伝説のパン【ショートショート】【＃176】

「お前の家に伝説のパンがあるんだって？」
「ん？　よくわからんが、伝説といわれるヤツはあるぞ。この前も言い値で構わんから売ってくれという人がきたけど、追い返してやったところだ」
「言い値かよ、すごいな。……なあそれはどんな感じなんだ？　例えば大きさとかは？」
「大きさは……そうだな。２０センチくらいじゃないか」
「おお意外と小ぶりだな。色とかはどうなんだ？　普通なのか？」
「ちょっと変わっているが、うちのヤツはピンク色というか、そんな感じだ」
「なんだそりゃ変わってるな。本当にそれ、旨いのか？」
「そいつを使った料理は絶品だと言われているな。それが他で噂になって、遠くから買いにくるやつとかが出る始末ってわけだ」
「すげえな。一度でいいから食ってみたいもんだな」
「何言ってんだ。お前、うちでメシ食ったこと何度もあるだろ？」
「そりゃあ、お前んとこの食堂はうまいと評判だからな。でもパンなんて食ったことないぞ。そもそもメニューにないだろ？」
「……パン？」
「パンだ。……伝説の」
「あー……多分それは、パンはパンでも食べられないパンの話だな……」

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