しましょうか?焼け石に水だと思いますけど」

「いらない。」

どうも、この夢に魔法少女の夢はないらしい。少なくとも、アニメのようなキラキラ知らものではなさそうだ。
なら、この夢にもう用はない

私はその場から立ち上がり、布団の中に潜り込んで神様に「おやすみなさい」と挨拶を告げた、慌てた神様は「寝ないでください!」と私の体をひっぱたいて、文字通り起こそうとした。

「もう、話は聞いたでしょ!?何が不満なの!?神様が目の前にいるだけでパニックなのに私が神様の生まれ変わり!?夢じゃなきゃ絶対にありえない!」

「でも本当なんです先ほど行った「審査」の結果では
あなたが神様の生まれ変わりであることに間違いはないとそう示しています」

「審査って何!?なんでその審査でそんなことわかるの!?
そもそも、審査された覚えなんかないんだけど」

「…本当に心当たりありません?変な夢とか見ませんでした?
突然襲われる夢とか…」

そう言われて、私は学校での出来事がフラッシュバックした

「まさか…あれ…君の仕業なの!?昨日の夕方からの記憶がないのも!
学校で居眠りしてたのも、全部!?」

「はい…」

私はその一言を聞くと、体をガバッと起こし、神様に摑みかかる。

「ちょっと…どうしてくれるのよ!!私、おかげでかなり恥かいちゃったじゃん!!せっかくの入学式だったのに!!」

「それについてはすみません、でも、こちらとしてもヨミと戦うためには
どうしても必要なことでして、とはいえ葦原の中つ国に来たのは初めてで…
人々の生活のことは詳しくは理解してなかったんです。」

…またわけのわからない単語が出てきた。

あし?足…?なんか、わけのわかんない単語を聞くと、なんかそっちに気を取られて、怒りが自然と静まってしまう。

「とりあえず、最後まで話だけさせていただけませんか?聞いていただけないのも、信じないのも自由ですけど
任務上…僕は話を聞いてもらえるまで離れられません」

…確かに、鬱陶しがってるだけでは、彼は私の元から離れてくれそうにはない。

「わかった…黙って聞くよ…」

「ありがとうございます。ではお話しさせていただきますね。

この世界には3つの世界に別れています、

…僕の住む高天原では…日本神話に倣って、神様の役職や、世界を名付けていて、神の住む世界のことを高天原、人々の住む現世を葦原中津国
そして死者が住む世界を黄泉の国と呼んでいます。

地上を繁栄させる為、高天原と黄泉の国それぞれは、神話に倣って役割を分担していました

高天原は「生」を、黄泉の国は「死」の管理を」

「死の…?」

「怖いことじゃないんですよ。現世を繁栄させるためには「死」というものはとても大事なものです。本来は恐ろしい場所でも物でもないんです。」

神様の言っていることは、わからないことではなかった。死は悲しいことだけど、それは人生においてとても重要なことだ。

でも…神様はさっき私に「黄泉の国を倒してほしい」とお願いしてきた。

大事なものだと言いながら、それを倒せって…矛盾してるのでは…

その疑問は、すぐに神様が解消してくれた。

「しかし、1000年ほど前でしょうか…黄泉の国は、自らの国の役割を放棄し、黄泉の国は能力を持った魂を選り好みし、それ以外の魂を受け入れなくなました

あぶれて行き場をなくした魂は、次第に悪霊になり…人々を苦しめました。

その対応に神々が追われている間に、妖怪を味方につけ、回収した力ある魂に現世を襲うように指示し、人々を襲うようになったんです、

次第にそれは災害を起こし、疫病を逸らせ
人々を苦しめ、多くの人が死んでいきました。」

「なんで…そんなことを…」

「わかりません、いまだに黄泉の国は目的を話しませんし、それを解明している暇も、神々にはありませんでしたから…神々は普段やらない魂の回収に追われ…現世にまで手が回らなくなりました。

いえ、もしそのことがなくても、高天原から退治することは不可能ですし、
神々が直接地上におりて直接退治…というのも色々問題がありました。

…そこで、神々は、1つの案にたどり着きました。
高天原で強い神を数体選び、人として生まれ変わらせ、直接戦うことで
黄泉の国の暴走を食い止めること」

つまり…そのうちの一人がアマテラスという神様で、私だった…ってことか…。

話を聞いた限り、神様が切羽詰まっているというのはなんとなく理解はできた。

このまま放っておけば、命を落とす人が増えてしまうから…

でも、やっぱり引っかかる部分がある。

「…どうして戦う必要があるのかはわかったけど
その話…1000年前って言ってたよね?この時間さは何?まさか…今まで放置…」

「戦いは…一度だけではありません。一度で片をつけることができるほど、甘くはなかったんです…だからこの1000年の間、なん度も生まれ変わっては戦って…封印をして…その繰り返しです。」

その話が本当なら…敵は一度で倒せるような生半可な相手ではない…神様の生まれ変わりですら、苦戦するような相手…下手をしたら…

「あのさ…、変なこと聞くんだけど…仮に今の話が本当だとして、
私が神様の力で戦うことができたとしても…戦うってことは
場合によっては…その…」

神様の顔が、少し暗くなった。

その表情が…全てを物語っていたような気がする。

私はその様子に目を閉じて考える…元々快諾する気はなかったけど…あまりにも重い…

その様子を感じ取った神様は、少し焦った様子を見せ口を開いた

「でも、神の生まれ変わりをないがしろにはできません。
力が弱まると知っても生まれ変って別人になっても、こんなこと危険なことを身を呈して進んでやってくださったんですから。

それに、死者も妖怪も黄泉の国の住人も力あるもの以外には見ることはできない。そういう存在のせいで苦しむ人を救済し、運命の狂いを正常に戻す目的もあります。

なのにもし、神の生まれ変わりが、人には理解できない理由で死んでしまっては、それこそ歴史が…運命が狂って本末転倒。それを神様は望んでいません。

だから神々は、地上で生まれ変わった神の生まれ変わりたちに救済処置を施すことにしたのです」

「救済処置?」

「命令により今回の任務に加わった全ての者に、人生に一度だけ、
「説明不可能」な重傷をおった魂は、高天原へ転送して保護し処置をして、全ての条件を満たし修復完了した場合のみ完全回復した状態で現世へ戻ることが約束されています」

「…死なないってこと…?」

「全部ってわけではないです、あくまで重傷者を処置するため
死人を生き返らせるためのものではありません。

ですから高天原に転送するまで生きていないと処置ができないので
即死の場合は黄泉の攻撃だとしても、対応が不可になります

あと、致命傷を与えたのが人に説明することが不可能な理由でないとダメです名目上、黄泉の戦いの補助を目的としてますので」

「じゃあ……例えば…攻撃されたせいで、たまたま道路に出ちゃって
車にはねられたら」

「確かに黄泉に攻撃されてますが、事故にあった原因であって
『車にはねられた』ことが死因になりますので。保護対象にはならないでしょう。」

なるほど…簡単に施しをくれるほど甘くはない…ってことか。

「何も知らないあなた方に、このようなお願い…酷なことだと思ってます。
でも…放っておけば…何があるかわかりません。これ以上の暴走はなんとかして止めたい

それに、黄泉は強いと言いましたが、先代までの努力で、黄泉の戦力もわずかです
今回で全部終わるかもしれないんです。お願いします。力をどうか…」

簡単に言ってくれる…

神様の気持ちはわかる。それだけ真剣なんだろう。

多くの人の命を守らなきゃいけないということもわかる…でも…

「救済処置は…巻き込まれた人も適応されるの?」

「いいえ…先ほども言ったように…「命令」を受け関わった者に限定されます」

「今回で…何回目なの?」

「…7度目です」

「その中に…無関係な人が巻き込まれたケースは?」

「…被害者…という意味では数え切れません。
僕は引き継ぎで…戦いへの参加は初めてですが、中には…そばにいたがために狙われたとか…ないことはなかったかもしれません。」

そう言われた後に、私の頭の中に、昔のテレビの砂嵐のようなノイズが走る、

そしてそこに少し映像が浮かぶ、真夜中の…雪の日…門の前の人だかり…

そして……………その中には…………

……最後の質問がそれなのだとしたら、私はこの話に乗ることはできない。

確かに…多くの命は失われてしまうかもしれない…でも、私である必要はない。

「私には…資格がないよ。」

「ルイさん?」

「ごめん…今日のところは一度考えさせてくれない?

君の話を全部信じたわけじゃないし、自分が神様の生まれ変わりなんて、
到底信じられないし…やっぱり私は…人違いだと思う。

本当でも…自信ない。」

「…」

神様は…物言いたげな視線を私に送った。

でも…私にかける言葉が見つからなかったのだろう、目を閉じてうつむくと、言葉を飲み込んだ。

「確かに…時間も必要ですね、まだ時間はありますし…
わかりました、今日はおとなしく帰ります。

でも、あなたがアマテラスであることに間違いはないですし
それなら、あなたは力を持つべきです。守るためにも。」

そういうと神様は私の目の前に何かを置いた。見た感じアクセサリー…四葉のクローバーのブレスレットといったところだろうか

「…な…なに?」

「お守りです。こちらの方お渡しいたしますので、どうぞ身につけてお持ちください。それでは」

そういうと、神様はシュンッと音を立てて消えた。

神様からのプレゼント…ということだろうか。


断ったのにこんなのもらっちゃってよかったんだろうか…

少しの罪悪感はあった、でもこれが今の私の気持ちだ。

「…」

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気がつけば太陽の光は消え、暗い中、月が優しくあたりを照らしていた。

生きとし生けるものは寝静まるその時間…いや、この時代の人間はそうでもないか…

とにかく、そんな人気の少ない時間、誰かと話している彼の姿がある。

「はい…なんとか、話は聞いていただけました。


受け入れてくださるかは…まだわかりません。

この時代、あの年齢…すぐにこの話を信じるのは難しいかと…。
わかってます。彼女…アマテラスなくして勝ち目はありません。

黄泉を倒すために…必ず…。」


誰一人として、かけた状態で挑むわけにはいかない。

自分の使命は、一人でも多くの命を救うこと。

そのためには、誰かの感情も、意思も、命も、時には犠牲が必要だ。

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