あじさいもち

あじさいもち

最近の記事

ウエルベック「服従」、あるいは中年インテリの捨て難き頑迷さ

服従 5.5/10 図書館本。2015年。 作者のM.ウエルベック氏は70近い小説家。フランス人、男性。 なかなかクセが強い。 50がらみの文学部教授が主人公。 全体的に暗くシニカルで、セックスと美食の話しかしない。そして一貫して女性蔑視的。 アウトラインはJ.M.クッツェーの「恥辱(1999)」を思わせる。 独身貴族を謳歌してキャンパス内でガールハントを続ける大学教員が、ポストを追われ転落する。 地位を危うくしたことをきっかけに自身の行いの空虚さや、独身男が将来味わう悲惨

    • 鴨川ホルモー、あるいは体育会系大学部活が人格に及ぼす不可逆の変質

      6.5/10 図書館本。 2005年、作者の万城目学さんが29歳時点で書いた本デビュー作。 面白かった。 異性関係の乏しい京都の貧乏インテリ大学生モノということで、属性としては森見登美彦さんの「太陽の塔(2003)」にかなり近い。森見氏は3年デビューが早いが、万城目氏より3歳下とのこと。 森見さんの世界観に比べ万城目さんのそれはかなり健全というか、体育会系的、陽キャ寄り、建設的で、その差に驚いた。 両者を対置すると、「太陽の塔」には、森見さんの「自分の大学生活はこうあってほ

      • 約束の地―大統領回顧録、あるいはオバマ氏による1000P超の無機質な利益相反開示文書

        2.0/10 図書館本。 2009-2017の8年任期を務めたバラク・オバマ元大統領の回顧録。 おそらく全ての米国民が読むことを想定し、さらにメディアによる恣意的な抜粋攻撃と揚げ足取りも念頭に置いて、かなり堅く書かれている。 そのため総花的というか、当たり障りがなく、やや面白みを欠く。 まず何より、そもそも日本で広く売ろうとする気があまりないんじゃないか。日本語版は上下巻構成なのだが、上下の装丁が笑ってしまうくらいまったく同じだ。出版社の仕事としては商売っ気がなさすぎるとい

        • 数分間のエールを、あるいは花田十輝さんの作品群における「透明化された悪」について

          数分間のエールを 8.0/10 映画、70分。素晴らしかった。平日夜の観覧、観客は自分を入れておじさん3人と少なかった。 花田十輝さんのオリジナル脚本。 ・本作 ・よりもい(宇宙よりも遠い場所) ・ガルクラ(ガールズバンドクライ) と3作を続けて観たため、これら共通の魅力を挙げる。 【透明化された悪】 いわゆるテンプレ的な「悪役」がいない。 「数エール」では、フラストレーションを与えてくる人間は存在する。 織重さん(ヒロイン)のギターを値下げ交渉してくるメルカリ民。 彼

        ウエルベック「服従」、あるいは中年インテリの捨て難き頑迷さ

        • 鴨川ホルモー、あるいは体育会系大学部活が人格に及ぼす不可逆の変質

        • 約束の地―大統領回顧録、あるいはオバマ氏による1000P超の無機質な利益相反開示文書

        • 数分間のエールを、あるいは花田十輝さんの作品群における「透明化された悪」について