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#49 セルフトークは持久系スポーツにも効果的

みなさんは競技中、自分自身に何か言葉を投げかけていることはありますか?

「まだまだいける!」
「集中集中」
「あきらめるな!」

このように自分自身に投げかける言葉を「セルフトーク」と言います。

私は昔から「よっしゃ、行ける!」がマイセルフトークの定番です。

セルフトークの目的は様々なものがありますが、動機付けや目的意識を高めるために投げかけられる言葉は大きく3つに分類されます(参考文献1)

1.Mastery:熟達
注意の集中や自信、心の準備、困難への対処といったものに向けた言葉がけ。
例:「ここ集中」「私のゾーン」「私なら出来る」

2.Arousal:覚醒
覚醒度合を上げたり、興奮を冷ましたり、適した心理状態にするために行う言葉がけ。
例:「アドレナリンが出てる」「落ち着いていこう」「気合いだ」

3.Drive:前進
発揮しているパフォーマンスの維持やペースアップを促す言葉がけ。自分自身をモチベートする言葉。
例:「まだまだいける」「全力でいこう」「いいペース」

Hardy (2001)を参考に作成

今回ご紹介する論文は、3つ目の「Drive:前進」に当てはまる言葉がけが持久的なパフォーマンスの向上に有効だったことが検証されています。

具体的にはランプテストの継続時間が18%上がったという結果です。

※ランプテスト
自転車エルゴメーターなどで徐々に負荷を上げていって、どこまで漕げるかを測定するテスト。VO2max測定などでよく用いられていて、zwiftなどではFTP推定のテストとしても実装されています。

今回はこの論文で行われた介入(セルフトークのトレーニング)を参考にして、私たちの実践に役立てられる情報を抽出してみました。

是非、読み進めてみてくださいね。



1.今まで使ったことのあるDrive系の言葉を5つ書いてみる

大会や練習などで今まで使ったことがあるなと思いつくDrive系のセルフトークを5つほどピックアップしてみましょう。

私の場合は、
「まだまだいける」
「ここ勝負所(ペース上げる)」
「もっと脚回そう」
「いいペース」
「あと少し!(でゴール)」
などです。


2.他にどのような言葉がけがあるか5つ挙げてみる

上記に挙げた言葉がけとは別に、①序盤、中盤での言葉がけ、②終盤での言葉がけ、の2通りの言葉を3つづつ挙げてみてください

たとえば、①は「イーブンペース」、「調子いいよ」など、②は「ラストスパート!」、「出し切れ!」など、ご自身がモチベートされる言葉を思い浮かべてみてください。


3. 挙げた言葉の中から、4つを選ぶ

以上の言葉の中から、ご自身が最もモチベートされると感じる
①序盤、中盤の言葉がけ を2つ
②終盤の言葉がけ を2つ
をピックアップしてください。


4.セルフトークを2週間実践する

ピックアップした4つのセルフトークを積極的にご自身に投げかけながら、いつものトレーニングを実施します。

今回の論文では、2週間のセルフトーク習熟期間が設けられています。


検証結果

1~4までのような介入が行われ、その前後でランプテストが実施されました。

その結果、介入前に比べて介入後は18%継続時間が増えたという結果になっています。

対照のグループはセルフトークのトレーニング介入以外は同じ条件でテストが実施されていて、このグループはランプテストに変化はありませんでした。


セルフトークによってテスト中のRPEが下がる

今回の検証では心拍数や血中乳酸などの測定も行われていましたが、これらの生理学的な指標はセルフトークのトレーニングの有無で差は見られませんでした(=グループ間に差はない)。

しかし、セルフトークのトレーニングを実施したグループではランプテスト実施中のRPE(主観的運動強度)が下がることが分かりました。

特に中盤に感じるRPE(主観的運動強度)が、セルフトークによって下がっています。

論文の筆者はこの結果から、セルフトークは自分自身をモチベートすることでテスト中に感じるRPEを下げる効果があり、それによってテストの継続時間が向上したのではないかと考察しています。

これまでにご紹介した論文では、フィジカルではなくメンタルが限界を決めていることや、メンタルの疲労がパフォーマンスに影響することが検証されていました。

これらの論文ではメンタルの状態が左右されることで運動中に感じているRPEが上昇して、結果疲労困憊までの時間が短くなってしまうと考えられています。

良くも悪くも、私たちは自分自身の限界を生理学的な限界(VO2maxや血中乳酸など)ではなく、メンタルの限界(RPE)で設定しています。

今回取りあげた論文では、パワーや継続時間で見る客観的な強度は同じであっても、主観的に感じる強度はセルフトークによって下げることができ、より生理学的な限界に近い状況まで自分自身を鼓舞できることが伺えました。

私はトレーニングの最中、声に出しながらセルフトークを行うといい感触です。

その影響で実際のヒルクライムでも声に出しながら走っているので、少し恥ずかしいですが気にしていません。笑

是非みなさんもセルフトークを取り入れて、ご自身の限界に挑戦してみてくださいね。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

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また読みに来てください。



併せて読んでもらいたい記事


参考文献

  1. Hardy, J., Gammage, K., & Hall, C. (2001). A descriptive study of athlete self-talk. The Sports Psychologist, 15, 306–318.


ご紹介した論文

Blanchfield, A. W., Hardy, J., de Morree, H. M., Staiano, W., & Marcora, S. M. (2014). Talking yourself out of exhaustion: The effects of self-talk on endurance performance. Medicine and Science in Sports and Exercise, 46(5), 998–1007.

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