インド1人旅 3
出発の時刻になり、重たい体とさらに重たく感じるバックパックを背負いながらジャイサルメール行きのスリーパークラス乗り込む。吐き気はもうない。あとは腹痛をなんとか約12時間耐えるだけだ。
しかし、人間の生命回復力はすげえな。
インドの列車には座席のグレードがいくつかある。エアコン付きの1ac 2ac 3acと続き、
スリーパークラスだ。バックパッカーは基本的にこのクラスを買う。
三段式のベットになっており、真ん中は折りたたみ式で、夜の9時くらいになったら組み立て始める。それまで1番下のひとと仲良く座席を半分こだ。
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列車の鉄格子の窓に風が流れ込んでくる。
中心部から離れていき、見える空は夕焼けがクライマックスになっている。か細くなった心は満たされる。随分遠くまできたんだなぁ。空の雄大さはきっとそれを隔てるものがないからで、やっぱり高層ビルが多いと空は狭く見える。
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未明のジャイサルメールは寒く、近くで焚き火を囲んでいる人を何人も見た。
ダメ元で目星のホテルに電話したら来てもいいとのことだったので、未明の街を歩く。
途中何匹とも出会うインドの野良犬。
真夜中の野良犬ほど怖いものはない。
知らない道を歩くとゾクゾクするのは俺が野良犬を怖がっているからなのか、動物的な本能なのか。野良犬にメンチ切られないように、ノースのマウンテンジャケットのフードを深く被る。
15分ほど歩くとホテルに到着。ドミトリーからシングルにグレードアップしてくれた。お腹の調子は治らず、気づいたら1日半何も食べてなかった。そんな体でも17キロくらいのバックパック背負って人間は歩けるんだな。
昼過ぎに目覚めて外を出ると、砂漠の街と言わんばかりの景色が広がっていた。
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ジャイサルメールは街の真ん中にフォートがあり、その中、周辺が観光スポットになっている。フォートの中を散策している時に、一軒のコーヒー屋さんを見つけた。お腹の調子は悪かったけどカプチーノとハニートーストを食べた。思い出は自分が弱っている時に現れて、
すこしだけ元気をくれる。
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顔も持っている。
ジャイサルメール周辺はキャメルサファリと呼ばれる、タール砂漠でキャンプが有名だ。
ツアー自体は街の中心ならどこでも申し込めるけど、費用を安く抑えたいので、調べてみると、クーリー村というところがいい価格でオプショナルツアーしているみたいで、そこに行ってるか。
夜、ホテルの屋上に出てみると、先ほどまでいたタール砂漠にそびえたつフォートはライトアップされていた。
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翌朝、駅から離れた停留所とは思えないバスロータリーでクーリー村行きをキャッチし、中心部から1時間半ほど、到着。
ゲストハウスに辿り着き、
キャメルサファリの受付を完了させる。バックパッカーにはありがたく、料金は中心部の半分ほどだ。参加者は自分と他インド人3人だった。ラクダに乗り、目的地の砂漠へ。
砂漠の夕日はエジプト以来だな。
夕日に見惚れていると、気づかなかった2本の大きな木に目が行く。互いに寄り添いながらこの場所で背を伸ばしてきたのだろう。お互いを邪魔しないように、でも、離れないように。
きっと、人もそうなんだろう。
ふと、涙が溢れそうになった。この時の気持ちは一体どんな言葉に例えることができるのだろう。
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砂漠の上に布団を引き、夜空を見ながら就寝。
しかし、治ったと思ったはずのお腹にまた腹痛が走る。
昼もらったご飯でやられたっぽい。
布団に入って空を眺めている時、なにか足元がモゾモゾするから見てみると、犬。
夜中の犬は昼とは違い、性格が一気に変わる。インドの野良犬は何持ってるかわからないので、噛まれたら1発アウト。グルグルと喉を鳴らす音は、この完璧な暗闇では狂犬病のワクチンを打ってないことで恐怖に変わる。隙を見てスタッフの寝床に行き、犬がいることを言うと、そいつは噛まないと。
また多分お前に懐いてるよって言われた。
ドキドキして寝れないまま、時間が過ぎる。
よく見て見ると、たまにワンちゃんは木陰の方に威嚇するようなそぶりを見せる。
もしかしたらだけど、守ってくれてるのかな。
その瞬間に妙な安心を覚えて、さっきまで安心して見ることのできなかったタール砂漠の上に広がる満点の星空に見惚れて
気づいたら寝ていた。
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朝目覚めるとワンちゃんは毛布を通して膝の上にいた。
朝焼けを見た後、街に戻るけど、お腹の調子は戻らず、途中強烈な腹痛で座り込む
くぅーーーー、今俺は強くなってる。
何度も言い聞かせてホテルにつき、
電車の時間まで休ませてもらう。
途中韓国人のキムがウロウロしながらこっちを見てる「韓国人かと思ったよ!」
しかしあまりにも体調が良くないので、事情を説明すると、彼が薬をくれた。
藁にもすがる思いで飲みこみ、軽く談笑した後彼は街に繰り出したが、
どうやら頭が痛くなってきて、胃が燃えるような痛みに襲われる。空きっ腹で薬入れたからかな。悪寒もしてくる。腹痛はないんだけど、これが麻痺で感じてないのかわからないけど、尋常じゃないくらいきつい。何か急いで胃に入れなきゃと思い、這いつくばるように近くのジューススタンドへ。
「おうどうした、顔色悪いぜ」
「ごめんなほっといてくれ、いま気分悪いんだ」
「俺医者だから見てやるよ」
どうみても医者に見えないあいつに構ってる時間はないと思いつつも、その目は本当に医者であることを訴えてるようだったので、波立つ心を抑えて彼に症状を伝える。
「で、どんな薬もらったんだ?みせてみ」
キムがくれた薬を見せると笑いはじめた。
「おいブラザー、これバカ強いペインキラーだよ。こんなん飲んだら体壊れるぜ。なんでこんなの持ってんだよ。」
キム、嘘だと言ってくれ。
「空きっ腹でこんなん飲んだらきついに決まってるぜ。これもう飲むな、仕方ねぇから薬と後リンゴジュース持ってきてやるよ。」
自分の中に申し訳なさと情けなさが広がっていた。自分に余裕がないと、善悪の判断がつかないし、周りが見えなくなる。苦しくなる。疑い深くなる。自分に余裕がない時の選択は間違っている時の方が多いもんな。
薬をもらい、2時間後に一錠飲んで、
横になる。列車は夜中の3時発なので、
12時半に予約してた迎えのリキシャドライバーにピックアップされ、駅で少し待つ。
(ジャイサルメールは夜中犬が他の地域に比べて凶暴になるらしく、噛まれたケースが跡を立たない。歩いて駅に向かうと言うと、傷跡を見さられながら止められた。でも行きは歩いてこれたしな、とか思ったけど、確かに夜ホテルの外から聞こえてくるのは他とは違う、犬の叫ぶ声と、噛みつき合うような音だった。大事をとった。)
次の街ジョードプル行きの電車がくる。
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