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プロダクトマネージャーの仕事はプロダクトマネジメント

何となくこれを書くべき時がきた気がするので書きます。

プロダクトマネージャーの仕事

プロダクトマネージャーの仕事はプロダクトマネジメントです。プロダクトマネジメントをしてほしいという期待があるからその人にプロダクトマネージャーというタイトルをつけているはずなので。

実際には組織構造によってはプロダクトマネジメントをしないプロダクトマネージャーがいるかもしれませんが、その場合も間接的にプロダクトマネジメントをしているはずです。いずれにしてもそれは例外的なので今回は一旦置いておきます。

プロダクトマネージャーはプロダクトマネジメント以外もやらなければならないと思われる理由

プロダクトマネージャーはプロダクトマネジメント以外の仕事もやるものだと思われるのはなぜか。結論から言うとこの2つだと思います。

  1. プロダクトの成功のために必要なことをやっていたらそうなるから

  2. そもそもプロダクトマネジメントが要求するものが幅広いから

プロダクトの成功のために必要なこと

「プロダクトマネジメントしろ」と書くと「プロダクトマネージャーってとはいえプロダクトマネジメントだけやっててもダメじゃないですか」と言われるんですが、確かにそうです。

例えば私は今かなりの時間を採用に投下しています。
過去にはひたすらマニュアルの整備をしていた時期もありますし、カスタマーサポート業務に勤しんでいたこともあります。店舗什器の設計をしたこともあります。Tシャツの印刷をしすぎてTシャツのセンターラインを平置きの状態から一発でビシっと合わせられるようにもなりました。

でも、それもやはりプロダクトの成功のためだと思えば広義のプロダクトマネジメントではあると思うんですよね。

狭義のプロダクトマネジメントが要求するものも幅広い

とはいえ、狭義のプロダクトマネジメントにおいても「え、これもプロダクトマネージャーの仕事なの?」と思うようなことが多々出てきます。きっとこれが、プロダクトマネージャーはプロダクトマネジメント以外もやらないといけないと思われる所以なんだと思います。

プロダクトマネージャーというのはプロダクトを通じて結果を出すことが求められる仕事です。そのためのHowとして、プロダクトマネジメント組織の一部を率いる立場にいる私がプロダクトマネージャーに求める仕事は結構シンプルで、プロダクトロードマップとプロダクトバックログを適切に保つことです。「適切に」とは何ぞや、については話すと長いのでまた別の機会に。ただここでは一旦、何となく雰囲気で言わんとしていることが伝わっている前提で書きます。

私はたった2つしか要求していないんですが、プロダクトロードマップを適切に保とうとするとビジョンやコア仮説の話を避けて通れませんし、プロダクトバックログを適切に保とうとするとそれらをいかにブレイクダウンするか、その過程において時に(本来プロダクトマネージャーの役割ではないとされている)Howを考えるなど、かなり広めの業務が待っています。また、これら両者が適切に「保たれる」ためには、継続的な仮説検証と価値のデリバリーが必要になりますし、その実現のためには場合によっては開発チームの状態を良好に保つというような組織貢献的な活動が要求されることもあるでしょう。

デカいんよ。やるべきことが。2つしか要求していないのに。

他社でプロダクトマネージャーにどのような要求が発生しているかはわかりませんが、プロダクトロードマップとプロダクトバックログからプロダクトマネージャーが完全に逃れられる職場はないと思いますのでどこも似たようなものだと思います。
だからプロダクトマネージャーはやることが幅広いのです。本質的にはプロダクトマネジメントに含まれることも、周囲から見ると「プロダクトマネジメント以外のこともやっている」と思われがちです。

プロダクトマネージャー不要論

いきなり話が飛ぶのですが…私は何度もプロダクトマネージャー不要論を唱えています。しかし私自身はプロダクトマネージャーを名乗っています。極めて不思議な状況だと思います。

まず、プロダクトマネージャー不要論というとかなり刺激的な言説に聞こえるかもしれませんが、あくまで「プロダクトマネージャーがいなくても回るように組織としてプロダクトマネジメントの習熟度を上げましょうね」という主張だと思っていただければと思います。(本当はもう少し踏み込んで「何が何でもプロダクトマネージャーが必要だと思うのは幻想だぜ!」と言いたい気もするものの、それは追々…)

私はあまりプロダクトマネージャーという職種や肩書にこだわりはないのですが、今はプロダクトマネジメントのスペシャリストとしてプロダクトマネージャーを名乗っています。私はプロダクトマネージャー不要論者でありながら、今はまだプロダクトマネージャーをなくすわけにはいかない状況であると認識しているからです。(将来にわたりプロダクトマネージャーがいたほうがよい組織もあるだろう、とも考えています。)

プロダクトマネージャーが不要になる前提条件として、組織にプロダクトマネジメントが浸透し、誰もが(上手い下手はあれど)プロダクトマネジメントができる状態があると考えています。そして今それができている組織はほとんどないでしょう。そうすると、プロダクトマネジメントに詳しい専門職であるプロダクトマネージャーが必要になるのです。

私の不要論は半分本気で半分冗談です。そんなのうまくいくわけないだろ、と思っている私もいます。

私はプロダクトマネージャーが不要になる世界を見てみたいと思っているから、その前提条件を達成させるための動きをすることがあります。これは私が個人的に持つ思想に基づく動きであり、全てのプロダクトマネージャーがそのような動きをするべきだとは思っていません

プロダクトマネージャー不要論者のつぶやき

プロダクトマネジメントは皆の仕事です。

これはおそらく、品質とかセキュリティでも同じような話を聞くでしょう。同様にプロダクトマネジメントは皆の仕事なのです。
プロダクトマネジメントの考え方は、ソフトウェアプロダクト開発に携わる人であれば比較的容易に身につきます。そして実践の機会があれば定着・深化も可能です。

おそらくプロダクトマネージャーという職種が置かれていることの背景は、単に「プロダクトマネジメントに詳しい人が必要だから」というのももちろんありますが、それ以上にエンジニア、デザイナーなどが本来の職務に集中できる環境をつくることで生産性を向上させるというのもあると思われます。そのための専門職(≒犠牲者)としてのプロダクトマネージャーなのでは、と。
ただ後者に関しては、敢えて職種によって責任範囲を分けることによる弊害が発生するのも事実であり、その利点を弊害が上回る場合には皆でプロダクトマネジメントをしたほうがよいでしょう。

理想としては、誰か1人がやるのではなくチームとしてプロダクトマネジメントをし、プロダクトを成功に導くための責任を負うということになります。

例えばプロダクトのデプロイを誰か専任のDevOpsの人がやる組織もあれば、チームの人達が持ち回りでやる組織もあると思います。デプロイをプロダクトマネジメントに置き換えてみると、前者が専門職としてのプロダクトマネージャーがいる組織、後者が皆でプロダクトマネジメントをしている組織と言えます。もちろん前者が適しているケースもあると思いますが、後者の選択肢をもっとカジュアルに考えられるようにしようよ!というのが私の言いたいことです。

考慮するべきこと

そうすると問題になってくることがあります。「誰が決めるのか」です。

恐らく初期の段階で誰か1人、決める人を決めておく必要があるでしょう。私が言いたいのは、必ずしもその決める人が「プロダクトマネージャー」という職種でなくてもよいのでは、ということです。

例えばデザイナーが決めてもいいですし、エンジニアが決めてもいいと思います。プロダクト開発にはもともとたくさんの人が関わっており、プロダクトマネジメントを理解している人であれば、誰が決めてもいいのです。実際に私が今担当しているプロダクトには(意図的なものではなく人手不足によるものではありますが)プロダクトマネージャー不在のスクラムチームがいくつかあり、それらのチームではEM(つまりプロダクトマネジメントではなくエンジニアリングを専門とする人)がプロダクトマネジメントを担っています。

世の中にはRACIという素敵なフレームワークがあり、予め誰が何に責任を持つのかを明確にすること自体は難しいことではありません。

プロダクトマネジメントにチームとしてあたるということはつまりプロダクトの決定権を持つ立場に適切な人をアサインできるということであり、その適切な人選のためにもやはりチームとして習熟度を上げる必要があると言えるでしょう。

また、「決める人」にならなかった人にもプロダクトの議論に積極的に関与することが求められます。冒頭に書いたとおりプロダクトマネージャーの仕事は幅広いがゆえに、そもそも1人のプロダクトマネージャーにそれら全方位の知識・スキルを求めるのは無理だと割り切ったほうがよいでしょう。では誰が足りていない部分を埋めるのか?それが間違いなくチームの力だと思います。

それでうまくいくのか?
そもそも、全員がプロダクトマネジメントをすることは可能なのか?

全ては私の妄想に過ぎません。

まとめ

  • プロダクトマネージャーの仕事はプロダクトマネジメント

    • プロダクトマネジメントは幅広いからプロダクトマネージャーはプロダクトマネジメント以外もやらないといけないと思われがちだが、実際には(広義の)プロダクトマネジメントをしている

    • プロダクトマネージャー不要論者が「プロダクトマネージャーが不要な世界を作るために頑張る!」と言い出すケースもあるが、あくまでその人個人の信念に基づく行動でありこれはプロダクトマネージャーの仕事として定義されているものではない

  • プロダクトマネジメントは皆の仕事(だと言える未来が来てほしい)

    • 専門職としてのプロダクトマネージャーを置いたほうがいい場合もあるが、決める人だけ決めた上で皆でプロダクトマネジメントをするという選択肢をとるチームがあってもいいと思う

    • プロダクトマネジメントは必要だがプロダクトマネージャーは必ずしも必要ではない

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