マジで恋した翌日
彼女と初めてのキスをした日の翌日からの話。
夜にゴロゴロしていたらうっかりキスしてしまって動揺していたら、彼女にもう一度やさしいキスをされた翌朝。よくあの状況で眠れたなと思うけど、よく寝て。いつものようにガヤガヤと騒ぐ子どもたちの声で目を覚ました。
昨日の夜、彼女と繋いで寝た手はもう解かれていて。
何度も同じような朝がこれまでも来ていたはずだけど、全然違っていた。いつもの部屋、いつもの布団なのに全然違っていて。まだ目を閉じる彼女の横顔を見て「ああ、好きだな」って思った。すごく好き。好き。どうしようもなくかわいい。
「おきてー」そっと彼女の肩をさすってみる。起きない。
子どもたちが違う部屋に行ってしまったので、隣に寝てみる。彼女の方に体の向きを変えて、白くてすべすべしている腕をさすってみる。
「おきてー」でも起きない。
腕をさすったことなんてあったっけな。すごくすべすべしている。気持ちいい。腕をさすっているだけなのに、なんでこんなに気持ちいいの?
そのまましばらく腕と手のひらをさわっていたら、彼女が目を開けた。
こっちを見て笑って「へんたいがいるねぇ」とかすれた声で言った。
「すべすべで気持ち良くて」目を逸らして弁解するでもなく言うと、今度は彼女が私の腕をさすり出した。「ほんとだね」「ね。」「きもちいいね」。
腕と手を絡ませながらも顔を上げられなかった。いま彼女を見たら決定的だと思った。ぜったいキスしてしまう。扉が開いてしまう。ここまでならまだギリギリ友だちのままでいられるかもしれない。
「あったかい手だね」「すべすべだねー」ふわふわと寝起きの会話っぽくしながらも、胸がドキドキして、すごくドキドキして。しばらくふたりでそんなことをしていた。
母業があるのです
でもイチャイチャばかりはしていられないのです。子どもたちはお腹が減ったー!と言うし、食べたら公園行くー!と騒ぐし。
今までより見つめてしまう時間は長くなったし、なんとなく寄り添うようにベンチに座わるけど、それ以外はどこにでもいるママ友のように。普通に。普通に。
翌日からは朝起きて「おはよう!」のLINEが来て、仕事休みに「仕事大変ー。つかれた」ってLINEを送って、夜は「おやすみ」ってLINEをやりとりして眠る。毎日ふつうに。
本当は全然ふうつのママ友とは違う濃密さなのをお互い知ってるけど、でも普通をよそおって。
「会いたい」「好き」
その言葉を飲み込んだまま普通に。
その週はお互いに忙しくて平日は会えなくて。週末にまた遊ぼうと約束した。
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