見出し画像

【観て】 懸命に生きれば誰かにとっての悪役になる 現代を描く時代劇 『CHAIN/チェイン』


「どんなに良い人間でも、きちんと頑張っていれば、だれかの物語では悪役になる。」

©︎ オジロマコト『猫のお寺の知恩さん』/ 小学館 

映画を観終わったあと、何年か前にTwitterで話題になったこの言葉を思い出しました。

映画『CHAIN/チェイン』では「誰かにとっては悪役になる、懸命に生きる人々」を見つめることができます。

この作品が少しでも多くの人に届いて欲しいので、まだこの映画を観ていない人も読むことができるよう、できる限り内容や演出のネタバレを避けて感想を書きたいなと思います。



※ただ、ゼロとも言い切れないので、注意して読み進めていただけたら嬉しいです。そしていつでも記事を離脱して上映館を調べられるよう、先に諸リンクを貼らせていただきます。(記事最後にも同様にまとめています)

公式HP:
https://www.chain-movie.com
公式Twitterアカウント:

https://twitter.com/eiga_chain?s=21

潔く美しいポスター



©︎ 2021年 北白川派  https://www.chain-movie.com 

私がこの映画を観たいと思ったのは、偶然見かけたこのポスターがきっかけです。
カバー画像とともに、公式HPより引用させていただきました。

シンプルにものすごくカッコよくないですか……!?

実際に見るまでは「このポスターになら裏切られてもいい!!!」と思ってました。実際に見たあとは「信じて良かった!!!」になりましたが!!

個人的な好みのお話で恐縮なのですが、とにかく「荒野に咲く一輪の花」的世界観がツボなのです。その香りを勝手に嗅ぎ取ってしっかりと心を鷲掴みにされてしまいました。(映画でいうと『戦場のメリークリスマス』などが該当します。本当に個人的な分類と表現ですみません……)

時代劇っぽくない時代劇
そして右側に「新撰組×御陵衛士」と描かれている通り、この映画は時代劇です。
幕末の京都を舞台に、新撰組分裂の象徴的な出来事である「油小路の変」を中心に物語が展開されます。

元々時代劇は好きな方で、直近であれば同じく幕末を描く原田眞人監督の『燃えよ剣』も観ましたが、歴史的な事件そのものよりも、それぞれの登場人物の感情や、彼らの欲するものをじっくりと見つめることができるという点で、「まさに時代劇!!」な映画ではないと感じました。制作陣が「時代を借りた現代劇」と表現されていますが、まさにそうで、幕末を生きる人々を通して、現代を懸命に生きる人々のことを考えることができる。そんな映画です。

だからこそ、「時代劇ってあんま観ないんだよな〜」という方にこそおすすめしたいなあと強く思います。(もともと好きな人はもちろんなのですが。殺陣も画も超カッコ良いですよ!!!)
時代背景や事件についての予備知識があればストーリーを理解する助けになりますが、なくても多分問題ないんじゃないかな〜とすら思います。そこに映っているひとりひとりを観ていたらあっという間に時間が過ぎていきました。

「もともと持っている」伊東甲子太郎の無自覚な残酷さ
その中でも特に個人的に強く印象に残ったのは「伊東甲子太郎」という人物です。

彼は実際の歴史上の人物で、新撰組を脱退し御陵衛士を率いる本作の主要な登場人物のひとりです。
劇中の彼は「剣術に優れる上に聡明で、周りから慕われる人格者」だと感じました。強くて、賢くて、優しくて、女にモテる。
新撰組の近藤勇や土方歳三が農民の生まれだったのに対し、由緒正しい武家に生まれ、育ちもいい。


ただ、同時に彼はとても残酷だと感じました。「恵まれた環境が前提にあるゆえに、そうではない人にとってもそれが当たり前」と無意識に思っているのではないか、と思います。

男性が「治安の悪い国じゃあるまいし、都市部だったら夜道が危ないとは思わない。」言っているのを聞いたときに自分が感じた「この人と私の見えている世界は違いすぎる」という、やるせない感覚と近いものを、劇中で伊東と対峙した彼らも覚えたかもしれません。

ただ、私が伊東が印象に残っているのは、どちらかといえば共感や、自戒的な意味合いもあります。


愛情を注いでくれる両親のもとで育ち、勉強などに対し努力ができる、かつ努力が適切に結果として反映される環境が「前提」として整っていたことは、幸運以外の何物でもない。
そんなことに、ここ数年で気がついた私は、劇中の言葉を借りると「踏みつけられたことがなく、人のこころがわからない甘ったれ」かもしれない。



だけど、伊東の本気で国の行く末を考え、憂い、懸命に生きている姿はやはり眩しくて、凛々しくて、美しいのです。そしてそれは彼だけでなく、初めから彼を憎む人物も、結果的に敵対してゆく人々も同じでした。だからこそ、もう誰も悪くないじゃん、とやるせない気持ちになります。


そして伊東とは全く異なり、時として歴史に「いなかったこと」にされてしまう夜鷹(街娼)と陰間乞食(男娼)の身を寄せ合う姿にも胸を衝かれました。
そのほかにも、故郷を愛しているのに(だからこそ)故郷を離れてしまった人や「弱い男」と揶揄され劣等感を燻らせる人。心をひっつかまれる人物ばかりが現れます。

私がお話ししたのは、あくまでも個人的な彼らの解釈に過ぎませんが、きっと観た人それぞれの琴線に触れる人物と出会うことができると思うし、観た人それぞれに彼らの解釈が生まれるのではないかと思います。



だから、たくさんの人にこの映画が届いて欲しい。
そして映画を観たあなたが、誰のどんな言葉や行動に心を揺さぶられたかが知りたいです。

それを知って、もっと人のこころがわかる人になれたらいいなあ、という願いも込めて!



改めての記載になりますが、上映館等については以下のリンク先に情報がまとまっています!



公式HP:
https://www.chain-movie.com
公式Twitterアカウント:

https://twitter.com/eiga_chain?s=21

画も最高にカッコいいですが、音響がものすごい迫力なので絶対に劇場でご覧になってください!
(直視できないシーンで思わず目を伏せたら、むしろ音だけの方がキツかったかもと思う程度には音のパワーがえげつない。劇伴もかっちょいいです!)



最後まで読んでいただきありがとうございました。是非!!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?